第115話 入室拒否
扉の手前で。
「恐れながら、神殿騎士卿どのは、控えの間にてお待ち願いたいとのことでございます」
エルヴィンは、入室を拒否された。
「どのような権利でそう申される」
「ここは王宮でございます。神殿以上に神妃様の安全は保証されておりますゆえ、ご承知くださいませ」
話が違うと言いたげなエルヴィンを、年の功か、圧倒的な威厳を醸し出す侍従が有無を言わせない。
背後には、赤い制服を着用した王宮騎士がずらりと並び、これ以上の反発を許す気配はなかった。
互いが最大限に抑えてはいるものの、ヒシヒシと伝わって来る気配には、長年の不仲が伺える。
王宮と神殿の確執は深く、そして歴史と共に刻まれ続けた、確固たる蟠りであるようだった。
「フィルメラルナ様、どうかお気をつけて」
口惜しそうに、エルヴィンがそう見送る。
しかし、彼の心配に反して、フィルメラルナの方に懸念はなかった。
否、それ以上に、ユリウス王子に会わなくてはならないという使命感が、じわじわと湧いて出てくるのを感じていたのだ。
これもまた、イルマルガリータの導きなのだろうか。
見えない糸が誘っている?
いずれにせよ、迷ったとしても進むしか道はない。
この先にしか、真実は開かれないのだから。
「ありがとう。わたしは大丈夫、行ってくるわ」
銀髪の下、青い瞳へ向けてゆっくり頷く。
そして、謁見のための部屋へと入ったフィルメラルナの後ろで、静かに扉が閉められた。
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