06 final & prologue.

 夕暮れ。


 反射する、ミラー。


 彼女に。


 車が。


 ぶつかる。


 その一歩手前で。


 なんとか、間に合った。腕をつかむ。


 そのまま、車道から歩道に引き戻す。


「あっ」


「くそが。誘拐でも通り魔でもなく暴走トラックか」


 詩胡を抱き抱えて守る。


「にいにいっ」


 みかにゃんとにいにいが、遅れてこちらに合流する。


「大丈夫。ナンバーは覚えた。みかにゃん電話」


「もうしてる」


 みかにゃんが警察を呼んで。にいにいがナンバーと詳しい車種と進行方向。


 詩胡を抱えたまま、自分も端末で通信をかける。


「正義の味方のみなさん。襲われました。なんか不具合はありますか?」


 通信。いずれも、街に不具合はないという報告。


「ありがとうございます。いえ。ただ暴走トラックに襲われただけで。はい」


 通信。とりあえず、暴走トラックは他の正義の味方が追うらしい。まずは、四人全員の安全確保と退避が最優先。ルートは管区指示で、上からステルスヘリが掩護してくれる。


「しこちゃん。起き上がれる?」


「さっ、さわんな変態っ」


 平手打ち。感覚が鋭敏になっていて、つい、回避してしまった。まずい。今のは普通に叩かれるべきだったかも。


「あっごめん避けちゃった」


「うわあああ。しぬかとおもったあああ」


 抱きつかれる。


 思春期ではあっても、ちゃんと危機管理と恐怖の意識はあるらしい。よかった。


「ほれ。立てる?」


「たてない」


 にいにいのほうを確認する。すでにみかにゃんの背中から降りて、こちらに向かってガッツポーズ。


 大丈夫。


 しこちゃんの死相は消えた。なんとか、乗り越えた。


「しこちゃん。立てないならお姫様だっこするぞ?」


「しこちゃんって呼ぶなっ」


 平手打ち。しっかり、避けずに、ぶつかっていく。派手な音。


「ぐへえ」


 取って付けたような、やられ台詞。


「おいで、しこちゃん。あたしがおんぶしてあげよう」


「だからしこちゃんって呼ばないで」


 みかにゃん。しこちゃんを、有無を言わさず持ち上げる。


「さあ。帰ろう。何度でも。四人でさ」


 夕暮れ。


 いつものように、帰る。


 男二人、女二人。


 まだ子供みたいな思春期のやつがひとりと、思春期を抜けた大人が三人。


 夕暮れの、ほんのわずかなきらめきの中で。


 今日も守り合って、生きていく。




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四人で帰る夕暮れ (15) 春嵐 @aiot3110

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