第3話 七~八

 そして、一人の俺は……、夕方、気晴らしにバーに向かう。

そこでの燃料は何にしようかな。とりあえずハイボール、か?

そんなことを考えながらアリゾナの街を歩く。

そこは夕暮れ時。アリゾナ特有の太陽と、月が同居する時間帯。

またここはニューヨークやロサンゼルスと違い田舎だ。でもそんな田舎のバーも十分風流だ……、そんなことを考えていた矢先。

 俺は、ついに見てしまった。

 エリカが、他の男と歩いている所を。

 俺の体はアルコールで動く。でもこの時、俺は体が怒りのエネルギーでも動くことを知った。

 アンドロイド特有の素早いダッシュで俺はエリカたちに追いつき、「ウィリアム」であろう男の腕をつかむ。

「ちょっと、ボブ!?どうしたの?」

「お前、ウィリアムか!?」

「あ、ああ……」

完全に困惑しているエリカとウィリアム。構うもんか。こいつ、ウィリアムを一発殴ってやるんだ!

「ちょっと、ボブ、【お兄ちゃん】、止めて!」

……えっ!?

 俺は我に返った。


 その後とりあえず俺たち3人はバーに行く。

「ボブ、ごめんなさい。あと少ししたらボブの誕生日でしょ?それで私、ボブにサプライズでプレゼント用意したかったんだけど……、何買えばいいのか分からなくて、お兄ちゃんに相談してたの」

俺がスマホの一件、あと最近のどこかよそよそしい一件を話すと、エリカはそう答えてくれた。

 そうか、そうだったのか……!

 なのに俺は……!

「ありがとな、エリカ!あとお兄さん、すみませんでした!」

そう言って俺は人目もはばからずエリカに抱きつく。

「ちょっと、みんな見てるよ!恥ずかしいよ!」

そう口では言うエリカも、満更ではない様子だ。

 やっぱ最高だよ、エリカ!インクレディブル!

 彼女の笑顔は月みたいに輝いている。

 今夜は飲もうな!

 俺はそう思いながら、今日も燃料を口に入れた。

そして、肝心のエリカのプレゼントは……、ワォ!何だこれは!?  


※ ※ ※ ※

 その瞬間、ボブの意識は完全に停止する。

 そこには小さな爆発。そして焼け焦げた鉄の塊が一つ。

「まあ今回もうまく爆発したな、エリカ」

「ええお兄ちゃん。やっぱオトコは常に新しくしないとね」

「そう言えば新しい『ボブ』、もう発注してあるからな」

「ありがとう!お兄ちゃん!」

 そう言い合い二人は、鉄の塊を片付けて乾杯をする。

 新しい「ボブ」は、一週間後にはエリカの元に届くであろう。


 と、思いきや……。

バーン!

2回目の爆発。

「さよなら、エリカ、ボブ」

そう言って笑う、ウィリアムがそこにはいた。 (終)

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恋するアンドロイド 水谷一志 @baker_km

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