【エピローグ もう一度、ラスト・ジャンプ】
――1週間後。
《だうんろーど 完了》
はろーはろーはろー。オレハP。
ゴ機嫌ナろぼっとサ。以後オ見知リオキヲ。
シッカシ、ドウシチマッタンダ、コリャ。辺りハがれきダラケダ。
塔ノテッペンの階ガ、ソノママ吹キ飛ンデ、ズイブント見晴ラシガイイ。
月ガマンマルデ、イツモヨリ明ルイ。雪ガ降ッテル。
下ノ世界ヲ覗イテミル。誰モ、イナインダ。
ソンナコトヨリ。
めりー。めりーハ、ドコダ?
《めりー めりー?》
反応ガナイ。
ドコ?
めりー。めりー。めりー。頭ノ中ガ熱クナル。頭ガ焼キツク。
めりーは、コノ島ニイルハズ。キットイル。
《めりー めりー!》
がれきヲ、カキ分ケル。
燃エ尽キタぷらすちっく。真黒ナねじ。ドレモ違ウ。めりージャナイ。
スルト、がれきノ奥深クノ方デ、何カガ、強ク激シク輝キダス。掻キ分ケル。
《めりー!》
「……っくしゅ」
くしゃみ?
がれきノ山ノ中カラ聞コエタ。オレハ、がれきヲ掘リススメル。
めりー。めりー。めりー!
「ふあぁーあ……。うん?」
ソノ中ニイタノハ――。
「ハァーイ♪ みんなの副総統サマだよ」
めりージャナイ。じじい。
偉インダッテ、ミンナガ言ッテタ。素ッ裸ノ、じじいダ。
「すごい爆発だったね。普通の人間なら木端微塵だろうね。ま、私も塵になったんだけども」
《ソンナコトヨリ めりーハ?》
「そんなことよりか。君たちはどうにもつれないね。せっかく面白いことを教えてあげようと思ったのに」
《ドウデモ イイ》
「実はねぇ」
聞ケヨ、こら。
「私は、ヴァンパイアなんだよ。くふふ。これが冗談じゃないってのはあの爆発のなかで生きていたことから、わかるよね? 一度は木端微塵になったけど……今日は満月だろう? 私は生きかえる力を得たのさ。私の一族は、みんなそうだ。血を分けあった、深いつながりだ」
《ソンナコトヨリ めりーハ?》
「くふふ! そうか! どうでもいいんだね。そうだね。私みたいなわき役が宇宙人だろうがヴァンパイアだろうが、君にはどうでもいいかもしれないね。くふふ」
《イイカラ 早ク 言エ ぶっ飛バスゾ》
「ふぅん。やっぱり覚えていないんだね」
《マドロッコシイ》
オレハ、副総統ノ顔ニびんたヲシタ。
「くふふ、痛いよ」
じじいハ、オレニ手ヲ差シ出シタ。
……コイツモ、ぶりきノ手?
「メリーくんはね、私が治療したんだ。ビリビリっとね。おいたが過ぎたのさ。意志のあるアンドロイドは結構だが……私たちに歯向かうのは、得策じゃなかったね」
《治療シタ? ドウイウ コトダヨ!》
「君は記憶を失っていたんだよ。それを取り戻すために、メリーくんは戦ったんだ。そして敗れた。悲劇のヒーローさ」
《ワケガ ワカラナイ モット チャント 説明シロ!》
「まぁ、それはそんなに重要じゃないね。だってもう、死んじゃったんだから」
……エ?
「死んだんだよ。ダイナマイトで心中。美しき親子愛だね」
じじいハ、辺リヲ見回シタ。がれきダラケ。
「すごい威力だねぇ。おかげで、国のプロジェクトが台無しだ。『治療』はいい方法だと思ったんだけどねぇ……これから、どうするべきか。難しいね」
《ドウイウ コトダヨ!》
「どうもこうもない。メリーくんは、死んだんだ」
《オ前ガ 殺シタノカ!?》
「人聞きが悪いよ。私じゃないさ。……それに治療が無くなった今、君はもう用済みなんだ。しつこい女は嫌われるよ」
《ウルセェ!》
「私はこれから本土に帰らなきゃいけないんだよ。何もかも一からだからね……」
じじいハ、オレノ頭ニ手ヲ置イタ。
ソレヲ振リホドコウトシタ瞬間。
――バリバリ。
激シイ電流ガ、じじいノ手カラ流レル。
感覚ガナクナル。
「脳味噌もないんじゃ、治療ってわけにゃいかないけど……。処分には十分だよね」
ア。ア。ア。
意識ガ遠ノク。大切ナモノガ、燃エ尽キテイク。
イカナイデ。
めりー。めりー!
――パシュン。
細クテ、鋭イ音ガシタ。さいれんさーノ音。
電流ガ、ヤンダ。
鮮血。
じじいガ激シク顔ヲシカメル。
太モモニ、小サナ穴ガアイテイル。血ガ吹キ出テイル。
――パシュン。パシュン。
鮮血。鮮血。
「そこだろう! わかってるぞ! 私に逆らうと、どうなるかわかっているのか?」
じじいハ、辺リヲ見回シ、ワメキ散ラシタ。
スルト、ドコカララ女ノ声ガ聞コエテクル。
「さぁー、どうなるのかね?」
背後ノ瓦礫ノ中カラ、声ガシタンダ。
だるソウナ女ノ声。姿ハ見エナイ。
すないぱーらいふるノ銃口ガ、ちらりトノゾイタ。
……てるこ。
「私は完全な肉体と完全な権力を持っている。そんな銃一本で勝てるはずがないだろう?」
「勝てるかはわかんねーけど……。今の話聞いてたら、どっちが悪いかは目に見えてるだろ? あたしは弱い者の味方さ。あたしをバカにするな。バカ」
《モブドモガ 争ッテイル……》
「あたし、一応お前のこと助けたんだけどな……」
――ガシャン。
オレハ、ヒルンダじじいノ頭ヲ、ブッタタク。
殺サレテタマルカ。殺サレテタマルカ!
「くふ、くふふ。すっごく分が悪いねぇ。こっちは病み上がりなのに……」
じじいハ、顔ヲシカメナガラ笑イ――背中ニ翼ヲ宿シタンダ。
歪ンダ闇ガ集マッテデキタ、オドロオドロシイ翼。じじいガ宙ニ舞ウ。
……アレハ。
めりーガへりこぷたーカラ跳ンダトキノ翼ト、同ジ翼ダ。
「ほんじゃ、バイなら。二度と会うことはないんだろうけど。私を撃ったのは後悔するよ」
「しねぇよ。どうせこの仕事はもうやめるしな」
《……》
「ふふん、Pちゃん。私を殺したいか? ちなみに、銀の弾丸なんかじゃ殺せないよ」
「はん、じゃあどうしたらいいんだよ?」
てるこガ忌々シゲニ言ッタ。
「さぁね。私は今から世界をもっかい変えに行かなくちゃいけないから、忙しいんだよ。ヒジョーに。あー、次はどうしよっかなぁ」
じじいノ翼ガ、ユックリト、シナヤカニ風ヲ起コス。
羽バタク音ハ一切シナイ。マルデ現実味ガナイ。ばかばかシイ。
じじいノ背中ハドンドン小サクナル。夜ノ闇ノナカニ、消エテイッタ。
《助カッタ》
オレハ、てるこニ言ッタ。後ロデ、ごそごそトてるこガ顔ヲ出シタ。
生首。
「あたしは天の邪鬼なんだ。いつだって、弱い方を応援するんだよ。それより……なにか、喰うもの持ってないか? 起きたら誰もいなかったんだ。喰うもんもなくて……塔に助けを求めたら、これだ。全員、島から引き揚げたらしいな」
《置イテ イカレタノカ?》
「ま、そうなるな。また寝ちゃった……」
《ばか ジャン……》
「あのトナカイはどうしたんだろうな?」
《……》
「本当に死んだと思ってるか?」
めりー。めりー。
「そんな簡単にくたばるとは思えないがね……」
めりー、ドコニイルンダ?
「とりあえず、どっかに喰うもんないかな……つーか寒い……」
《……》
「おいって! 聞いてるのか?」
――パシュン。
オレノ足元ニ、弾丸ガ突キ刺サッタ。
「探せ探せ! バカ、喰うもんを探せ! まずは手足を動かせ! 何かしら助けが来るまでは、この島で生きてかなきゃいけないんだ。あのトナカイが好きなら信用してやれ!」
《コノ 爆発 ジャア……》
「喰うもん探すのが先だ! 死んだら、あいつが生きてたってなんにもならないぞ!」
《オレ 何モ 喰ワナクテモ……》
「あたしが死んじゃうだろーが!」
めりー。
ほんとニ死ンジャッタノカ? 嘘ダヨナ?
めりー。めりー。
冷タイ。オレノ手ノ平ニ、何カ冷タイ雫ガ落チタ。
「あ、あ、あー! それ! それ、拾ってくれ!」
《エ?》
てるこハ、がれきの山ヲ指サシテ、大声ヲアゲタ。
「そこに埋もれてるだろ! りんごだよ!」
赤イ木ノ実。知恵ノ木ノ実。濁ッタ血ノ色ヲシテイル、艶ノナイリンゴ。拾イアゲタ。
雪ヲ被ッテ、スゴク冷タクナッテイル。
めりーガ言ッテタ。
『おれにまともな心なんかねぇけどな。なにせ、心臓のかわりにりんごが入ってるんだから。冷え切った知恵の木の実さ』
コレガ、めりーノ
冷タイ。
とくんとくん、シテナイ。オレニ体温ガアレバ、温メテアゲラレルノニ。
オレハ、リンゴヲ胸ニ抱イタ。
リンゴハ、ぎらぎらトシタ月明リヲ吸ッテ、ダンダント、光ヲ取リ戻シテイル。
艶ノナカッタ皮ニ、張リガ出始メテイル。輝キハジメテイル。
サッキノじじいガ、生キ返ッタトキミタイニ!
「おい、ちょっと! 早くよこせ! 腹が減ってしかたないんだ!」
《コレハ 食ベチャ だめダ》
オレハ、リンゴヲ、月ニ向カッテ掲ゲル。
屋上デ、どろしーハ、コウ言ッテタ。
『あたしとメリーは、もう同族なんだよ!』
ソウダ。めりーハ、どろしート同族ニナッテイタンダ。
「ほめおすたしす」を保つための注射器カラ、唾液を注入サレテ。
アノトキ注射器ヲ盗ンダノハ、どろしーダッタンダ。
――リンゴハ、月ノ光ヲ吸ッテ、輝キヲ増シテイク。
《ダハハハハ……》
オレハ笑ッタ。キットめりーナラ、笑ウト思ッタカラ。
《ウマク 笑エテルカ?》
「……ま、こないだよりはな」
めりー。今日ハスッゴク寒イ。
今ノオレニハマダ、めりーノ手ヲ温メテアゲルコトハ、デキナイケド。
イツカ、ソノ手ヲ、ソット温メルコトガデキタラ。
アァ。
早ク 人間ニ ナリタイ。
〈了〉
羊飼いのりんご 肯界隈 @k3956ui
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