第63話:戦神
俺は奴隷希望者達全員にスコップ・シャベルを買い与えた。
領主達が襲いかかってくる前に、濠と土塁を築くためだ。
4000人を越える人数がいれば、なんとか襲撃前に完成させられる。
一冬一緒に暮らした事で、彼らにも多少情が湧いている。
とても見捨てる気にはなれなかった。
それにスコップ・シャベルは下手に高価な武器を買い与えるよりもいい。
塹壕戦に限定すれば最高の武器だと言う人もいるのだ。
遠く離れた敵には石を投げて戦い、6mくらいにまで近づいて来たら白竹で思いっきりブッ叩く。
投石と竹叩きを突破した敵はスコップ・シャベルで切り裂いて殺す。
「スコップ・シャベル」1645円
全長 :935mm
頭部肩幅 :210mm
頭部長 :270mm
頭部 :スチール
パイプ柄部:スチール鋼管
重量 :1・3kg
1645円のスコップ・シャベルを4000個買ったら658万円だった。
残金は1億8688万円になっていた。
それでも剣鉈やボーガンを買い与えるよりははるかに安い。
城が湧いたとはいっても、奴隷希望者達に対する情はこの程度だともいえる。
そう思うと自分の薄情さに嫌気がさす。
俺のそんな内心の葛藤など全く関係なく、全ては順調だった。
最初は雪かきから始まり、大量の雪の壁を作って敵の襲撃に備えた。
ようやく表れた土はカチコチに凍っていたが、奴隷希望者達は自分の命がかかっているからか、一生懸命濠を造り、出た土で土塁を築く。
土塁の上には竹矢来がガッチリと据えられる。
俺の決断は無駄ではなかったようで、領主軍が襲いかかって来た時には、最初氏子村が襲われた時程度の防御が完成していた。
それを見て諦めればいいのに、諦めることなく襲いかかって来た。
最初はそれほど怒りを覚えていなかったのだが、奴隷希望者達の掘っ立て小屋に火矢が届いた時に我を忘れてしまった。
火矢には獣脂か植物油が浸み込ませているようだった。
屋根はガルバリウム波板だが、壁や柱は間伐材や背板で燃えやすい。
掘っ立て小屋が燃えれば奴隷希望者達は雪の中で野宿しなければいけなくなる。
そう思ったら怒りで我を忘れてしまった。
後は無我夢中だった。
奴隷希望者達に投石させようと積んであった石を全力で投げていた。
元はありふれた人間とはいえ今では配祀神の力を得ている。
その力を抑えることなく全力で使ったのだ。
それなりに装備のいい領主の兵士とはいえ、一撃で頭部を粉砕され即死した。
もう手加減する気など全くない。
瞬く間に千を超える領主軍を皆殺しにしてやった。
無理矢理動員された領民もいただろう。
だがその時にはそんな事は考えられなかった。
ライラとお腹の子を護るためなら、鬼神にだろうが戦神だろうがなってやる。
必要なら領主の城に乗り込んで皆殺しにしてやる。
俺がこの氏子村の守護神となってライラと子供を護る。
宝くじ当選を願って氏神様にお百度参りしていたら、異世界に行き来できるようになったので、交易してみた。 克全 @dokatu
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