<14> 誤算

生暖かい風が通り抜けた林の中、二人の女性が少女を引き摺っていた。神様の祝福を受けた聖女様のお戻りはいつも晴れとの情報通り、青空に陽は高くなっていくが、ここにはぽんぽつんと点状に光が差すばかり。小道からの見通しは利きにくく、春の柔らかな下草のおかげで、踵の跡も二人の足音も目立たない。

両手を引っ張るふたりの角度と歩幅の違いが少女の身体を捻り始めた。呻きに意味のある声が混じるのを聞いてか、片方の手を持つ赤茶髪の女性がもうひとりに声を掛けた。


「この木にしましょう。せーの」

言いながら持った腕を振るのにピンときた濃灰色の髪をした女は、今度はきちんと合わせた。


どんっ。

「ぁうがはっ」

両側から勢いをつけて投げられ、背中を木にぶつけた少女は衝撃で息が詰まった。またゲホゴホと咳き込む。赤茶髪の女性は、その二つに折り畳んだ体を、白髪を乱暴に掴んで起こす。

「あなた、魔族よね?」

「ち、が、っぐぅ」

木の根の上、不安定に乗った膝に足を下ろす。

「認めなさいよ。崇高なる聖女様を引き摺り下ろそうなんて許される訳がないの。罪人としてお仲間の司教と一緒に鉱山送りになるといいわ」

言いながら何度も同じ場所を踏みつける。

「愛しい司教?あっはっ。想像するのも気分が悪い。みっともない大傷を晒して聖女様の隣に立つなんて。あれを庇いたいならあなた一人で奴隷になればいいじゃない」

自らの言葉に苛ついたのか、髪を引き千切りながら後頭部を木に打ち当てる。鈍い音と共に少女は横向きに崩れる。半開きの口から唾液混じりの血が漏れた。


林を風が吹きぬける。先ほどよりも冷たいが、動いて火照った体には丁度良い。

女性はちらりと横に視線を遣る。

「あなたもご一緒に、ねぇ?」

「こ、こんな、さすがにまずいだろう?」

「寝言なの?もう同罪だから。ねぇあなた、何魔法?」

「みみ、水」

「使えないわね。私の火魔法の邪魔にしかならないじゃない。何度か打つけて遊ぶだけにしようかと思ったけど、気が変わったわ」

右手の平を上に向け、詠唱を始める。十秒ほど掛けてようやく、手で握れる大きさの火が現れた。足元には真冬の冷たい風が吹き始める。

「魔族なんて殺しても罪にならないわ。人じゃないんだから。封印の聖女?図々しい。目障りなのよ」

「待て、待って、やばいって、絶対バレるしっ」

「ふたりで証言すればいいのよ。この子が勝手に燃えたんですって。昨日のが暴発だっていうんだから有り得るじゃない」

周辺の空気まで冷えだし、もう一人は知らず身体を抱く。

しかし赤茶の女性は気にも留めず、続けた。

「麗しい聖女様はきっと詐欺師を誅伐した私に褒め言葉を下さるわ。・・・魔族らしく青く燃え散らかせっ」


最後の言葉とともに腕を振る。刹那、目を見張る。倒れていたはずの小娘が、木の前に立ちこちらを向く姿に。

体を狙った火球は逸れ、修道服の裾に。


キン。

硬質な音。

空間がしなった。


「あああああぁああっ」

叫ぶ女、包む蒼炎。

絶えず変わる形象は下から上へ獰猛さを増す。己が意志に身を震わせ、煽る風に委ねもせず。

女の肢体は捻じ動く。蠱惑的な肉が炎とともに揺れ揺れる。逆立つ赤茶髪と合わさり、異性を誘う鳥の如く踊る。

濃灰髪は腰を抜かし後退る。目に入れてしまった。熱くもない炎に灼かれる女よりも怖しいモノを。


やがて蒼は朱に変わる。

焼け爛れた精神は修道服が燃え出したことに気づくことはなかったが、体が自然の反応として地面を転げ回り、腿の辺りまで来ていた炎を消した。

服と落ち葉と新芽の幾らかが、煙と焦げた臭いを林の外まで届けた。



・・・・・・・・・・・・・・・



大聖堂から小聖堂へ向かう小道脇の木立から微かに煙が立った。昨日の小火騒ぎに続いての煙に、見つけた警備兵はすぐ騎士団へ遣いを出した。聖堂から離れているとはいえ、火が出たなら大事だ。騎士の到着を待たずに数人で確認に行く。

彼らが見つけたのは三人の修道女だった。


修道服の下半分が焦げて無くなり太股が露わになった状態で地面に蹲り頭を覆う赤茶髪の女性。座り込み自らの体を抱きかかえて震える濃灰髪の修道女。

それから砂埃に塗れた修道服姿で木に凭れ虚ろな目をしている白髪の娘。


少し離れたところには吐瀉物と修道帽もあったが、何が起きてこのような状況になっているのか見当も付かない。

騎士団本部に連れて行くか、と相談していたところ、近くを通りかかった騎士が、彼女たちが聖女選定の儀に参加している聖女候補だと教えた。

王妃でもある氷の聖女様を思い出し、警備兵たちは顔を顰める。品性も冷静さも著しく欠いた女性二人と、見る者の動揺を誘う洞の目をした少女の何れもが相応しいとは思えなかったからだ。

蹲る女性は立たせようと触れただけで悲鳴を上げた。座り込み震える女性も力がまったく入らず、肩を貸しても立ち上がれなかった。

応援の騎士が到着するのを待ち、彼らは時間を掛けて三人を宿舎に連れ帰った。




「相応しくないことがはっきりした訳だ。早く追い出せば良い。そう、今すぐにでも」

宿舎執務室にノックも無しにずかずか入ってきたテオ・ディストロ司教は、騎士二人と状況整理を行っていたハロル・ギレス司祭を見下ろし放言した。

残る聖女候補は四人。そのうち三人が問題を起こしたのなら、彼女たちを追い出せれば自動的に自分が連れてきた者が次期聖女になる。

などと考えているのだろうな、と思いながら、ギレス司祭は顔を一切崩さない。貴族の嗜みであり、商家に修行に出るか迷っていた彼にとっては必須技能でもあった。

該当無し、という線もあるとは考えないのか。いや、最後の一人に残ることが肝要、か。

普段よりも余裕なく見える司教の態度に、裏を勘繰りながら司祭は素っ気なく対応する。


「まだ詳細が判明していませんので、短絡的に決定できませんよ」

「この場で位階が最も高いのは私だ。司祭如きが口答えなど許されると思ってか」

「そうは仰いましても。責任者はペルル司教筆頭猊下ですし、聖女様もお戻りになられた。勝手をする方が許されないでしょう」

「何だと!」

「あぁディストロ司教。あなたの候補者だけが小聖堂に残っているはずです。選定に係る祈祷ですので、一人でやって頂くのも忍びない。もうしばらく後で結構ですので、こちらにお戻しください」

テオ・ディストロが普段よくやる笑みを真似て、ギレス司祭は笑んだ。ディストロ司教は派手に扉を鳴らして出て行った。


「宜しいのですか?五大貴族の端くれ、いえ、ご当主の長子でもある方ですよ」

「直属でもないですし。不興を買ったところで、ここでなければ神様に祈れないというわけではありませんから」

心配する騎士に口角を上げて答えると、すぐに真顔に戻す。

「とにかくお一人でも話を聞ける状態に戻っていただかないと。回復司祭はもうすぐ来られますか?」



・・・・・・・・・・・・・・・



ペルルは寝起きの働かない頭で時間を報せる鐘の音を数えていた。

そんなつもりなど無かった。軽い食休みのつもりで大聖堂区域にある洒落た食堂のテーブルに突っ伏したら一刻半も経っているとは。



大聖堂の部屋に聖女様をお連れした後、典礼用聖衣を着替えるために自室に戻った。報告書を聖女様付修道女に手渡し、聖女様の、位階の高い者が腹を鳴らして歩くとは情けない、との気配りに従い、大聖堂を出て食事に来た。本日は貴族の礼拝を受け付けていない為閑散とした食堂で、丸一日ぶりとなる食事にありつけた。軽食とはいえ三人前は食べ過ぎたかな、と思いつつ、腹がくちると眠気が襲い、現在に至る。


聖女選定の儀といっても本日の予定は聖女様の御祈祷に合わせて祈るだけだ。修道士女のように石畳の上ではなく小聖堂の長椅子で行うし、最初に聖詞の指導も入るから庶民とはいえ皆ついて来れるだろう。

長い休憩になってしまったが、聖女様の御祈祷はあと半刻はある。ぶらり歩いて小聖堂の様子でも伺いに行くか。

あの古神聖語も操る方の流暢な聖詞が聞けるのなら眼福ならぬ耳福だな、とペルルが気楽にいられたのは食堂外で伸びをするまでの間だった。



「おい、交代か」

「あぁ。増員で休憩が減らされた。また選定関連と聞いたが?」

「あまり大声でいうなよ。上が捕まらずに揉めてる、って。あっ!」

小聖堂方向から歩いてきた騎士が大聖堂方向から歩いてきた騎士に声を掛けた。距離を縮めながらの会話を聞くともなしに聞いていると気になる単語が飛び出した上、騎士に指差された。

「いま、選定関係といったか?」

「し、失礼しました。司教猊下にはすぐに聖女候補の集まる宿舎に戻っていただきたいと」

「何が起きた?」

騎士は、ご案内します、とだけ答え、先を歩き出した。もう一人の騎士と共に何度目かの駆け足で宿舎への道を行った。



・・・・・・・・・・・・・・・



高位聖職者は宿舎でなく、聖堂内に執務室を兼ねた私室が与えられている。大聖堂には、大司教、聖女、聖女付司教筆頭の部屋があり、小聖堂にはその他司教と一部司祭の部屋があった。

デリウズ司祭は助祭に連れて来られた聖女候補を小聖堂の自室に招いた。他の候補者が揃う前に始めるわけにもいかない、という名目はともかく、女性である聖女候補とふたりきりという点に助祭は眉を顰めたが、五大貴族当主の子であり位階も上の司祭の言に逆らえはしなかった。口止めに金貨を握らされれば、もはや同罪でもあった。


「レギーナ、会いたかったよ」

助祭を追い出し、鍵を掛けると、司祭は戸惑う聖女候補を抱き締めた。ディストロ司教に後見を任せる候補者は、驚いて突っぱねようと力を込めた瞬間に、馴染みのある独特の匂いを吸い込んだ。

すぐに思考の幾らかが閉ざされ、身体の奥が熱くなる。腕に込めた力は抜け、背に回る相手の掌を少しでも感じたいと呼吸が逸る。

「彼の、匂い、がする。でも、あなた、じゃない、わ?」

「認識阻害の魔導具のせいさ。俺はデリウズ家の者だから、街で狙われないよう姿を変えていた」

「そう、なの?でも、きっと。私、」

言葉は最後まで続けられなかった。



・・・・・・・・・・・・・・・



ペルルが宿舎に着くと、ギレス司祭は執務室にはおらず食堂でメイドと談笑していた。騎士たちの慌て様とはかけ離れた行動に違和感を覚える。

だが可能な手配を済ませて休憩しているだけかもしれない。別段気に掛けていない風を装い、執務室での説明を求めた。

司祭が詳しく語ったのは発見時の状況だけだった。回復司祭は火傷は治せたが精神は回復できていない。それ以外は、三人とも会話のできる状態になく詳細不明。

待ちの状態では暇そうにしているのも無理ない、が。そもそも。

「何故候補者だけにした?」

「今回犠牲になった街には親族がおりまして。少しだけでも祈祷に参加したかったもので」

「答えになっていない。場を任せたと思っていたが」

「ではご信頼に応えられず申し訳ありません」

さらりと謝るその口調に違和感が強まる。意図を十二分に理解し何事もそつなくこなす優秀な部下だと思っていた。誰か、利を与えられる者の横槍か。

眉間の皺を伸ばすように二本の指で摩りながら、しかしその事には触れずペルルは言った。

「疲れて眠っていた私が何か言えた義理でもないか。様子を見てくる。大聖堂の聖女様に遣いを出しておいてくれ」

「どのように?」

「状況報告だけでいい。後はあの方が判断なさる」



聖女候補者の部屋がある二階へ上る。廊下を見渡せば、三つの部屋の前に騎士が一人ずつ立っている。部屋割りは頭に入っている。ペルルは初めの部屋の騎士に頷きかけた。帯剣していても、きしりとも音を立てず横にずれる。そっと扉を押し開け、中を覗き込んだ。


赤茶色の髪の女性が床に蹲っている。何処からかガラスに爪を立てたような高音を出すと、床に潜り込もうとしているかのように頭を擦り付け、ぶちぶちと髪を引きちぎった。これまでに千切った赤い髪が周りに散らばり、模様の入ったラグの上にいるようにも見える。頭を下げようとするからか、尻が持ち上がり、焦げたワンピース状の修道服が捲れて胸の下着まで露わになっている。誰かが被せようとしたのか、毛布が足元に転がっていた。


ペルルは軽く天を仰ぎ、聖詞をひとつ呟くと扉を閉めた。

「昨日夕食の際、エタ様に難癖を付けておられました。魔族なのでしょう、と。司祭がその場で収めておりましたが」

通り際に騎士が耳打ちした。なるほど白髪の聖女候補人気はこのように作用するのか。

「そうか。情報感謝する」

目を見て礼を言うと慌てて頭を下げた。



次の部屋ではまず濃灰色の後頭部が目についた。ベッドを背もたれに座り込み、首が外れ落ちるのではと心配するくらい俯いているからだ。両腕は固く身体を抱き締めるが、震えというには大きすぎる動きを抑えられない。

口から漏れる声というよりも呪詛は、しかし呪われた我が身を嘆いている。

火が、燃え、青い、燃え、灰、終わる、火。

聞き取れた単語が表すのは昨日の暴発か或いは。


この状態でもまだ先ほどの女性よりはまともだと思う自身に頭を振りながら、最後の部屋の扉前に向かう。

二つ目の扉を出てから此方を窺う見張りの騎士は半身で腰の方へ手をやろうとする。明らかな敵意といえない際を探って。丸腰であり魔法での攻撃など出来ない事も分かっているだろうに。それでも中にいる者への警戒心がそうさせる。

「それ程悲愴な顔をするな」

勇気付けるように声を掛けたペルルに、騎士は誰にともなく言った。

「あれが聖女だというのならこの国はもうお終いだ」

「神様の遣いを人風情が理解出来るなどと浅慮甚だしい。地も割らず、風も吹かさず、雷も落とさず。この程度、重畳。退け」

怒気を孕む言葉とは裏腹の平静な、だが確固たる信念に根ざしたその声音に、様子を注視していた残りの騎士たちは聖女を見出した者もまた常ならざる者だと悟る。

ペルルの目の前の騎士だけがまだ、あれに触れれば正気を失う、あれを戴くなど恐ろしい、と繰り返していた。

白髪の聖女候補の後ろに立つ者は、騎士の肩を二度軽く叩くと、そのまま押しのけた。



扉を薄く、自身が入られるだけ開けると、身体を滑り込ませてすぐ閉めた。たん、と小さな音が鳴る。

扉を庇うように振り向く。ふっ、と自然に漏れた息には笑みが混じっていた。

これを見た者と見ていない者の差、か。

騎士たちの反応の違いに得心がいく。


魔力が、部屋全体を漂っていた。嵐の前日のような息苦しくなる空気の重さ。一歩その中心に向かい進めば、それだけで一層呼吸に力が必要となる。吸気には魔力が混じり、敵対するのならば体内を蝕むことも辞さないと気配が語る。

ベッドまでの数歩の距離、その哀惜、その無念、その後悔、魔力とともに空間を泳ぐ感情が心臓をひたりと撫でる。どこで、何が、何を、誰が。何故。一切の具体性を伴わない怨念のみが、過密していく。

その真ん中に、白髪の少女がいた。

ベッドに腰掛けているようだが、マットは少しも沈んでいない。わたわたとよく動く年齢よりも落ち着きの無い手は、膝の上に行儀良く乗っている。思考よりも先に喧しく無礼に開かれる唇は閉ざされ、顔は扉の方を向いているのに何の反応も示さない。

そして。

その目は、凪いだ湖の色をした青い目は、瞳を失い、洞のように窪みとなっていた。


林から宿舎に戻るまで付き添った騎士は触れられなかったという。支えようと差し出した手は、覆う魔力に弾かれた。痛みと痺れだけでなく、激しい動揺に崩れる者まで出た。心身とも鍛え上げた騎士ですら。


もう一歩。負の泥沼に捕らえられ、重く動かぬ足を前に進める。

その足が床に付いた途端、逸らせない視線の先、少女の洞から父の無念が現れ、心を潰さんばかりに握りしめてきた。

小さな村で助祭をしていた父は、司祭様と共に魔獣退治に出て亡くなった。面積だけは広い村の話だ。護警団は別の場所に出た魔獣討伐で不在だった。

圧力に軋む奥底で幾層にも積み重なる瘡蓋が剥がれる。

魔獣ではなかった。父の命を奪ったのは。

気付かなかった、いや気付かぬ振りをして、大聖堂にまんまと入り込んだ。とんだ悪党だ。


私の死を利用した悪党め。

父は繰り返す。それから爪の先で心の奥の皮を剥ぐ。ぺりりぺりりと。それに飽きれば肉を穿ほじくり、傷を広げる。心が流す血は魂を傷つけ、精神を崩し、やがて自我を殺すだろう。


それで。


今更その程度どうしたというのだ。

ペルルは父を見据えた。その指先をより傷口に押しつける。幾らでも穿うがてば良い。事切れるまで血を流させれば良い。その程度、自分で遣っている。

大それた望みを叶えんが為に犠牲を厭わない私を、怨霊如きが邪魔立てできると思うな。

父は音もなく溶けた。



ペルルはついに少女を見下ろせる位置まで来た。粘性の空気が鼻も喉も塞ごうとする。底なし沼で溺れ死ぬときはこんな風だろうと笑う。

手を伸ばす。

その方の、頭の上。

何も無いはずの空間で、聖職者の手は止まる。迷っているのは、彼ではない。


「正されなくてはならない」

初めてあの眼を見た瞬間から。ただ確信だけが満たす。この方の存在が、この世界の過ちの証明だと。

手に力を入れる。つぷつぷと水の中湧き上がる空気の塊に似た抵抗が阻む。喉の奥は完全に塞がれた。

ここで絶えろとの命ならば、それもまた僥倖。

苦しさが増すほどペルルは笑む。閉じてもいない瞼の奥で、子どもの頃に出会った銀髪の女の子が振り返り、代わりに聖詞を詠む。王国の聖典にはない序文、その身を支える詞を。



突然、息苦しさが消えた。

手が、いつの間にかその方の頭に触れていた。心を乱す魔力が、清廉なそれに変わっていた。

瘡蓋すら治す魔力を発しながら、青い瞳が瞬きする。

頭の上に乗る手を払いもせず、白髪の聖女候補は話し始めた。


「嫌なことを、思い出したんだ」

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