第84話 嫉妬
「この王喜様が、一撃で貴様をあの世に送ってやる」
ドラゴンがそれを鼻で笑う。
「戯言を。神より頂いたこの偉大な力が、貴様の様などこの馬の骨とも分からん輩如きにどうにか出来る訳が無かろう」
「ふ、ならば冥途の土産に持って行くといい。神をも超える天才である、この王喜の名をな!」
王喜が大仰に両手を大きく広げる。
隙だらけだ。
私ならこの瞬間に、がら空きの胴体めがけて攻撃を仕掛けるだろう。
だがドラゴンは彼の自信に満ちた無駄な動きに警戒してか、動かない。
王喜の右手に炎が、そして左手には水が纏わりついた。
それ自体はある程度技量の有る者なら難しくはない。
「水と炎?」
水と炎の相性はあまり良いとは言い難い。
炎が物質を燃やすのに対し、水はそれを阻害する性質を持っているからだ。
唯一の例外があるとすれば水蒸気爆発。
王喜は爆発でドラゴンを吹き飛ばす気だろうか?
「――っ!?」
だがその私の予想は大きく外れる。
何を思ったか、彼は炎と水を纏ったそれぞれの手を自身の胸元で合わせた。
そんな事をすれば、自身の目の前で水蒸気爆発が起こってしまう。
だがそうはならなかった。
彼の手の中で相反する筈の炎と水が混ざり合い、一つの大きな力へと変わっていく。
凄まじいエネルギーだ。
「複合能力……」
異なる能力を一つに纏める事は、至難の業と言われている。
それを王喜は私の目の前で……
「……」
どうやら、私は彼の力を侮っていた様だ。
強化されたブースターの影響や、テスト薬の効果もあるだろ。
だがそれらを考慮したとしても、事ギフトに関して彼は天才と言わざるを得ない。
「なんだその力は!?」
「ははははは!これが天才の力だ!」
王喜は手の中の力を引き延ばす。
まるで弓を引き絞る様な体制だ。
「受けるがいい!エターナル・王喜・バスター!!」
ネーミングは最低だった。
だがその威力は本物だ。
まるで矢を放つかの様に彼の手から撃ちだされた一撃は、破壊の嵐となってドラゴンを襲う。
「ぐえぁあぁぁぁぁぁ!!」
それはドラゴンの上半身を容易く吹き飛ばし、建物に大穴を開けて消えていく。
下半身と残された足はその場に崩れ、そして消滅する。
……悔しい。
能力者としての純粋なパワーの差。
恐らくどれだけ努力したとしても、私にはこれ程の力が出せる様にはならないだろ。
その純粋なまでの才能の差が、悔しくて仕方が無い。
真央様の役に立つため、私は強くならなければならないのに……
王喜如きに嫉妬しなければならない自分の不甲斐なさが、どうしようも情けなかった。
「ははははは!これが王喜様の力だ!ははははははは……は……」
大声で馬鹿笑いをしていたと思ったら、急に電池の切れたオモチャの様に王喜がその場に倒れこむ。
どうやら今の一撃は、かなり体に負担がかかる物だった様だ。
「はぁ……」
それを見て、私は大きく溜息を吐く。
相手が喰らってくれたから良かった物の、もしはずしていたらこの男はどうするつもりだったのだろうか?
まあ何も考えてはいないか。
真正の馬鹿だし。
倒れた王喜の元へ行く。
涎を垂らし、白目をむいて間抜け面で気絶するその顔を見て、心の底からこいつにだけは負けたくないと思った。
だが才能のある彼はこれからも成長していくだろう。
それに対して、私は既に能力の頭打ちが来ている。
今以上に強くなるには、ギフトに頼らない何らかの力が必要だ。
真央様に手ほどきを受けるのが理想だが、私事の為にあの方の手を煩わせるわけにはいかない。
「気が進まないけど……あの男を頼るしかないわね」
本気を出されていなかったとはいえ、王である真央様に土を付けたあの男。
――
彼の能力はあまり戦闘向きではない上に、そのプラーナの量も多くはなかった。
にも拘らず、その強さは頭抜けている。
能力以外のその強さを、もし手に入れる事が出来たなら……
きっと私はもっと強くなれる筈だ。
その為なら、手段を選ぶつもりはなかった。
戻ったら早速、彼に指導を依頼してみるとしよう。
「担ぐのは……嫌ね」
気絶している王喜を担ごうとしたが、止めた。
ブリーフ一丁だったからだ。
これを担ぐのは流石に気持ち悪い。
私はその片足を掴み、彼を引きずる事にした。
この男にはこれで十分だ。
「貴方達、私について来て」
仲間である彼に対する私の行動がアレなせいか全、員引いていた。
「これは頑丈だから、気にしなくていいわ」
私は子供達を連れ、バギーへと向かう。
任務完了だ。
学園ランキング最強はチートで無双する~能力はゴミだが、異世界転生で得たチート能力で最強~ まんじ @11922960
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