第16話

 夜が明けました。吾平が戸を開けると、太一はもう来て座っていました。太一は心配のためか、少しやつれてみえました。そして吾平の姿を見るなり、

「まりは大丈夫か。目は覚めたか。」

と聞きました。吾平は何も言わずに、太一の手を引いて中に入れてやりました。

 太一は家の中に入ってゆきました。すると、どうでしょう。色のまっ白な、まぶしいほどに美しい娘が、布団から身を起こしているではありませんか。太一はおどろきのあまり口もきけず、ただ立ちつくしていました。すると、おたよが涙を流しながら言いました。

「太一さん、これがまりの本当の姿なんですよ。今まで、神様がかくしていらしたんですよ。」

 太一はまりの目をじっと見つめました。まりも太一の目を見つめていました。太一は言いました。

「おれは、おまえが好きだ。おまえは、こんなおれを好きになってくれるかい。」

まりは黙ったまま、にっこりと微笑みました。

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食いしんぼの虫の話 OZさん @odisan

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