暴れ回るティラノサウルス

緒賀けゐす

暴れ回るティラノサウルス

 彼女は教室という生態系の頂点に立つ、いわばティラノサウルスであった。そのカリスマ性はすごく、まさしくクラスの全員が彼女の友達であった。


 ――といってもこれはあくまで比喩であり、どのくらいティラノサウルスしているかと聞かれると困ってしまう。呼吸をする生物であること、丸太のような太もも、大きく何でも噛み砕く強靱な顎。共通点なんてその程度だ。そりゃあ、大きさだって違う。ティラノサウルスは最大で体長11~13メートルもあったらしいが、彼女は4メートル95センチとティラノサウルスと比べれば随分と小柄だった。


「 ね ぇ 、 た た き ー 、ノ ー ト 見 せ て く ん な い ? 」


 肺腑に響くバリトンボイスが、私の頭上から降り注ぐ。彼女のために天井を取っ払った教室は、実に開放感がある。それでも彼女からすれば人形の家のようなもので、背筋を伸ばせば二階部分の天井にヒビが入る。


「えー、ティラちゃんまた宿題忘れてきたの?」


 周囲の友達からティラノサウルスと呼ばれることを、彼女は拒まない。それどころかむしろお気に入りらしく、いつしかその理由を聞けば「卵生だから」という回答を得られた。そのへんも、きっと彼女が多くの人間に好かれるカリスマ性の一つといえるだろう。


「 ご め ん 、 昨 日 動 画 見 て た ら そ の ま ま 寝 ち ゃ っ て た ん だ 」

「もー、どうせまた豚の屠殺とさつとか見てたんでしょー?」

「 違 う 違 う 、 マ グ ロ の 解 体 シ ョ ー 」

「いや、似たようなもんだから……はい、急いでよーもうあと五分なんだから」

「 あ り が と ー !!」


 私の差し出したノートは、唸る彼女の第二右腕によって高さ2メートルの机の上に叩き付けられる。ラミネート加工を施したノートも、幾多の殴打にへろへろだ。

 それでも、彼女が私に向けた笑顔は眩しかった。にっこりと見せた歯の間には朝ご飯であろう何かの生肉の残骸が挟まっていて、お茶目っぷりも白亜紀級だった。

 賢明に八つのうち三つの眼球をノートに向け、彼女はノートを写す。

 するとその時、彼女は痙攣したように背筋を震わせた。


「 ふ ぇ 、 ふ ぇ ――――」


 彼女が仰け反るのを見て、私は机の脇に備えてあるシールドを構える。教室を見渡すと、他の皆も同じようにシールドを彼女に向けて構えていた。あれ……委員長、いつの間にかシールドを椅子に固定してやがる。


「 ぶ ぇ っ く し ょ ん !!!」


 引ききった弓が矢を放つように、彼女は大きなくしゃみをした。濃硫酸に勝るとも劣らない酸化力を誇る彼女のつばが、散弾銃の如く前方45度の範囲を襲う。隣の席の私には被害なし。歴戦のクラスメイトたる皆にとってもこの程度は朝飯前で、今回も人的被害はゼロだ。……あ、挟まってた生肉が委員長のシールドにくっついてる。


「―― あ 」


 くしゃみをして鼻をすすった彼女は、ふとそんな間抜けな声を漏らした。


「 ご め ん た た き ー 、 ノ ー ト が ……」


 彼女はノートを差し出す。私のノートは彼女の唾液でぐちょぐちょで、文字はもう判別がつかないような状態だった。


「あちゃー、こりゃもう使えないね」

「 ど う し よ う 、 こ れ じ ゃ た た き ー が …… 」

「あ、いいのいいの、それ借りてた委員長のだから」

「はああああ!?」


 前方の席、黙々と読書に勤しんでいた委員長が激昂の表情で立ち上がる。


「ちょっとタタキ、人のノートを身代わりにするってどういうことよ!」


 せっかくの綺麗なお顔は怒り満子みちこなご様子で、さらさらの黒髪は修羅の様相でメラメラと逆立てて台無しだ。いかんいかん、このままでは委員長の業火に焼かれてしまう。いつぞやの旧校舎みたく、骨組みと炭しか残らないのはごめんだ。


「委員長、どーどー。委員長のはちゃんと無事です。ティラちゃんに貸したのはバックアップ用なのだ」


 机の中から、私は借りていた委員長のノートを取り出す。それを確認すると、委員長は逆立てた髪の毛を下ろした。


「――ったく。紛らわしい真似しないでよね」

「 バ ッ ク ア ッ プ っ て 、 そ れ じ ゃ あ 」

「うむ、まだもう一冊あるのだよティラちゃん。私ぐらいになると、このぐらい想定内だからね!」


 どうせまたコピペすればいいだけの話だし。


「 た た き ー ……! 大 好 き !」


 彼女の手に掴み挙げられ、私は宙に浮く。


「ばっ、ティラちゃんストップ! パンツ! パンツ見えるから!」


 プライバシーなんて中生代で絶滅したぜと言わんばかりに、彼女は私を持ってグルグルと回転する。下手なアトラクションより過激な動きに、三半規管の悲鳴と骨が軋むような音が聞こえてくる。


「ティラ、ミス――」


 んで、意識はカカオパウダーの海かどこかにブラックアウトした。



  *  *  *



 背を突き上げるような衝撃と響き渡る轟音で、私は目を覚ました。

 ここは……保健室か。

 大方意識を失ったであろう私を、誰かがここまで運んできたのだろう。窓の外は黄昏色に染まり、既に放課後であることを知らせていた。


 ゴゴゴゴ……!


 大地の唸りが校舎を軋ませる。地震かと思って掛けられていた毛布で咄嗟に頭を守るが、続いて聞こえて来た大きな叫び声に、私は事態を察した。


「もしかして、ティラちゃんに何か……!!」


 ぐずぐずしちゃいられない。私は直ぐさまベッドから飛び出し、ブレザーを羽織って廊下へと駆け出た。


「タタキ! 良かった無事だ!」


 ナイスタイミングだったようで、出てすぐに保健室に向かっていた委員長と合流する。

 委員長はブレザーを着ておらず、上には煤焼けたブラウスだけ。よく見れば、あのナイスキューティクルで定評のある黒髪の毛先も縮れている。


「委員長!? 一体何があったの!?」

「ティラノが暴れ回ってるの! 理由は知らない! 今は学校とその周辺を壊して回ってる!」

「ティラちゃんが……!? どうしてそんなことを!?」

「だから知らないって言ってるでしょ! ああもう、私の炎も効かないし……!」


 委員長はむしゃくしゃと頭を掻きむしり、ひどく焦っていた。委員長の3000度の炎が通じないとは、ティラちゃんいつの間にそんな耐熱耐性を……?


「いいから、説明は後! タタキも手伝って!」


 無言で頷き、私は委員長の後に続いて廊下を駆ける。その間も大きな地響きが訪れ、私達のバランスを崩させた。

 おかしい、いくらティラちゃんでもこんな大きな衝撃は――。


「いた、あそこ!」


 立ち止まり、委員長が指差す窓の外。

 西日をバックに、建物よりもはるかに大きなシルエットが浮かんでいた。


「ティラちゃん……って」


 そこにいたのは、確かにティラちゃんだった。

 8つの目、4本の腕、柱とも見間違う太もも、大きく隆々とした顎に、顔を覗かせる大きな牙。

 けれどいつもと違うのは、5メートル弱だったはずのティラちゃんが、今では容易く50メートルには達していそうなところだった。ティラノサウルスを悠々と超えたそのスケールは、最早竜脚類の域。


「何あれ……あんなの怪獣じゃん!」


 元来、生物はサイズ感の脅威に畏怖を抱く。シロナガスクジラ、エアーズロック、特盛りパフェ、エトセトラエトセトラ。

 足の震えが分かる。私は今、巨大化した親友に恐れを抱いていた。


「――でも、私達で止めなきゃいけないわ」


 けれどその脇で、一人の少女は真っ直ぐな眼差しを向けていた。眼鏡の眼差しには、鉄をも溶かす彼女のほむらが激しく燃えている。

 ティラちゃんが吠える。低く全てを震わすその咆哮に、窓ガラスは軋み音を鳴らす。


「見なさいよ、彼女、泣いてるわ」

「分かってる……」


 そうだ、きっとあれは、彼女の心の叫び声。

 私達に助けて欲しいという、SOSのメッセージだ。


「行こう、委員長!」


 私の言葉に、今度は委員長が頷く。そして私達は昇降口を飛び出し、ティラちゃんの山のような背中を追った。



  *  *  *



 ひび割れた道路を二台のバイクが疾走する。委員長の連絡により、バイク通学するクラスメイト二人が運送役として私達を後ろに乗せて走っていた。


 ティラちゃんはゆっくりとした足取りのように見えるが、サイズがサイズなので一歩が大きい。走って追い付くようなものではないため、委員長の判断は正解だったといえよう。


「――っ、来るぞ!」


 バイクを運転する男子がそう叫ぶと同時、ティラちゃんは身体を反らした。

 くしゃみという名を冠した、強酸性の暴風が私達の前方へと吹き下ろされる。その威力は凄まじく、家屋は風によって簡単に宙に舞った。

 そして地面に衝突したくしゃみは、高気圧の要領で私達の方にもその猛威を振るいに来た。


『そのまま突っ込んで!』


 インカム越しに、委員長の怒号が飛ぶ。一度スピードを緩める素振りを見せたバイクが、再び速度を上げだした。

 そしてくしゃみが到達しようかという刹那、目の前を爆炎が覆った。委員長の炎的なアレである。


 ティラちゃんの唾を蒸発尽くしたその炎に、委員長は追加でさらなる業火を流し込む。気化したティラちゃんの唾を避けるためだ。そしてその中へ、私達の乗るバイクは突っ込み、そして駆け抜けた。一瞬ではあったが、全身を痛烈な熱が覆った。インスタ映え間違いなしのその瞬間を撮れないのは残念だが、今は何よりもティラちゃんが優先だ。彼女を止めるには、一体どうすれば……。


「とりあえず、ティラちゃんを追い越さないことにはどうにも……」


 私は一生懸命片手で掴まりながら、正面に立つ、この街のランドマーク的なビルを指差す。しかし、そのためにはティラちゃんを追い越す必要が――。


『おっしゃ、任せろ!』


 が、私のそんな心配も杞憂だったらしく、クラスメイト(名前覚えて無くてごめんね)の彼は目一杯にアクセルを入れ、直ぐさま法定速度を突破した。巧みなハンドル捌きで道に落ちる瓦礫を避け、あっという間にティラちゃんへと並んでみせる。


「やるね君! 後で一回デートしたげるよ!」

『悪い、彼女いるんでナシだ』

「はぁ? このリア充め私を降ろした後死んどけ!」

『ええ、なんで俺キレられなきゃ――って、上! 上!』


 私達の進む先、楕円形の陰が落ちていた。

 頭上を見上げる。8つの目全ての焦点に私達を捉えたティラちゃんが、今まさに私達を踏みつぶそうとしていた。


「『ぎゃーーー!!??』」


 咄嗟の判断だったのか、運転手の男子は急ハンドルを切る。すんでのところで私達はティラちゃんの足を回避するが、勢いそのまま、私達はバイクから投げ出された。


「『ぎゃーーーーーー!!??』」


 こういう時、人はアドレナリンばんばんで時間がゆっくりと進むように見える。

 だから、見る事ができた。

 ティラちゃんが、私を見て目を見開くところを。

 ざばーん、という音に続き、感じたのは息苦しさ、そして吐き気を催すえげつない臭いだった。


「……おげぇ!」


 重い身体を必死に動かし、私はもがく。やっとのことでメットを外すと、どうにか視界が復活した。どうやら私はドブ池に落ちていたようだった。ああ、あの道路沿いの臭いことで有名な……。

 運転していた彼も、脇でその臭いに苦しんでいる。まぁ、ここでなかったなら死んでいただろう、水質は死んでいるけど。とりあえず、この池に感謝だ。

 地響きが、水面を大きく揺らす。私を見ていたはずのティラちゃんは、再びどこかへと歩き出してしまった。


「タタキ! 大丈夫!?」


 池のほとりで、委員長が私に呼びかけていた。そうだよね、入りたかぁないよね。


「どうにか生きてるよ……いてて」


 立ち上がろうとすると、足に痛烈な痛みを感じた。折れてるか、そうでないにしても結構な怪我をしている感じだ。


「大丈夫か? 肩貸すぞ」

「彼女さんに、怒られないのなら……」


 運転手の彼の肩を借り、私はどうにか池の畔にまで辿り着いた。

 私達の乗っていたバイクは盛大に壊れてしまっていた。相棒を失った悲しみに暮れる彼を、委員長を乗せていた方の男子が慰めていた。


 こうなると、私と委員長でティラちゃんを止めるというのは難しい。


「どうしましょう、このままだとティラノが……」


 委員長は眉を寄せ、代わりの打開策を模索する。

 ――するとその時、私のスマホが通知音を鳴らした。


「――っ!! お前、あんなドブ池に落ちても無事とか最強か!?」


 などと言いながら、私は導かれるようにスマホを開く。何てことはない、ツイッターでいいねをもらったという通知だった。

 そのままツイッターを開き、TLを確認する。


 その中に、私は逆転の手口を見つけた。

 ――そして、ティラちゃんがこうなった原因も。


「……なるほど、そういうことだったのね」

「? どういうことよタタキ」

「……『Word』のアップデートだよ」


 私の言葉に、委員長はまだ首を傾げる。


「今回のアップデートで、Wordに3Dモデルが色々追加されたの。鼓動する心臓、周回する惑星……そして、暴れ回るティラノサウルス」

「っ!?」


 そこまで喋ると、委員長も事を察したようだった。


「そうか、それで"ティラノサウルス"たる彼女にもアップデートが適用されて」

「そう……でも、彼女はじゃない」

「それで不完全なアップデートになって、無駄に容量だけ巨大化して」

「自我を失いかけて暴れてる、ってとこだね」


 二人でピースを埋めるように、私達は言葉を繋げる。

 さて、理由は分かった。なら、やることはひとつだ。


「今回のアップデートで、使えそうなのは……と、あった」

「……一人で行くの?」

「うん、ティラちゃんを助けられるのは、悪いけど私だけだよ」


 ――Wordの3Dは、私の領域なのだから。


 少し強気に言ってやると、委員長は肩を竦めて笑った。


「頼んだわよ、三和土たたきさん」

「……任しとき」


 どんどんと離れていく、夕日に浮かぶティラちゃんのシルエットに目を向ける。

 そして私は肺たっぷりに空気を吸い込んで――、


 今行くよ、ティラちゃん。


「我言葉よりなる世界にて唯一なる神なり。我有りてテキスト有り、我有りてWord有り。世界は此テキストなり。我言葉を紡ぐそれ即ち世界の創造、我3D貼りし時、それ即ち世界に顕現せんこと疑う余地なし。さぁ今ここに我3D貼りけり――出でよドラゴン!!」


 一息に言葉を紡ぎ終えた瞬間、水面に巨大な魔方陣が現れる。

 そして刹那の静寂を挟み、魔方陣から大きなものが飛び出した。

 それは宙を舞い、私の目の前に降り立つ。

 紛う事なき、ドラゴンがそこに現れた。その見た目はドラゴンのイメージの中でも比較的痩躯で、世界的に有名なあの名前を言ってはいけないあの人が敵の作品に出てくるなんかが近かった。トカゲに羽根を付けたような、というのが近いだろうか。


 私は迷うこと無く、その巨大なドラゴンの背中に乗る。

 そして、ふと思うのだった。


「委員長乗れるねこれ?」

「……あんなやりとりしといて乗るのは、スゴく恥ずかしいわね」


 でも、と委員長は言葉を空けて、


「助けに行けるなら、それに越したことはないわね」


 そう微笑んでみせた。



  *  *  *



「瓦礫!? 瓦礫はズルいよティラちゃん!!」


 ティラちゃんが投げつけてきたコンクリート塊を、私はドラゴンを操って回避する。私が世界に挿入した3Dモデルだ、初めてではあったが、存外自由に動かせた。


 ドラゴンに乗った私達はすぐにティラちゃんのところに追い付いたのだが、近付こうと思うとそれはまた難儀な話だった。彼女は8つの目に4本の腕を持っている。不用意に近付こうものなら、簡単に落されてしまうのだ。

 物理攻撃は回避、くしゃみは委員長による迎撃というかたちで時間ばかりが過ぎ、街はもうすぐ日が暮れそうになっていた。


「どうするの三和土たたき、埒が明かないわ」

「うーん、どうにか身体に触れることができれば、この戦いを終わらせることができるんだけど」

「コピペは? 数でかかればいけるかもしれない」

「だめ、スペック低いからドラゴン一体で限界」


 そうこう口論している間にも、くしゃみが私達を襲う。委員長が炎を放ち、難を逃れる。


「コピペが無理……切り取り……切り取り?」


 ――なるほど、その手があったか。


「行くよ、委員長!」


 私はドラゴンの首をしっかりと掴み、急降下を命じる。

 委員長も驚いたように必死に掴まる。

 急降下の空気圧が、身体を包み込む。

 眼下のティラちゃんが段々と大きくなる。

 8つの目が、見開かれて私達を見据えていた。


「行くよって、このままじゃ払い落とされるだけでしょ!?」

「行くのは、『切り取りの世界』だよ!」


 そしてティラちゃんの手が私達を払い落とそうとしたその瞬間、私は私達を切り取ったCtrl+X


 一瞬訪れる、真っ暗闇の世界。

 直ぐさま私は、一つのものを思い浮かべる。

 あの大きくて、皮の厚くて……でも、確かな暖かさがそこにある、彼女の背中を。


「――貼り付けCtrl+V


 私が呟いた途端、世界に茜色の空が広がった。

 そして目の前にあるのは、中々手の届かなったティラちゃんの身体。


「The World is My Word――」


 さっきはカッコつけてフル尺日本語版でいったその枕詞を省略しつつ、私は彼女の身体に触れる。確かに、暖かかった。


「サイズ、縮小」



  *  *  *



「 た た き ー 、 お は よ ー」

「おはよー」


 相も変わらず、彼女の声は内臓に響く。でもこの生活を続けていると、朝イチでこれがないと足りない身体になるものだ。ソースは私。


 ティラちゃんの記憶から、あの時の騒動は消えている。というかあの騒動事態、覚えている者は私と委員長以外に存在していないだろう。


 世界の損傷箇所をバックアップから修復し、各々の記憶も消す。

 それはこのテキスト・ファイル・ワールドを管理する筆者ライターたる私と、管理者兼防衛壁ファイアウォールたる委員長にとって、山のようにある業務のほんの一つでしかないのかもしれない。


『あなたもまた、どうしてこんな出来損ないのモンスターを好きになるのかしら、よりによって自動成長機能まで付与して……容量の大半はあの子関連なんだからね』


 、いつか委員長に言われた言葉をふと思い出した。

 私はつい、微笑みを漏らす。


「 ……? ど う し た の 、た た き ー 」

「ん? そうだね……」


「人間ってのは、そういうものを好きになるんじゃないかな」


 窓の外、ドラゴンが青空を飛んでいた。

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