第9話:異世界養老馬放牧

 女神が異世界に用意してくれた放牧地は、果てが見えないくらい広大だった。

 そこに馬を離すのなら、無制限に廃馬を引き取ることができる。

 養老馬として、ばんえい競馬の廃馬を引き取れば無料だ。

 中央競馬や地方競馬の廃馬を引きとっても無料だ。

 北海道から廃村までの輸送費は15万円程度だが、中央競馬の最終開催の福島からの輸送ならもっと安くて済む。


 ですが、養老馬として引き取ってしまうと、後々見に来る人間がいるかもしれないが、異世界にいる馬を見せる事などできない。

 それに、弱肉強食で自然放牧するだけで、削蹄する気はない。

 というか、そもそも削蹄する技術がないのだ。

 引き取った馬が何百何千頭になった場合は、俺一人でこちらの世界と異世界を行き来などさせられない。


「なんじゃ、そんな事か、そんな事なら心配はいらんぬぞ。

 お前は従魔の能力を備えておるから、馬ごときは自由自在に扱える。

 こちらの世界に連れてくるのも簡単じゃ。

 こちらの世界に連れて来て削蹄させるもよし、異世界で削蹄させてもいいぞ」


 女神がアイスケーキを口一杯に頬張りながら好き勝手に言っている。

 馬を自由自在に操れるのはいいが、異世界の人間を雇えて言われても困る。

 そもそも異世界に行っても、見渡す限りの草原ではないか。

 人間の村や街が近くにあるとはとても思えない。

 あったらあったで馬が奪われたり殺されたりしてしまう。


「そんな心配など不要じゃ、その草原は私の結界で護られておる。

 人であろうと魔獣であろうと入ってはこれん。

 だが人手が欲しいというのなら、転移門をつけてやるから街に行けばよい。

 牧夫であろうと奴隷であろうと側室であろうとう、好きに連れてくるがいい。

 お前に危害を加えようとする者は、結界からはじき出してやる。

 まあ、そもそもお前に危害を加えられるモノなどおらぬがな。

 だがその代わり、ケーキに加えてシュークリームも寄こせ。

 カスタードクリームと生クリームの両方を寄こすのだ、いいな」


 本当に残念な女神だけど、有り難いのは確かだ。

 馬の手入れに人手がいるのは間違いないし、ハーレムを作りたいのも確かだ。

 できるだけ美人を集めて酒池肉林を愉しみたいけれど、日本に連れてくるのは色々と問題があるから、異世界の住環境をよくするしかないな。

 一番簡単なのはトレーラーハウスを異世界に持ち込むことだよな。

 全長11・0m全幅3・5m全高4・1m4のロフトと付きトレーラーハウスを875万円で購入して異世界に運び込もう。

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宝くじと株で1000億円手に入れた、弟に殺されかけた、廃神社を買って隠れた、女神に異世界に行かされた。 克全 @dokatu

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