第14話 二組の夫婦

健司は赴任前の6月に、ささやかな梢との結婚式をおこなった。都内の小さな教会で形だけの式を挙げ、新婚旅行がてらに、伊豆のコテージ風ホテルに行った。そのホテルに何故か、しおりと誠司も招かれていた。

「なんで、俺達まで呼ぶのかな?両親でも呼べば良いのに?」と誠司の言葉に

「さすがに、新婚旅行に両親は呼ばないでしょう。」としおりが

「でも、俺達だってとってもお邪魔な様な気がするけどな。」と誠司は、長めに休みは取ってきたものの、研究室と弥生の事が気がかりではあった。

健司夫婦とは、別行動で、昔お世話になった、海の家を管理してくれていた夫婦の所に立ち寄ってから、南伊豆の宿に向かった。健司の要請で少し大きめのレンタカーを借りて、久々の伊豆の山並みを走る誠司であったが、この所、K大学とSPring8の往復が多くなった誠司にとって、伊豆の道はかなりスリリングな状況ではあったが、楽しい思いで運転する事が出来ていた。その一つには、助手席にしおりがいる事もあった。

「何だか、楽しそうね。」としおりが声を掛けると

「山道の運転は、其れなりに面白いし、それに、横にしおりが居てくれる事が何より嬉しい。おれの夢の一つがやっと叶ったと言った感じだ。」

しおりに健司が梢と結婚する事を伝えた時、しおりは

「ほー・・・」と言った後、

「あんた達が何時までもハッキリしないから・・・どんだけ私が苦しんだか・・・・でも、嬉しい・・・梢とも仲直りしなきゃ・・・で、誠司は・・・私をどうするつもり?」と説教に近い愚痴をさんざん聞かされてから、

「勿論、俺の嫁にする。」ときっぱりと言い切った。しおりは、誠司の胸に顔を埋めて

「やっと、一人のものになれる。」と言った。その夜、鎌倉の東堂家にいた二人は、しおりの

「わたしの処女をあげるわ。」との言葉で、それまで埋められなかった、体と心の隙間を埋めていった。

その後、血縁関係が無い証明として、二人のDNA鑑定結果と共に、婚姻届けを出し、しおりと誠司も結婚した。

「健司は、お兄ちゃんで良いけど、誠司は・・・・夫だから、『あなた』ね。」としおりに言われた誠司が動揺した様に

「なんか、今、ぞわーときた。」と言って、近くの駐車スペースに車を停めた。眼下の駿河湾を見ながら

「何だか、今、しおりとキスしたい気分だ。」と言いながら、PETボトルのお茶を飲むと

「これからが、大変なのよ。あなたは健司と違って まだ、学生なんだからね。私も働くから・・・子供のことは、計画的に!」と念を押された誠司だったが、嬉しかった。

しおりと誠司がコテージに着くと、既に健司と梢が到着していて、二人を出迎えてくれた。

「いいのか、一応新婚旅行なんだろう?」との誠司の言葉に、

「うん、一寸余興が有るのよね。でも、まじかで見ると、ホントによく似てるのね、健司と!」と梢が意味ありげに返答した。

「随分と、豪勢な宿だね。」との誠司の感想に

「うん、ある伝手から格安で紹介して貰ったのよ。」としおりが答えると

「しおりのプロデュースなのか?」

「そうね、二人の・・・ああ、二組の結婚祝いみたいなものね。」としおりが言った。

部屋は、4人が悠々と眠れそうな、大きなベットがある主寝室と、ツインのサブ寝室、広いリビングから、海へせり出した様に小さなプール並みの浴室があり、眼下に海を見ながらその先に霞んだ大きな町が見え、夜景が綺麗だろうなと誠司は思っていた。

「海岸、砂浜は・・・・?」

「この下は、岩場の海岸で、左手にいけば海水浴が出来る海岸が有るけど、砂じゃ無くて細かい砂利なのよ。海水浴にはまだ早いけど、透き通った綺麗な海水で熱帯魚見たいな魚が沢山いたわ。」と早めに着いていた梢が、周囲の探索結果を説明してくれていた。梢が、皆に珈琲を入れてくれて、夫々に雑談をしているうちに夕食となり、メインレストランで、魚と肉が出る準フルコース風の料理を4人で食べた。健司は、海外赴任の内容を話、ヨーロッパでほぼ半年、主に滞在するのは、スイスのジュネーブらしく、その期間中に各国を回るらしい、語学研修も兼ねているので、単独行動もあるとかの内容だった。その後、アメリカでは、USAを拠点に各国を回るらしかった。

「なー、それっって、スパイ養成所みたいだな?」と誠司が茶々を入れると、

「外交的な、情報取集も研修の一部みたいで、どうも、その中に偽情報が含まれていて、それを見破るかも課題らしいんだが。」

「うーん、ますます、ゼロ、ゼロ健司だな。」と誠司が言うと皆が笑い出し

「全然、似合わない。」と梢が、

「敵の、女スパイに騙されない様にね。」としおりが茶化した。食後、夫々がホテルの施設や周辺を散策後、部屋に戻ると、しおりと梢に促され、誠司と健司が大きな浴槽に入り、遠くの夜景と、水面に映し出された月を見ていた。そんな、ゆったりとした時間が有った後に、おもむろにしおりと梢が入浴してきた。

「まずは、梢から、何方かを選びなさい。」としおりが言うと、二人に近づいてきた梢が、二人の顔を見ながら、

「裸だと、本当に分からないわね。」と言ってから、誠司に抱き付いた。

「二人とも、黙っていてね。自分の夫を当てるクイズだから。この後、自分の選んだカップルで楽しむのよ。」としおりが言ったが、既に、梢に唇を奪われている誠司が内心

「いいのか!」と驚愕していた。しおりは、健司に抱き付きながら、「選別代わりね。」と言って、何か言おうとしている健司の唇を奪っていた。夫々の、二人の妻達に、攻め立てられながら、広いベットで、二組のカップルが愛撫を繰り返し、

「しおり、健司さんが居ない間に、たまには誠司さんを貸してよ。」と梢が言うと

「ダメ!でも、健司が戻ってきたら、たまには取り換えっこしても良いわよ。どうせ、子供の父親のDNAは同じだからね。」と笑いながら答えると

「私は、1年も、淋しい思いをするのよ。」と梢が言った。

「おい、当事者に相談無く勝手に事を決めるな。」と誠司が反論したが、その唇を、梢が塞ぐように深いキスをして誠司の上に乗った。

「誠司さん、逝っちゃっていいからね。」との梢の行為にたまらなく成った、

「しおり、良いのか?」と叫びながら誠司が果てた。

健司は、遂げられなかったしおりへの思いが高まり、強くしおりを求めながら果てた。暫くの沈黙の後、梢もしおりも余韻を楽しむ様に、健司と誠司を優しく愛撫しながら

「新婚そうそう、不倫するとは思わなかったわ。」と梢が言うと

「しおりが、誠司を選ぶからそうなったのよ。」としおりが

「しおりだって、健司さんとしたかったんでしょ。」と梢が

「じゃー、チェンジしようか。」と言いながら、しおりと梢が入れ替わった。

「ねえ、誠司、他人の奥さんの味はどうだった?」としおりが含む様に聞いてきたので

「おれ、健司だけど。」と誠司が嘘を言うと、しおりがビックリした様な顔で、隣の健司と見比べていると

「ええーしおりにも、どっちがどっちだか分からないの?」と梢が言った。

「ダメよ。嘘ついても、私には分かるから。」

「それより、健司とはどうだった?」と誠司が聞くと

「基本、何方も同じね。梢の意見も聞かなきゃ分からないけど。もう少したてば、違いが出るかもよ。」

二回戦目に突入した、二組が夫々に

「ああ、やっぱりこっちがいいわ。処女をあげた方だから。」としおりも梢も同じ言葉をあげていた。

朝方、湯舟に浸かっている、誠司としおりの元に、健司と梢も来て

「ねー、そっちって本当に誠司さん?」と梢が言うと

「まだ、分からないの、寝てる間に入れ替わったから、こっちが健司よ。」としおりが嘘を言ったので、梢が、誠司に近づき、首筋のキスマークを確認してから

「マーキングしてあるからね。」と笑いながら言うと、

「ちぇー、残念!」としおりが言ったのを、全員で笑っていた。

「本来は、倫理的も不味い事かもしれないけど、とっても楽しい。どっちが旦那か分から無いけど、二人の男を抱けるなんて、しおりが羨ましいわ。」梢が言うと

「私は、二人に抱かれていたの、抱いたんじゃなくて。もう、それなら、誠司と健司とで梢を抱きなさい。」としおりが言うと

「二人でなんてできるの?」とたじろぐ梢を、健司と誠司が右からと左からとで愛撫し始め、暫くそれを受け入れていた梢だったが

「だめ、のぼせちゃうわ。」といって湯舟を出て行った。ターゲットを無くした二人がしおりに攻めて来ると、暫く受け入れていたしおりも

「ほんと、のぼせちゃうわ、ベットに行こう。」と誘って、三人は移動した。すでに、のぼせて倒れこんでいる梢の横で、三人の行為が始まり、満足したしおりが浅い眠りに着いたのを見計らって、健司が、梢を愛撫し始めた。梢は、夢うつつの中、健司と誠司に何度かいかされて果てた。

「なあ、良いのかこんな事してて・・・」

「本人達が、了解しているからな。まあ、俺のいない間、しおりの許可を貰って、たまには相手してやってくれ、その代わり、帰ってきたら俺にもしおりを抱かせろよ。」湯舟に移動した二人で、よからぬ密約をしていた頃に、夜が明け、眩しい光が海を照らし出していた。

「奥様達、そろそろ起きませんか?」爆睡状態の二人を優しく起こしながら、シャッターを開け、光がベットまで挿すようにしてから声を掛けた。健司に声を掛けられた梢は

「ねぇー、今晩もまたしてー」と言いながら再び眠りについていて、しおりは完全に沈没している様子で、

「まあー、二十年ぶりの思いが叶ったんだからな。」と誠司がしおりの頭を優しく撫でていた。

「しょうがない、俺達だけで、朝食に行こう。」と健司が言うと、誠司も同意してレストランに向かった。二人は、朝食を済ませてから、持ち帰り用のサンドイッチやフルーツやらをあつらえてもらって自室に戻った。

「今日は、どうするんだ?」と誠司が健司に言うと

「まあーあのお二人が、目が覚めてからかな、近くの海鮮市場にでもいって海の幸でも食おうかと思っていたが。」

部屋に戻った二人が、夫々にPCで仕事をしていると、しおりが起きてきて

「お腹すいた。」と言ってから、あつらえて貰ったサンドイッチをパクついた後、浴室に消えた。健司が梢を起こしに行くと、

「おかーさん、もう少し寝かせて・・・」と言いながら目を覚ました様だが

「えー、なんで私、裸なの!ええー」と言いながら、健司のマッサージで段々覚醒してきていた。しおりと同じように、フルーツとサンドイッチをパクついてから浴室に消え、結構時間を掛けて身支度をしてから姿を現した。

 4人は、ベットメイクの札をドアノブに掛けて、誠司の運転する車で下田まで行き、地元の海の幸を扱っている市場で炭火焼で食べる海鮮定食を楽しみ、酒のつまみに成るような物を買い入れてからホテルに戻って来た。

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