第二話 ハイバ・クトー
その家の、二番目の子は「トネム」という名前らしい。小学生くらいの男の子だ。湖の名前がトネム・シャビだったと思い出す。それから、街の名前はトネム・イカシだ。
何かそれに関係した名前なのかと思ったのだけど、どうやら「トネム」というのは二番目という意味らしい。
でも、だとすると、この大きい湖の何が「
家の中心は暖炉だ。実際に真ん中に置いてあるわけじゃないけど、大抵は暖炉に火を入れているから、その前の敷物の上に座り込んだり、寝転んだり、みんな自然と暖炉の周りに集まることになる。人が集まると、中心になる気がする。
暖炉の中で薪が爆ぜる音がする。火の燃える静かな音と、暖炉の火を使って
子供たちの語りは容赦のない早口で、何人かで代わる代わる、時にはいっぺんに喋るものだから、聞き取るのが大変だった。俺は何度も
聞き取るのが難しいのは変わらない。
「
「ソヒミネ」
俺の言葉に重なった声が返ってくる。ミネというのは、ちょっと難しかったんだけど、多分ルームさんが言っていた「
俺はちょっと考えてから、両手を広げて頭上に上げる。
「
子供たちは目を大きく丸く見開いて、俺のように両手を持ち上げたり広げたりして、また口々に言葉を発する。「
本当かどうかはわからない。でも、それだけ大きい人がいた、ということらしい。昔話みたいなものかもしれない。
大きい人は「
細かい話はほとんどわからなかった。どうして湖に関係しているのが
ケヴァさんが笑いながらやってきて、子供たちに何かを言うと、子供たちはお喋りをやめてわっと歓声を上げた。ケヴァさんは子供たちに「
どうやらお茶の時間らしい。子供たちはもう、俺のことよりも焼き立ての
ケヴァさんは厚い布を使って
「シル、ユーヤ、
シルはその「
それに、ケヴァさんを手伝った後は、大抵美味しいものが待っている。
声をかけられて嬉しそうに立ち上がったシルは、隣で同じように立ち上がった俺の腕を引っ張った。
俺とシルがケヴァさんに頼まれたのは、
暖炉の脇には鍋を置く場所が作られていて、そこに置くと暖炉の熱が程よく伝わるようになっている。
今もそこから手鍋を運んできて、並べたカップに少しずつ注ぐ。俺が注いだ
ケヴァさんは、木でできたトングのような形のもので、熱々の鉄板から大きなお皿に
ケヴァさんが作る焼き立ての
手のひらの上で食べて、手のひらに零れ落ちた生地を舐めとる。口の中でとろりとしたジャムとぽろぽろと乾いた生地が絡む。生地が焼けた香ばしいにおいと、甘酸っぱさをまとめて飲み込む。
そうやって気を付けて食べていても、口の周りにも崩れた生地の欠片が貼り付くし、胸元にも零れ落ちてしまう。見れば、子供たちも同じようにぽろぽろと生地を零して食べていたし、なんならケヴァさんも生地を零していた。
ぽろぽろと零しながらみんなで二つずつくらい食べて、
それから口の周りを拭いて手も拭いて、胸元に零れ落ちた生地を叩き落として、みんなで床を掃除した。テーブルの上を濡らした布で拭く。床の上を箒のようなもので掃く。ついでに子供たちは家のあちこちを箒で掃いて回った。これも退屈な
俺とシルはケヴァさんに言われて、カップを拭いていた。シルの手付きは、陶器のカップを扱うには少し危なっかしいものだったけど、何度かやるうちに慣れてきたみたいだった。一つ一つに時間を掛けはするけど、それでも丁寧に綺麗に、食器を拭く。
ケヴァさんはいつも「
そうやって二人でカップを綺麗に拭き上げて、テーブルの上に並べて、俺とシルは顔を見合わせた。
「ハイバ、クトー」
辿々しい発音で、シルが言う。それに応える俺も片言だった。
「
シルが笑う。俺も応えて笑う。
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