第十五章 雪の季節
第一話 寒い季節の楽しみ
俺とシルはトネム・イカシで
それ以外だと、暖かい服や織物なんかも買い足した。宿屋の人に頼んだ食料以外でも、自分たちで食べたいものも買ったりした。ドライフルーツだとか、保存食の瓶詰めのフルーツなんかだ。
この街の人たちはみんな働き者だ。昼間は森に行って食べ物を集めてきて、それをせっせと保存食にする。燻製肉、干し野菜、干しきのこ、ドライフルーツ、瓶詰め、果実酒。
そして夜になったら街のあちこちで飲み食いして踊り歌う。本当に毎日。すごいエネルギーだと思う。
そんな
トネム・シャビを訪れる
同じように
だから最初のうちは、
そうして、気付けば急に夜が寒くなった。朝には霜で地面が白くなった。湖に氷が張るようになった。そう思っているうちに
そして、ある日降り始めた
雪が積もっている間、家の出入りは二階からするらしい。二階の廊下の突き当たりにドアがあって、その先になんだか玄関みたいなスペースがあると思っていたのだけど、それは間違いなく玄関だったみたいだった。
とは言っても、外は雪。特に天気の悪い日は、わざわざ外に出るようなこともない。
建物の奥に勝手口のようなドアがあって、そこを開くと壁に囲われた土間になっている。家の中は暖炉の熱が巡るようになっていて暖かいのに、土間の空間だけはじっとりと冷たい。壁のすぐ向こうに雪が積もっているのが伝わってくる、冬の空気だ。
そこに、
この辺りでは、雪の間は外に出なくても良いだけの備えをするものらしい。
宿の人にはよく声を掛けられて、特にケヴァさんというその家のおばあさんに頼まれて、俺とシルはその家の子供たちと一緒に土間や貯蔵庫に向かうことになった。そこで、子供達がひんやりした野菜だとか
ケヴァさんは銀髪のような白髪をまとめ上げて、首も顔も手もシワだらけなのだけど、しゃきしゃきと動き回る元気な人だ。それで、いつも美味しいものを作っている。
そんなケヴァさんに頼まれる仕事を、シルは楽しんでいた。何度か手伝っているうちに材料と出来上がりの料理の関係がわかってきたらしい。料理の名前もいくつか覚えた。自分が運んでいる食材を見て「今日は
俺とシルはそんな風に話しかけられたり、何かちょっとした手伝いをお願いされたり──理解できる言葉はまだ少ないけど、何かと気にかけてもらえるのはわかる。
そうやって、シルが体重をかけて
シルがこねたパンを手のひらでぺたぺたと触ると、にこにこと笑って「ハイバ・クトー・ハイバ」と繰り返した。
「ハイバ・クトー」
シルがその言葉を繰り返す。意味はわかっていないんだと思う。
「多分だけど、上手とか……褒めてるんだと思う」
俺の言葉に、シルはびっくりしたように目を見開いて、何度か瞬きをして、それから自分がこねて今はまあるくなっている
それから、俺を見て笑った。
「ハイバ・クトーって、嬉しい」
「『イトス』っていうのが『ありがとう』って意味みたいだよ」
シルはちょっと考えてからケヴァさんの方を振り向いて、何か言いたそうに口を開く。言葉はすぐに出てこなくて、困ったような顔で俺を見る。俺はただ頷いた。大丈夫、という気持ちで。
それでもう一度ケヴァさんの方を見たシルが、また口を開く。今度は思い切ったらしく、声も出てきた。
「イトス……ハイバ、クトー、イトス」
ケヴァさんはたどたどしいシルの言葉を笑って受け取ってくれた。それで大きく頷いて、もう一度「ハイバ・クトー」と言ってくれた。シルも嬉しそうに笑った。
その後、大きな
そうやって出来上がったたくさんの生地を暖炉の火を使ったオーブンで焼けば、
そこでケヴァさんはきっと、今日の
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