第115話 私は晴人君のことが好き ※コミックス2巻発売!

 雨音姉さんが留学に行く少し前の日記のようだ。つまり、俺が高校生になったぐらいのこと。


「晴人君は夏帆のことが好き。私は晴人君のお姉さんで、夏帆のことも応援してあげたくて……。でも、私は晴人君のことが好き。私はどうすればいいの?」


「晴人君は私を頼れるお姉さんとしか思っていないんだよね。それでも十分、嬉しいけど……それだけじゃ満足できない」


「私には晴人君しかいないんだって、気づいちゃった。私が一番苦しいときに一緒にいてくれて、私を家族として認めてくれた男の子だもの」


 俺への好意が赤裸々に綴られていて、俺は衝撃のあまり、日記を床に落としそうになった。

 別のページをぱらぱらとめくって目を通す。


「晴人君が二人きりで私の誕生日パーティーを開いてくれた! すっごく嬉しかった!」


「晴人君って、私の下着を平気な顔で洗っているけど、恥ずかしかったりしないのかな? 女性として見られていないみたいで、なんだか複雑……」


「私が晴人君の部屋へ行って、寝ている晴人君のベッドに潜り込んだら……晴人君、どんな反応するかな? ただのスキンシップとしか思わない? それとも……」


 俺はそこまで読んで、日記をぱたんと閉じた。俺が容量オーバーになったからだ。

 普段の雨音姉さんは、いたずら好きで、いつも俺のことをからかっている。そして、何事にも動じない強さのある人だと思っていた。


 でも、この日記の雨音姉さんは違う。迷い悩む少女のようで、そして、俺に強い好意を持つ女性だった。


「気づかなかった……」


 玲衣さんの言っていたとおりだったわけだ。雨音姉さんは俺のことを好き。理由はわからないけれど、それは間違いない事実だった。


 俺は、そんな雨音姉さんに、玲衣さんのことも夏帆のことでも、助けてほしいと言ってしまった。頼ってしまった。


 雨音姉さんのことを「ただの家族」だと思っていたから。

 それはどれほど残酷なことだろう。


 雨音姉さんも俺を大事な家族だと想ってくれていて、夏帆とのことを応援してくれて、玲衣さんを助けようとしてくれた。

 だから、雨音姉さんは、俺に好意を告げなかった。


 でも、俺は知ってしまった。

 俺はどんなふうに雨音姉さんに接すればいいのだろう?


 日記を持ちながら、俺が立ち尽くしていたら、やがて玄関の扉が開く音がした。

 雨音姉さんが戻ってきたのだ。


 俺は慌てて押入れを開き、日記を元に戻そうとする。


 ところが、こんなときに限って、建て付けが悪いせいで押入れの扉が開かない。築三十年のアパートのボロさを珍しく俺は心のなかで呪った。

 

 ホコリのことなんて考えず、開けっ放しにしておけばよかった。

 結局、日記を手に持ったままの状態で、俺は雨音姉さんを迎えることになった。


 振り返ると、雨音姉さんが部屋の入り口に立っていた。慌てて後ろ手を組んで日記を隠す。


 雨音姉さんはにやにやと笑っていて、もういつもどおりの雰囲気だった。雨音姉さんは大きな胸を強調するように前かがみになる。服の隙間から大きな胸の谷間が見えて、雨音姉さんを女性だと強烈に意識させられた。


「晴人君、私がいないあいだに何してたの?」




<あとがき>

クールな女神様、コミックス2巻が8/9から発売! 今回もちょっぴりセクシーで可愛い玲衣さん&夏帆たちとの修羅場が漫画で読める!


雨音姉さんが出てくる部分まで連載継続できるようにぜひご購入くださいね! ぜひ!


表紙&夏帆たちのバニーガールSSは↓

https://kakuyomu.jp/users/karuihiroshi/news/16818093082620213477



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