綺麗な花飾り
雨世界
1 あなたは誰?
綺麗な花飾り
プロローグ
あなたのことを愛しています。
本編
あなたは誰?
「これ、君にあげるよ」
夏祭りの日の夜に、あなたはそう言って私に一つの綺麗な花飾りをプレゼントしてくれた。
「どうもありがとう」
そういって私はそのきらきらと輝いて見える綺麗な花飾りをあなたの手から受け取った。
どーん、と言う音がして夏の夜空に色とりどりの花火が上がった。
本当はあなたの手で私の髪にその花飾りを付けて欲しかったのだけど、あなたがそんなことをしてくれないことは、世界中で、私が一番よく知っていたので、私が自分の手でその花飾りを自分の髪にそっと付けた。
「似合っているよ。……とても綺麗だ」と(珍しくそんなことを)あなたはいった。
「うん。ありがとう」と私はまた、あなたに花飾りをもらったお礼をいった。
あなたは夜空に咲いた美しい色をした花火を見た。
私は、そんな美しい色に染まるあなたの横顔を、……ただ、その場所からじっと見ていた。
私にできるのは、本当にただそれだけだった。
あなたはなにも言わない。
……だから私も、あなたになにも言わなかった。
「綺麗だよ。よく似合っている」
ウェディングドレス姿の私を見て、あなたは私にそういった。
「どうもありがとう。すごく嬉しい」とにっこりと笑って、私はあなたにそういった。
私はすごく幸せだった。
あなたと結婚できて。
でも、……私は今も考えてしまうことがあった。
あの人と結婚していたらどうなっていたんだろうって。
きっと今頃私は、白い着物の花嫁衣装を着ていて、袴姿のあの人の横にいて、きっと笑いながら泣いてしまっていたんだろうなって。
そんなことを思うんだ。
……あの日、あの人にもらった花飾りは、今も私の箪笥の引き出しの中に大切にしまってある。
「愛しているよ。君のことを世界で一番愛している」
私を見てあなたは言う。
「……私も、あなたのことを世界で一番愛しています」
にっこりと笑って、あなたの目を正面から見て、私はいった。
あなたは私の結婚式の準備をしている部屋から出て行った。
それから私は自分の髪をそっと触った。
綺麗な花飾り 終わり
綺麗な花飾り 雨世界 @amesekai
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