【エピローグ】凱旋、そして
「これでまたお城のベッドで寝られます。リカルド様もずーっと一緒に寝ましょうね」
「俺は日中仕事があるんだが……」
セシリアたち四人は、王城へと凱旋していた。
邪神を倒すという大役を果たしたセシリアは、これ以降は当分働かないつもりでいる。
王女としての使命を忘れた訳ではないが、休息は必要だ。
それに自分は誰のためにでも命を懸けられるほどできた人間ではない。
キサラギに対して『見損なった』などと言ってしまったが、彼女の言うことは真理なのかもしれない。
自らが大切だと思う人のためだからこそ戦えるのだ。
ちなみにルイスは人間とも魔物とも争わずに生きることを決めたらしい。
ただ、キサラギに対する憎しみは消えていないようで彼女と決着をつけるための旅に出たとか。もう魔界にはいないかもしれない。
「ねーねー。確かキサラギさんはエルネストさんのこと『エルやん』って呼んでたよね? あたしも呼んでいいかな?」
「それは勘弁してほしいかな。なんか響きが好きじゃない」
「えー。エルネストって長いのに」
それぞれ会話に興じながら玉座の間まで通され、王に謁見することとなる。
「皆の者、大儀であった。そなたらのおかげでこの国も世界も救われた」
王はセシリアたちに労いの言葉をかけた。
「エルネスト殿、そなたに救われるのは二度目だな。それに冒険者・アルマ、そなたもセシリアに力を貸してくれたことに感謝する」
「いやー、それほどでも。それで、邪神を倒したから褒賞金がもらえるんですよね!?」
「アルマ。がっつきすぎだよ」
子供のようにはしゃぐアルマと、それを注意するエルネスト。
「聖騎士・リカルドも、よくぞこの少人数で邪神を打ち倒してくれた。次期騎士団長はそなたが良いかもしれぬな」
「もったいなきお言葉」
騎士団全軍を動かさずに済んだことは、セシリアが務めを果たすためにもなったが、多くの騎士たちが普段通りの任に当たっていたことで救われた者もいる。
残るセシリアは、父からの褒美への期待に胸を膨らませていた。
「お父様! わたしちゃんとやり遂げましたよ! ご褒美は安眠十年分でお願いします!」
珍妙な褒美をねだるセシリアだが、王の答えは予想に反していた。
「セシリア。そなたについては、正式に勘当することにした。町に出て一般人として暮らすといい」
「えええ!?」
「そなたには王女として生きることより、冒険者として生きることの方が向いているようだ。もう王女としての務めなど気にせず自由に冒険していて構わんぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください! 確かに王女扱いは苦手ですが、一人娘のわたしがいなくなったら王位継承はどうするんですか!?」
「そなたは女王になる自信があるのか?」
「いや……、ないですけど……」
王女でも嫌だったというのに、女王として国を治めるなど冗談ではない。
とはいえ、ようやく城のベッドに戻れると思ったのに、あんまりな仕打ちだ。
「さあ、出ていけ。二度と城には戻ってこなくて良いぞ」
王から突き放され、セシリアはかつての口癖を再発させる。
「そんな~。わたしは働きたくないんです!」
イルシオン 平井昂太 @hirai57
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