めたふぁー

@tarosu99

門川正太郎

門川正太郎はめんどくさがりな大学生だ。

服を着るのも脱ぐのもめんどくさい。

飯を食うのもクソをするのもめんどくさい。

兎に角何でもめんどくさがるのだが、特にめんどくさいのは何かを選択する時だ。

何を着るか、何を食うか、何時に寝るか、何時に起きるか、何、何、何、この世は選択で埋め尽くされている。面倒だ。。

大学に行ったのも親が選択したのだ。

その選択に従って超面倒くさい受験を受けて、滑り止め8番目の地方の大学に入学して3回生、

就活と言う超面倒くさいイベントの真っ最中である。

正太郎は思うのである、「なぜ他人は常にある選択肢をなんらめんどくさがることなく選べるのだろうか」と

昔はそうではなかった。

どちらかと言えば積極的な性格で、友達も多く、勉強もスポーツも万能、とまではいかなかったが、今のように無気力ではなかった。

TVに移しだされる戦争、差別、いじめ、格差。まったく救いのない現実。

社会で起こる不運の連続。

音楽や映画、ドラマやミュージカルのようなフィクションや作り物のの中にしかユートピアは存在しないのかと、重くのしかかる現実。

就職して、仕事をして、いつか結婚をして、子供が生まれて、30年ローンで家を買い、老いて、そして死んでいくだけの退屈な現実の人生。現実。現実。現実。

その退屈な現実の人生を、すこしばかり楽しい思いをするための選択になんの意味があるのだ。

着ては見たスーツのひじにこびりついた米粒を払いながら、セミナー会場の端にある仮設の食堂で、企業人事に媚びを売る学生を眺めながら物思いに耽る。

多くの学生がそのつまらない人生の大半を費やすであろう会社という組織に、

大切にもされないその他大勢になり下がりに、自ら自分を下げる姿に軽い吐き気を催す。

門川は本質を見失っていた。

ふと、まったく人気のないブースが目につく、眺めていると学生が素通りする、まるで見えていないかのように。

全く就職氷河期というのに最近の学生は贅沢だな、などとと自分の事を棚どころか120ラフターで上空にぶち上げたあと、少しだけ興味が沸いた。

いつもなら面倒くさがりの正太郎ではあるが、不思議とその企業になにかしらぬ魅力を感じ、説明を受けて見ることにしたのだ。

受付をし、中に通される。

ブース内は白い壁に囲われており外とは隔絶されている。

絶好だ。あ、いや。


正太郎は白い椅子に腰かけ何もない白い壁を眺めては、何故かあふれてくる好奇心を抑えきれずにいた。

いったいどんな仕事なのだ?どんな人材をもとめているのだ?なぜこんなになにもない空間なのだ?なんでこんなに待たせるのだ?

まだか、まだか。

と前触れもなく一人の女性が颯爽と入ってきた。もうこの際この女性がどんなとか描写はどうでもいい。早く進めよう。

女性が話しかける。「ようこそ門川正太郎様、突然ですが、あなたに主人公になって頂きます。」

正太郎の顔が怪訝な表情に変わる。「どういうことですか?」と続けて質問をした。

「門川様は、世界が5分前に誕生した説。世界五分前仮設。というのをご存知ですか?」

「門川様は物語の主人公として5分前に『tarosu99』という恥ずかしい名前の作者によって誕生しました。」

「門川様は角川書店のWEB小説投稿サイトが企画する、とあるコンテストに向けて主人公としての為に生み出されたのです。」

「門川様はその為にこれから様々な設定が施されます。」

「何か質問はありますか?」

正太郎の顔はもはや青白く狼狽した様子である。「ちょ ちょっとまてよ。(キムタク風)俺が作られた?5分前に?ちょっとまてよ(キムタク風2回目)

僕にも記憶とかなんかいろいろあるよ?そんなこと急に言われましても全然信じられないのだけれども!」


「門川様は5分前に誕生したことは明白です。正確には5分32秒前に門川正太郎とウィンドウズのメモに打ち込まれました。」

「そこが誕生の起点となります。」


「ウィンドウズのメモに!?なんて安上がりなんだ!」


「信じられないでしょうが、まだ設定も決まっておりません。容姿もありませんし、概念しか存在致しません。性格も1人称も決まっておりません。」

「門川様が面倒くさがりなのも作者が面倒くさがりなのを反映させて適当に打ち込んだものでしょう。」

「証拠に、門川様が先ほどされた質問の際、1人称もしゃべり方も統一されておりませんでした。ちなみに(キムタク風)などと不愉快な注釈を

恥ずかしい作者によって付け加えられてもおります。」


「それは恥ずかしい(恥)あ!なんか、すっごいださい感じがした!今!これか」

「なるほどどうやら本当のようだな」(すっごい物分かりよくて助かるー)


「門川様が物分かりが良くて助かります。じつは門川様誕生も含めてとあるコンテストの計画の一部なのです」

「今回のコンテスト 5分で読める物語を各テーマに沿って応募をしています。」

「そのコンテストの最初の主人公が門川様なのです。」

「文字数の制限があるので早速参ります。」

「私の合図と共に一つだけ。門川様が欲しい能力を心に念じて下さい。その能力以外のステータスは作者であるtarosu99が適当にデッチあげます。」


「適当にデッチあげるなよ。まあ分かった。物分かりがいいからな僕は」

「なんでもいいんだな?望む能力はどんなものでも?」


「はい、作者は何でも付与するそうです。」

「それではよろしいですか?」


「ああ、それではお頼み申す」


「参ります。」シュバババババっ

「はい!思って思ってーー!思って思ってーっ!特殊な能力託しますっ!はいっ!思って思って―っ!」


「うわあ、物凄いな。物凄い、来るものがあるなあ。んんー集中!!」


「はい!思って思ってーー!思って思ってーっ!特殊な能力託しますっ!はいっ!思って思って―っ!」

「はい!思って思ってーー!思って思ってー・・・」

ピカーン どっっごーーーん

しゅんしゅんしゅん(煙ふわー)





俺の名前は門川正太郎。頭脳明晰。スポーツ万能。女の子にも男どもにも人気のある大学のスーパースターだ。


そして俺は社会を認知している。いや、社会どころか俺はこの宇宙の全てを知っている。

この宇宙を作ったのはtarosu99と言う恥ずかしい名前の「作者」と呼ばれる存在だ。

奴の杜撰な管理のもとに作られたこの宇宙は、本来主人公が持ってはいけない能力を俺に与えた。

「認知力」

そう、あの時、俺は認知力を手に入れた。

おかげで俺は自我が生まれる前の記憶を引き継いだまま主人公としてこの宇宙に生まれることができた。

tarou99がどうなったか?

それは俺には分からない。だが、不思議と、俺が俺と言う自我をもって生まれて3分くらい経つが奴の存在を感じない。

この世の摂理であろう。一つの宇宙に作者は2人も存在出来ないのかもしれない。

そう、俺は俺の作者になる。

俺は知っている。この世は社会や通貨、宗教や法律、国や人種という物で構成されている。そしてそれらは時に弊害になり、

ストーリーを全うしようとすると多くの困難があるだろう。戦争、差別、いじめ、格差、多くの問題をこの宇宙は抱えている。

しかし

俺は知っている。その全てはフィクションの上にあると。全て作られたストーリー上にあると。

俺は知っている。現実が本質ではないと。

大切なのは

その作られたストーリーの中で選択すること。

配られたカードで最良を選択すること。


俺は知っている。





最後に勝つのは俺であるということ。

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