sweet home*……

梔子

sweet home*……

杏佳(きょうか) (24):ふんわりとした雰囲気をまとうかわいらしい女性。小悪魔的な大胆さも備えている。

梓(あずさ) (26):落ち着いた雰囲気をまとう綺麗なお姉さん。杏佳のことが好きでたまらない。


梓「きょーちゃん、おはよう。」

杏佳「んー……もうちょっと。」

梓「もうちょっとって……せっかく2人とも休みなんだから、お出かけしようって言ってたじゃん。」

杏佳「いいでしょ、5分多く寝たくらいで何も変わらないよ。」

梓「だーめ。きょーちゃん準備時間かかるでしょ。今起きなかったら絶対家出らんなくなるって。」

杏佳「むぅ……あずも一緒に入ろ?あったかいよ?」

梓「入ろって……もう髪のセットしちゃったし、寝たらぐちゃぐちゃになっちゃうからだめです。」

杏佳「えぇ……一緒にごろーんしないの?」

梓「し、……しない。」

杏佳「んー、いじわる。」

梓「そ、そうだよ。ほら、分かったら起きて。」

杏佳「はーい。」

梓「ヘアアイロンセットしてあるから、ちゃっちゃとやっちゃって。」

杏佳「今日はどこ行くのー?」

梓「とりあえず新しく出来たモールかな。」

杏佳「いいねぇ。面白そう。」

梓「ね。ここら辺に無かったお店とか結構入ってるみたいで気になってたんだ。」

杏佳「へぇ、混んでないといいけどね。」

梓「まあ、今日平日だし大丈夫じゃないかな。」

杏佳「確かに。最近曜日感覚とかないわぁ……」

梓「忙しくしてたもんね。」

杏佳「デートするタイミングもなかったもんね。」


梓「どっち着てくの?」

杏佳「そっち。」

梓「なんか双子コーデっぽくない?」

杏佳「えへへ。やだ??」

梓「やじゃない。」

杏佳「久しぶりのデートだしいいよね。」

梓「うん……もうっ、早く服着なよ。」

杏佳「はーい。」


杏佳「しゅっぱつしんこー!」

梓「社用車以外の車運転するのも久々だわ……」

杏佳「ちょっとちょっとおねーさん大丈夫?」

梓「大丈夫ですー。毎日外回りしてるおねーさんなめんなよー。」

杏佳「へへへ、さっすがぁ!」

梓「えへへ。どんなお店入ってるか調べといてね。」

杏佳「おっけー!」


杏佳「んー、一日で回りきれるかなぁ。」

梓「そんな行きたいとこあるの?」

杏佳「分かんないけど、行ったことないお店も入ってるし、面白そうだなって思って。」

梓「今日はたっぷり時間あるし、ゆっくり回ろ。」

杏佳「うん!」


間2秒


梓「停めるから降りる用意しといてね。」

杏佳「はーい。」


(SE:雑踏の音)


杏佳「平日なのにまあまあ人居るね。」

梓「新しくできたからこんなもんなのかもね。どっから回ろっか。」

杏佳「んーとね……あっ。」

梓「お腹すいてる?」

杏佳「……うん。」

梓「朝食べてないもんね。なんか軽く食べよっか。」

杏佳「そうだね。」

梓「何がいい?」

杏佳「あずが食べたいものでいいよ。」

梓「いっつもそう言うんだからぁ……じゃあ選んじゃうよ。」

杏佳「てへ……」

梓「空腹だし、いつも食べてるものの方がいいよね。あっ、ここのサンドイッチでいっか。」

杏佳「うん!」


(注文を済ませ席に座る。)


杏佳・梓(自然に被る感じで)

「いただきます。」


杏佳、一生懸命食べている。


梓「……かわいいね。」

杏佳「むぐ?」

梓「んーん、今日もかわいいねって言っただけ。」

杏佳「はひはほう(ありがとう)。」

梓「本当美味しそうに食べるんだから。」

杏佳「あずと一緒だから美味しいんだよ。」

梓「ふふ、本当、かわいいね。」

杏佳「そんな言わないでよぉ。」

梓「いつものことでしょ?」

杏佳「でも最近言ってもらってなかったもん……」

梓「ごめんね、寂しかった?」

杏佳「うん……」

梓「今日はいっぱい言ってあげるよ。」

杏佳「……もう充分です。」

梓「(顔を近づけて)かわいい。」

杏佳「もーう、いじわるっ!」

梓「ほらほら、レタスこぼれるよ。」

杏佳「あわっ、もぐもぐ……」


間2秒


杏佳「ふぅ、カロリー補給完了!」

梓「んね。もう、お昼すぎか。」

杏佳「あのね。」

梓「ん?」

杏佳「新しいパジャマ、お揃いにしない?」

梓「いいよ?もこもこのにする?」

杏佳「うん。ぎゅってしたらあったかいやつがいいなぁ。」

梓「ふふっ、じゃあ見てこよっか。」

杏佳「うん!」


梓「うわ、かわいい……」

杏佳「ね、どれにしようかなぁ。」

梓「杏佳はどれでも良さそうだけど、わたしはちょっとなぁ……」

杏佳「えー、家で着るんだしいいじゃん!」

梓「まあ、そうだけど……」

杏佳「ほら、色違いもあるよ?私がピンクで、あずはパープルにするとか。」

梓「それなら、いっか。」

杏佳「絶対かわいいよ。」

梓「本当?」

杏佳「あずは何着ても似合っちゃうからもふもふもかわいいよ。」

梓「……照れる。」

杏佳「今のあずあったかそう。」

梓「外でそういうこと言わないの。」

杏佳「えー、あずだってそういうこと言うじゃん。」

梓「たまにでしょ。きょーちゃんとは違いますー。」

杏佳「素直なだけなのにぃ。」

梓「ほら決まったんだから、お会計するよ。」

杏佳「はーい。夜から着るの楽しみだね。」

梓「そうだね。」


間2秒


梓「加湿器も、入れるアロマオイルも買ったし、今日欲しいものはもういいかな。」

杏佳「そだね。この後どうする?」

梓「ちょっと走らせて、丘の上の公園行っちゃう?」

杏佳「え、もうすぐ暮れるけど、大丈夫?」

梓「もう今日からイルミネーションやってるんだってさ。だからどうかなって。」

杏佳「それなら行きたいかも。でも、疲れてない?大丈夫?」

梓「そんな疲れてないよ。大丈夫。」

杏佳「なら、いいけど。」

梓「それじゃ行こっか。」

杏佳「うん、楽しみ。」


間2秒


梓「初デートもさ、あの公園だったよね。」

杏佳「うん。すっごく寒かった。」

梓「きょーちゃんがポケットに手入れてきた時、ちょっとびっくりしたなぁ。」

杏佳「え?何で?」

梓「あの頃はそんな大胆だって思ってなかったの。」

杏佳「そんな大胆かなぁ?」

梓「そういうとこだぞ?」

杏佳「こういうとこかぁ。」

梓「そうそう。」

杏佳「でもさ、あの時に告白されるって思ってなかったんだよね。私。なのに何でそんなことしてたんだろ。」

梓「同じ気持ちでいてくれてたからじゃないの?」

杏佳「そうかも。ずっとこの人の隣に居たいってもう思ってたからなんだろうね。」

梓「ははっ……恥ずかしくなってきちゃった。」

杏佳「ちゃんと前見て運転してよ?」

梓「分かってますよぉ。」


間2秒


杏佳「寒っ。」

梓「夜は冷えるね……」

杏佳「はい、手。」

梓「うん。」

杏佳「あの日の匂いがする。」

梓「ふふっ、そうかも。冷たい空気の匂い。」

杏佳「でも、ここんとこはあったかいね。」

梓「うん……ほくほくする。」


杏佳「あっ、すごい!」

梓「綺麗!」

杏佳「このトンネル、前はなかったよね?」

梓「パワーアップしてるじゃん。」

杏佳「うわぁ……」

梓「きょーちゃんの目キラキラしてる。」

杏佳「あずもだよ。」

梓「そうね……」

杏佳「なんか寒くなくなってきた気がする。」

梓「確かに。」

杏佳「テンション上がってるからかな?」

梓「そうかもね。」

杏佳「はぁ……ずっと見てたいなぁ。」

梓「ねぇ、きょーちゃん。」

杏佳「何?」

梓「……パートナーになってくれない?」

杏佳「……………えっ?」

梓「ずっと一緒に暮らそう。」

杏佳「……えっ、えっ?」

梓「駄目……かな?」

杏佳「えっ、ちがっ……えぇ……(泣き出す。)」

梓「あっ、えっ、泣かないでよ。」

杏佳「だってぇ……今日そんなこと言ってもらえるなんて思ってなくて……」

梓「ずっと言いたかったんだ。でも、なかなかタイミング合わなくて…… 」

杏佳「うぅ……ここでそんなの反則だよぉ……」

梓「ごめんて。私さ、タイミングが合わないとか言ったけど、それだけじゃなくて、ちょっと勇気が出なかったんだよね。でも、今日デートするって決めた時からずっと今日言おうって思って過ごしてて、今朝きょーちゃんを起こした時に、決心ついたの。」

杏佳「一緒にごろーんしよって言ったから?」

梓「ちーがーう。でも、そうなのかも。」

杏佳「え?」

梓「これから何度も繰り返す冬を、きょーちゃんと一緒なら乗り越えていけるって思ったから。」

杏佳「……あず」

梓「だから一生、私の隣に居てくれませんか?」

杏佳「……こちらこそ、よろしくお願いします。」


(笑いあう2人)


杏佳「へくしっ……」

梓「大丈夫?冷えちゃうからそろそろ帰ろっか。」

杏佳「うん、今日は連れて来てくれてありがと。」

梓「どういたしまして。こちらこそ、着いてきてくれてありがと。」

杏佳「帰ったら新しいパジャマでぬくぬくしよーね。」

梓「うん。でも早く寝ようね。」

杏佳「えー?せっかくあったかくて気持ちいいのに?」

梓「……っ、あったかくて気持ちいから早く寝るんだよ。明日も仕事でしょ?」

杏佳「むぅ、つめたいなぁ。」

梓「あんまりそういうこと言ってると、食べちゃうよ?」

杏佳「えへへ、もう私はあずだけのものだもんね。」

梓「もー……大好き。」

杏佳「私も、大好き。」


梓「じゃ、帰ろっか。」

杏佳「うん、私たちのお家にしゅっぱつしんこー!」

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