第13話.望月家へ
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あああ…。寂しい。
こんなところで一人でいるのは寂しい…。苦しい…悲しい…。
早くあの人に会いに行きたい…。
あの頃のに戻れるのなら…なんだってしよう。
あの人に会えるのなら何者にでもなろう…。
あああ…。寂しい。
早く…早くあの人に会いたい…。
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調べて分かったことがあったと大黒天様から手紙が届いた。
「うむ…」
手紙を読むなり難しい顔をして黙り込んでしまった
いったい…何が書いてあったんだろう?
僕はソワソワしながら彼女に入れたお茶を運んだ。
「よし!」
パチンと扇を閉じて、
「どうしたんですか?」
「土方君」
「はい」
「君は今日から我が家に来てくれ」
「えっ?
「ああ」
「それは…どいう言う」
「大黒天様から貰った情報だと、黒煙の一族は君を狙っているらしい」
「僕を?」
持っていたお盆を思わず落としそうになってしまった。
煙の一族が…僕を狙っている?どうして?何の得があるんだ?
「だからしばらくの間、家に来て欲しいんだ」
「でも…」
「そうと決まれば早速、引っ越しの準備をしよう!
「はい!主様」
「土方君の家から荷物を運ぶから用意してくれ」
「りょうかいした!」
「え…ちょっと待って下さい!せめて理由を教えてください」
僕は慌てて彼女を止めた。
でないと話がどんどん先に進んでしまうからだ。
「煙の一族が君を狙っている。ここにいる時は問題ないが、君が一人になったときが一番危ない」
「だから…
「ああ。我が家は
「なるほど…」
「さぁ!そうと決まれば引っ越しだ!」
扇をヒラヒラ回しながら
これは…逆らえない奴だな…。
まぁ僕の上司は彼女なのだから決定権は
従うしかないだろう。
それにしても…
不謹慎にも僕はワクワクしてしまった。
荷物を運び出す準備をしてから僕と
なんだか…不思議な感じがするな。
隣に座っている
「ここが…土方君の家か」
「はい」
「うむ…なんにもないな!さっぱりした部屋だ」
「ハハハ…元々あまり物欲とかないので…物が少ないんです」
「じゃあ、いる物だけまとめて運んでしまおう!」
「はい」
俺は生活に必要な衣類と日用品をまとめた。
普段からそんなに多くの物を使っていないからまとめるのはあっさり終わった。
まとめた荷物を
荷台に乗せた荷物は
「それにしても…夢庭って便利な術ですね」
「そうだろう?夢庭は相手の精神と繋ぐこともできるし別の空間とも繋ぐことが出来る」
「そうんですか…」
「ああ。私が幼い頃に考えて作った術だよ」
「凄いですね…」
「ふふふ。私は天才だからね」
そんな仕草も可愛らしくて俺は思わず笑ってしまった。
「
「うーん…どこにでもあって、何処にもない」
「また曖昧な感じですね」
「御婆様が隠してしまっているからね。私もこれがないと入れない」
そう言って
銀製でできた棒鍵だった。
漫画とかゲームに出てくるような宝箱を開ける時に使えそうな鍵だった。
「その鍵で開けるんですか?」
「まぁ…そんなところだよ」
夢庭の中をしばらく歩いていると、遠くの方で銀色の扉が浮かんできた。
扉には細かな文様が刻まれていて中央には鳥と花と草の文様があった。
さっき言っていた鍵を使うんだろうか…。
「さぁ…土方君。我が家へようこそ!」
ゆっくりと瞼を開けると…目の前には色とりどりの草花が咲き乱れる大きな庭に出てていた。
「うわ…凄いな…」
「望月家自慢の庭さ♪」
「それにしても大きな庭ですね…。家があんなに遠く…」
「ふふふ。普通に歩くとまる一日はかかるよ」
「そんなにですか!」
「ああ。だからここからは八咫烏たちに運んでもらう」
「え…」
また…あの恥ずかしい…ことをするのか…。
俺は一瞬、戸惑ってしまった。
「八咫烏!」
「はい。お呼びでしょうか
「私達と荷物を箱でくれ」
「御意」
あああ!!穴があったら入りたい…。
俺はまた八咫烏さんたちにお姫様抱っこされながら
飛びったってすぐ、目の前に大きなお城のような家が見えていた。
何だか…大河ドラマとかに出てきそうだな。凄い家だ…。
上を見上げるくらい高い建物だった。
それに横幅も恐ろしく長い。
八咫烏さんたちが玄関の前に降ろしてくれて俺は門をくぐった。
「お帰りなさいませ!
門をくぐり石だたみを抜けるとずらりと着物着た人達が並んで
おおお…。この人達は…お手伝いさんか何かかな…。
「ただいま。今日から土方君も一緒に住むことになった。皆仲良くしてくれ」
「畏まりました!」
「土方と申します…お世話になります」
「土方様!ようこそお出で下さいました」
大勢の人が一斉に頭を下げて挨拶をしてきた。
怖い…。
まるで王様に使える家臣のような振舞だった。
それだけ
「
しかめっ面の綺麗な女性が
真っ黒な黒髪をゆったり縛り、銀色の着物を着た綺麗な女性だった。
「すまんな
「はぁ…全く
「今度からは気を付けるよ。さぁ…土方君を案内してくれ」
「はぁ…かしこまりました」
「よろしくお願いいたします。急にお邪魔して申し訳ございません」
「土方様が謝られることはございません。悪いのは
「じゃあ土方君。またあとでね」
「はい」
そう言って
僕は少し心細い気持ちで
「土方様にはいくつか注意して頂きたいことがごじざいます」
「なんでしょうか」
「この家は大変広く複雑なつくりをしております。ですから移動される際は必ず誰か一人従者をお付けください」
「あの…お手洗いに行くときとかもですか?」
「もちろんでございます。でないと迷子になって帰ってこれません」
「そんなに…広いんですか…
「はい。わざと分かりにくくして侵入者を混乱させるようにしております」
「そうなんですか…」
確かにさっきから
もうどこをどう歩いているのか分からなくなってきた。
何度も右に曲がり左に曲がり…階段を上りしている。
本当に迷ったら一生元の場所には戻れない気がする…気を付けよう。
「こちらが、土方様がお過ごし頂く部屋でございます」
「うわぁ…。こんないい部屋に泊まっていいんですか?」
まるで高級旅館のような綺麗な和室の部屋だった。
それにとても広々していて開放的な空間になっていた。
「土方様は
「ありがとうございます…」
「では…こちらの部屋着に着替えてくださいませ」
ますます旅館みたいだ…。
そう思いながら僕は浴衣を受け取り着替えた。
「土方様にはこれからお風呂に入っていただき身を清めて頂きます」
「分かりました」
「土方様。私に着いて来てくださいませ」
郷に入っては郷に従え。
何でお風呂?とか思ったけど僕は黙って従う事にした。
その家にはその家なりのルールがある。
きっと望月家では家に帰ってきたときにはお風呂に入るのがルールなんだろう。
「
「はい。
「そんな…前から」
「私達、
「なるほど。素敵ですね」
「…」
びっくりした顔で
何か…変なことを言ってしまったのだろうか?
「土方様は…いい人ですね。とても」
「そうでしょうか?あんまり自覚ないんですけど」
「
「ありがとうございます」
なんだか褒められているような気がして嬉しかった。
やっぱり高級旅館だ…。
それにこの匂い…温泉か?
ほんのりだけど硫黄の匂いがした。
「では土方様。私はここでお待ちしておりますので、どうぞごゆるりと」
「ありがとうございます。綺麗にしてきますね」
ペコリと頭を下げて
僕は早速、浴衣を脱いで風呂場に向かった。
「わぁ…。すごい!広いな~。まるで森の中にいるみたいだ」
脱衣所をでてお風呂場に出ると、大きな樹が沢山並んでいる庭が見えた。
お風呂は露天風呂になっており檜でできた床に檜でできた浴槽…。
外を眺めながら入れるように作り込まれいた。
あああ…。気持ちいい…。
身体を洗って僕はゆっくりと湯船につかった。
お湯は乳白色で少しぬめりのある水質だった。
両手ですくって顔を洗うと肌がしっとりする気がする。
「はぁ…。ずっと浸かっていたい」
思えば温泉なんて何年ぶりだろう…。
めったに旅行しないから温泉なんて久しぶりだ…。
「そうだろう!我が家の温泉は気持ちいだろう」
「はい。とっても気持ちがいいですね」
「土方君に気に入って貰えてよかったよ」
「‥‥」
振り返ると裸の
僕は何が起きているのか一瞬理解が出来なかった。
そしてだんだん徐々にとんでもないことが起きていることに気が付く。
「えええええええええええ!!!!」
なんで
桜色ノスタルジー フォレスト @0625_forest
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