第12話望月三姉妹
「あれ…。皺が消えてる…?」
いつもの様に朝起きて鏡を覗き込んだ僕は思わず驚いて声に出してしまった。
あんなに気にしていた目じりの皺や口元のほうれい線それに手のひらの皺まで
綺麗になくなり、まるで20代の頃の肌艶になっていた。
「どういう事だ…?」
ここまではっきり変化がある…という事は原因は一つしか考えられない。
僕が
彼女と過ごすようになってから、些細な変化は感じていた。
だけど今日みたいな大きな変化は初めてだった。
「後で…
驚きはしたが悪い事じゃない。
むしろ僕にとってはいい傾向だった。
髪型も少し変えてみようか…。最近バタバタしていて散髪していなかったことに気が付いた。
顔立ちが変われば似合ってくる髪型も変わってくる…。
僕は浮足立ちながら
僕が店に到着してしばらくしてからお客様が来た。
「お邪魔しまーす♪」
「おねちゃーん!いるー?」
二人ともとても元気だった。
そして
二人は綺麗な銀色の髪の毛に、ガラスのような蒼い瞳。
そこは
ただ髪型はまったく違うから、見分けがついた。三人とも同一人物には見えない。
凄いな…。綺麗な人達が三人も揃うと物凄い迫力だ。
三人が佇んでいる場所だけ光っていて神々しい。
オーラとでもいうのだろうか…。
凡人な僕が側に行くと消えてしまいそうなくらいのオーラだった。
「なんだ二人とも…。いきなり訪ねてきて」
「新しいアシスタントの人が来たって聞いたから♪」
「ちょっとご挨拶しに来ました!!」
二人は何も言わずに尋ねてきたらしい。
僕は人数分の紅茶を入れるため台所に行った。
お茶請け…。何か出せるようなお菓子あったかな…。
僕は冷蔵庫を覗いた。
あ…。今日はアップルパイを作ろうと思って生地を寝かせておいたんだ。
オーブンで20分焼けば出来上がるからちょうどいいかもしれない。
僕はさっそくオーブンを予熱のセットをした。
その間にお湯を沸かして、ティーカップを取り出す。
今日の紅茶はダージリンにしよう…。
「紅茶のシャンパン」とも言われている。
水色は薄いながらも格別な香味をもっているため、世界三大紅茶のひとつと言われている。
紅茶でもポピュラーなものだ。
全員で5人だからちょっと多めに茶葉を入れて…。
こんなに大人数のお茶を用意するのは初めてだ。
部屋からは賑やかな声が響き渡っている。
ふふふ。三人とも仲がいんだな…。
「あの…よかったらお茶をどうぞ」
「わーい!ありがとうございます!」
「気を使っていただいてありがとうございます」
先にお礼を述べたのが元気な印象の女の子が
見た目は15歳くらいの女の子。前髪を真っ直ぐ整えて後ろで高くくくっている。
明るくて活発そうな女の子だった。
その次にお礼を述べたのが次女の
長い前髪をセンターで分けていて髪の毛は
見た目は
しゃべり方は
多分…二人とも僕より年上なんだろうな。
彼女たちは
望月家では和装が普通なんだろうか…?
そんな事を考えながら、僕は出来上がった紅茶をテーブルに並べた。
「今アップルパイを焼いているのでよかったらそれも食べていってください」
「アップルパイ!!!」
三人同時に声をそろえて叫んだ。
なんだ…?どうしたんだ?
「すごーい!土方さんってアップルパイも作れるんですか?」
「え…あ…はい」
「お姉様が気に入るはずだわ♪」
「そう…なんですか…?」
「
「あら?どうしてですの?家ではずっと土方さんのお話しばかりしているのに♡」
「え…?僕の…?」
それを聞いてとても驚いた。
それだけで、天にも昇るような気持だった。
「そーだよ!今日は何食べた~とか。何のお菓子が美味しかった~とか」
「
「もう!恥ずかしいからやめてくれ!」
ちょっと…以外かも。
普段は堂々としていて落ち着いている。
妹さんと一緒にいるとこんな感じになるのか…。
ふふふ。僕はその様子をみて思わず笑ってしまった。
「ほら~!土方君に笑われたじゃないか」
「えっ!!すみません…
「きゃー!お姉ちゃんが可愛いだって♪」
「あらあら♡ラブラブね~」
「もう!からかうなって言っているだろう」
つい本音をこぼしてしまった。
僕は気になって彼女の方を見た。
すると目が合ってすぐにプイっと横を向いてしまった。
はぁ…。嫌われてしまった…。
そりゃそうだよな…。こんなおっさんに可愛いとか気持ち悪いよな…。
僕は打ちひしがれて台所へ行った。
そろそろ余熱でオーブンが温まってくる頃だった。
「あーあ…。お姉ちゃんがそっぽ向くから」
「土方さん…可哀想に…」
「お前たちがからかうからだろ!」
「ほーんと!お姉ちゃんって素直じゃないよね~」
「そうそう。土方さんの事大好きなくせに…」
「なッ!!わっ…私は別に…」
「そうなんだ~!じゃあ私が貰っちゃお♡」
「こら!
「冗談じゃないも~ん。土方さ~ん!」
アップルパイを用意していたら
お茶のお代わりかな?
「はい。何でしょう?」
「土方さんって彼女とかいるんですか?」
「いや…いませんけど」
「そう~なんだ♡ふふふ」
「あの…?それが何か?」
「ううん。何でもないの!気にしないで」
なんなんだ?
僕の横に立って面白そうにしている。
そんなにアップルパイを作るところが珍しいのだろうか?
でも…。妹が出来たみたいで可愛いな…。
あ…。僕の年齢なら娘もありなのか?
「
「うん!だーいすき♡」
「よかったです。カスタードも入れてるので甘めだと思うんですが…」
「私カスタードも大好き!楽しみだな~♪」
小鳥のがさえずるように話す
本当の美少女ってこんな感じなんだろうな。天真爛漫で可愛い。
今だったらアイドルとかですぐに人気になりそうだな…。
そんな事考えていてたら、
「
「へへへ。土方さんってとっても居心地がいいのね」
「…?はぁ」
「こら!
僕と
ちょっと…怒ってる?
さっきの事まだ怒ってるんだろうか…。
「お姉ちゃんのけち!」
「土方君は仕事中なんだぞ。邪魔するなら帰りなさい」
「嫌よ!土方さんのアップルパイ食べるんだから」
「だったらあっちで大人しくしてなさい」
「ちぇ…仕方ないなー」
ほっぺを風船のように膨らませながらブツブツ文句言いながら
姉妹のやり取りって皆あんな感じなのだろうか…。
勢いが凄いな…。
そんな事を思っていたら
「
「土方君…。妹が邪魔してすまない」
「いいえ。妹が出来たみたいで嬉しいですよ?」
「そうか…。でも年齢は
「ですよね…ハハハ」
それっきり、急に
どうしたんだろう?
「
「…好きなのか?」
「えっ?」
「
「えっ!!いや…別に好きなわけでは…あっ!でもとっても女の子らしくて可愛いとは思います」
「どうせ…私は女らしくない」
「
僕は慌ててフォローした。
かと言って好きだというのも憚られる。
どうしよう!こんな時どうしたらいいんだ?
僕はパニックになってしまった。
「ふっ…」
僕が慌てた様子でジタバタしていたら
「土方君…ふふふ。すまない…なんだか小動物みたいで可愛くて…」
「えっ?そんなに…変わってましたか?」
「いいや。土方君はとっても愛らしいよ」
「そんな事ありません!
何をムキになってるんだ…僕は。
でも
何だかもどかしい気持ちでいっぱいだった。
「…ありがとう…そんなに言われると…照れるな」
「あっ…すみません…ついムキになってしまって」
「ふふふ。でも…嬉しかったよ!ありがとう」
「…っっ!!!」
まただ…。また…。
可愛い!!!
あまりの破壊力に僕は思わず視線をそらしてしまった。
顎にパンチを食らったような衝撃。
頭を思いっきりはたかれたみたいな勢い。
心臓がもたない…。
「土方君…大丈夫か?」
「あ…はい。大丈夫です。そろそろアップルパイを焼きますね」
「ああ!楽しみにしている」
それだけ言うとニコニコしながら台所から出て行った。
はぁぁぁぁ。
僕は大きく息を吐きながらその場にしゃがみ込んでしまった。
こんなにドキドキするのは久しぶりだ。
中学生かよ…。全く…。
駄目だ…。ますます
‥‥。
深入りするなって…そう言う意味か?
ふと
好きにならない方がおかしい。
今までの人達はどうだったんだろう?
僕と同じ気持ちになったんじゃないか?
だから、釘をさすようにあの言葉を言われたんじゃないか?
そう考えると納得できた。
でも…僕が
それ以上の事は望まない。
両想いになりたいだとか、恋人になりたいだとか…そんな事は期待していない。
僕もいい歳だし…。このまま独身でもいいと思っているくらいだ。
今さら恋愛とか…。無理があるだろうと思っている。
ただ…
彼女が笑顔で毎日過ごしてくれるならそれだけで僕は幸せだ…。
僕は手にしていたお皿をぐっと力を込めて握り締めた。
少し時間が経って落ち着きを取り戻して僕は立ち上がった。
紅茶のお代わりを作り
オーブンからはほんのりアップルパイの生地が焼ける香ばしい香りがした。
僕はそれを人数分取り分けてみんなに配った。
三人の美しい女性たちは口々にアップルパイを褒めてくれた。
彼女達の笑顔を見ただけで僕のモヤモヤした気持ちはどこかへ消えていってしまった。
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