11 final & prologue.

「おい。来たぜ」


「おっ。お弁当は?」


「ばっちりだ。サンドイッチと、あとおにぎりもある」


「場所はちゃんと、取ってあるから。いつものところ」


 女二人。


「あ、そういえば。このまえ、誕生日だったわよね。はいこれ。プレゼント。耳飾り」


 いつものように。


「え、まじか。めちゃくちゃ嬉しい。ありがとう」


 サンドイッチを食べて、待っている。


 そして。


「おっ。場所取ってるな。さすがだ」


「いい天気だね」


 遅れて、ふたり。


「退院。おめでとう。もう無理するんじゃないぞ」


 キス。


「ありがとう。今日は?」


「右足。動かない」


「じゃあ、僕が右側に座るよ。綺麗な耳飾りだね?」


 もういちど、軽くキスをして。座るふたり。


「研究。いいのか?」


「終わらせてきたわ。磁場関連、あとは官邸のご機嫌次第。あなたは?」


「平和なもんさ。こいつと街をぐるっと回ってきたけど、誰も死ぬ未来は見えない」


「よかった」


 やさしい風。


 公園を、吹き抜けていく。


「さあ、こいつの退院祝いだ。今日は食うぞお」


「君、ずっと栄養機能性食品ばっかりだったもんな。はいこれ。僕がナース室借りて作ったお弁当だよ。どうぞ召し上がれ」


「あわてんなよ。めしならたくさん用意してある。あたしのサンドイッチもあるぜ」


「ちょっと待ってね。いま準備するから」


 駅前。


 公園。


 新幹線とか電車とかを待つ人は、駅前から繋がっている施設に行ったり、街中を散策したりする。駅前だけど、この公園が使われることは少ない。せいぜい、お花見で賑わう程度。


「よし」


「乾杯しよう」


 今日もまた。


 ここで、出逢う。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

やさしい風、駅前の公園 (15分間でカクヨムバトル) 春嵐 @aiot3110

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ