ベリーベリー

榎坂 祥

ベリーベリー

 四百字詰原稿用紙を埋めることが苦手だ。茶色に近い橙色の罫線が引かれたそれを見ると、埋めなければいけないプレッシャーを感じる。文字を埋めることばかりが先行して、気づけば何を書けばいいかわからなくなってくる。そんなんだから、遠回しな言い方ばかりしてしまい読み返すと結局何を言いたいのかわからない。書き上げたものを直そうと思うも、途中の文を直すとなると以降の文をすべて消さなきゃいけない。この文を直すのに、そこまでの労力をかけなきゃいけないだろうか。そんなことを思ったが最後、ある程度体裁が保てているからと納得して課題を出してしまう。けれど、返ってくる結果は大体が平均点くらいだ――時間をかけた割には評価が伴わない。

 そんなことを悶々と、埋まらない原稿用紙を前に考えている。題名の『自分らしさについて』と私の名前である星見深尋ほしみみひろだけが、とりあえず書かれていた。小ぢんまりとした題字と名前が、残り十八行を長い道のりに思わせる。三百八十三もの余白の埋めてくれという無言の圧力が重い。私の自信のなさを表したような文字がますます縮んでいきそうだ。

 学習机の脇にあるデジタル時計はもうすぐ頂上を指そうとしていた。金曜日が目前ということを考えてしまい、胸の奥で焦りが渦巻く。目の前の小論文には提出期限が決まっていた。今週末までの消印有効――提出前に現代文の教師に見てもらわなければいけないので、実質金曜日の放課後までに書きあげなきゃいけない。

 あまりにも小論文が書けず、ここ最近は夢にまで見てしまう。夢の中の私はエッセイストだったり脚本家だったりするけど、いつも小論文は書けていない。現実とは違う役になりがちな夢の中だけど、書くのが得意な職業でも小論文を書けていなくて起きていつもため息をつく。その私でもダメなのか、と。

 とにかく、これを逃せば私のAO入試はおしまいだ。この事前提出の小論文が入試の受験条件なので、なにがなんでも書き上げなきゃいけなかった。

 簡単な事前課題と面接だけの大学を選んだと言っていた友人のことが脳裏をよぎる。私ももっと楽なところにしておけばよかった、と今更ながらに後悔する。小論文、面接、筆記試験とてんこもりだ。どうやらかなり倍率の高い場所のようで、進路担当の教師曰く受験生を振り落とすためじゃないかとのことだった。

 私が行こうとしている大学の心理学部には結構有名な先生がいるようだった。地方からのアクセスしやすい駅から十分弱が最寄り駅で、大学までは徒歩圏内と好立地、八年前に建て替えられた綺麗なキャンパス。それなりに志望者数が多い大学で一際目立つ『テレビに好評出演中の教授が在籍』の文字、そこが心理学部だった。人の心がわかればと思うのは人類皆思うことで、しかも綺麗で通いやすい大学でテレビにも出ている教授がいる学部となればとりあえず応募してみようという気持ちになるのはわかる。私も半分くらいはその気持ちだ。

 けど、そこじゃなきゃいけない理由が私にはあった。どこかじゃなく、ここじゃないといけない理由が。

 と、思った所で脳裏で担任の「熱意だけじゃ入試は合格できない」という言葉が掠める。原稿用紙は相変わらず埋まっていない。空白の圧だけをただただ感じ、目を逸らす。

 小論文を書けない理由はわかっていた。自分らしさがなにかわからないのだ。個性とか、特徴とかがざっくりとした意味だと思うんだけど、私にはいまいちピンとこない。ぐるぐると考えすぎて、もう脳内で自分らしさという言葉がゲシュタルト崩壊している。頭の中で『自分らしさ』という文字は認識できるけど、その中身に何が詰まっているのかわからない。

 いっそのこと少し文字を変えようとか、文として表せばイメージしやすいんじゃないかとか考えるけど、結局意味なんてなくてより難解になってきていた。自分らしさよりも自分らしいの方がとっつきやすい気がして、その言葉で原稿用紙を前にして今考えてはいた。まだ成果は出ていないけど取り組む気持ちが軽くなった。ような気がする。


「お疲れのようで」

 埋まらない原稿用紙から逃げるようにリビングへ来た私を弟が出迎えた。げっそりとしているであろう私の顔を見て、口角が上がる憎たらしい弟に腹が立った。

「うっさい」と無愛想に言ってコップへ水を汲む。水を注ぐと水槽に見えるような仕掛けになっていて、ついすぐには飲まずに眺めてしまう。水族館の生き物がシルエットで描かれているのも使いやすく、中学校の校外学習の時に貰ったものを未だに大切に使っていた。

 コップへ口をつけてから、水が少し温くて後悔する。冷たい時には気にならない水のえぐ味みたいなものが温いと強く感じる。それが私は苦手だった。冬ならばそんなことはないのに、と残暑を恨む。

「小論文、そんなに大変なの?」

「……誰に聞いた」なんでそれを、という言葉を飲み込んだ。このことを知るのは我が家でお母さんだけで、しかもお母さんはわりとお喋りなタイプだった。

「ぼくの口からは答えられない」弟はおどけてみせた。その仕草が一層腹立たしい。

「なんでそんなに上から目線なの」

「そりゃ、待たされてたから」弟はリビングテーブルに座った。大げさに伸びをし、待たされてましたアピールをこれでもかとしてくる。普通は不愉快になりそうなのに、弟のは不思議とそう感じないのだからすごい。「そもそも作文が苦手なのに入試に小論文が必要な大学へ行こうとするのが間違っている気がするけど」

「あんたには関係ないでしょ」

「何言ってんの。そっちから呼んどいて」

「そうでしたっけ」私もおどけてみせるけど、鼻で笑って適当にあしらわれる。顔全面でムッとした表情をした。

 弟の向かいへ座ると、どうぞとキザったらしく手を差し向けられた。突っかかろうかと思ったけどやめた。小論文を早く完成させてこの焦りから解放されたかった。

「今回の小論文、自分らしさってテーマなんだけどよくわかんなくて」

「それは自分らしさについて? それとも何を書けばいいのかってこと?」

「どっちも」

「はあ」お手上げだ、と言いたげな表情だ。実のところ私もその気持ちなのだ。ずっと考えてモヤモヤして答えが出なくて。まさにお手上げだった。「自分らしさねえ」

「考えすぎて、もう自分らしいってなんですかって感じ」その言葉を思い浮かべる度に輪郭がぼやけていく。自分らしいという言葉の意味がどこか遠ざかっていくと、私自身もなんだかぼやけていくような気持ちになった。胸を張れるような個性はなく、人に言えるような目標もない。徐々に、自分の人とは違うと思っていた部分はピントが合わなくなって認識できなくなる。辛うじて見える部分で私を証明しようとするけど、そんなの他の人も持っていそうで一歩踏み出せない。自分らしいものなんてなくて、この特徴のない人間が『自分』らしいと言うことだけで精一杯だ。

「そっか」

「だって、なにか特技とか自分の中の軸みたいなものがある人ならいいけど、私にはそんなのないから何を書けば良いのかわかんないんだよ」

「あるでしょ」彼が私をじっと見つめて言う。冗談とか気休めじゃない、さっきまでのおちゃらけが表情から消えていた。ふっ、と私は目を逸らす。

「……ないよ」

 不意にそんなことを言ってしまう。少し寂しそうな表情が目の端に映る。


 ある時、噂話を聞いた。夢の中に青年が出てきて、自分の悩みを解決してくれるという。その青年はスノードームの中にいて、悩みを持った人はそれに話しかけるらしい。

 最初はヘンテコな夢だなと思った。しかし引っかかるものが合った。夢とスノードーム――それは忘れられない人を思い起こさせるものだった。

 高校進学と同時に私はこの街へ引っ越してきた。お父さんの家のおじいちゃんが腰を悪くしていて、介護ができるようにという理由だった。

 それは私の受験が始まる前から決まっていたことだった。けどよく、もし私があの街にずっと居ることが出来たら彼がいなくなるのは変わったのかなと思う。

 あれは受験も終わり、卒業式が迫ってきたある日のことだった。

私には幼馴染で仲の良い男の子がいた。一樹かずきは本を読むのが好きで、頭がよく冴えていた。当時も今も、彼が達観していたイメージは変わらない。だからよく帰り道に相談事をした。生徒会での面倒事、友達との些細なすれ違い、授業でわからなかったこと。彼は真面目に取り合って、でも深刻そうではなく楽しげに返してくれるものだからついなんでも聞いてしまった。

他人の夢を見られるからだろうか。

 一樹は一度だけ、そのことを私に話してくれた。彼が唯一秘密にして欲しがったことだからよく覚えている。中学校の校外学習で水族館へ行った時だった。

あれはクラゲの水槽の前で言われたのだった。そして、スノードームのようなクラゲの展示を前に「生まれ変わったらスノードームの中で暮らしたい」とも一樹は言った。きらびやかな毎日がずっと続いていそうだから、らしい。

 その水族館でたまたま二人で行動していたことや、よく二人で帰っていたことで友達にはよく一樹とのことを茶化された。その度否定していたけど、今思えばあれは恋だったんだなと思う。けどそれをその時自覚していたとして、私は一樹へ告白していなかっただろう。彼との関係は壊したくなかった。

 卒業式を控えたからと言って私は一樹へ告白することなんて考えもせず、いつも通り下校中に取り留めもない話をしていた。確かあの時は、新しい家が決まったことについて話していたんだっけか。

 その時、一樹がぽつりと呟いたのだった。

「多分、いなくなる」

 唐突なその言葉と、『多分』という曖昧な表現がおかしくてその時は冗談を言っているのだと思った。何言ってるの、と笑いながら返すと彼もいつも通りの受け答えをした。

 だからその時は深く気にしなかった。

 夜ご飯を食べた後、メッセージアプリでいつも通り一樹と会話をする。食べた夜ご飯を言い合うのは最早日課となりつつあった。その日は私の家が生姜焼きで、彼の家がウインナーとなにかの炒めものだったらしい。大体うちが和食っぽいと彼の家は洋食っぽくて、その日もそうだったからまただね、なんて言ったのをよく覚えている。

 夜ご飯の話の後、見ていたテレビ番組の話をしていたらメッセージアプリの既読が突然つかなくなった。返信が途絶えることは多く、寝ているか本でも読んでいるんだろうと思った。まさか、失踪するだなんてこの時は思ってもいなかった。

 翌日、学校に行くと一樹はいなかった。私と違い、時間をきっちり守るタイプだったから五分前に教室にいないのはどこか変だった。一樹はいつも遅れたことがなかった。

 朝のホームルームで、先生から一樹が行方不明になったことが告げられた。その時のことはあまり憶えていない。ショックで、ウソみたいで、たちの悪い嫌な夢だと思った。

 そう、悪い夢なんだ。しばらく私はそう思い込んでいた。

 連日行きそうな場所を探すも彼は見つからず、放課後に彼を探す人も、日増しに一人二人と消えていった。私はそのことに焦りを感じた。みんなが一樹のことを忘れていくんじゃないか。そしたら彼が帰ってこれないような気がした。

 卒業式を境に、一樹を探す人はほとんどいなくなった。結局彼は見つからなかった。私も引っ越してしまい、探すことが出来なくなり今に至る。あんなにも探すのをやめた人たちを薄情だと言っていたのに、今ではもう私も同じ括りだった。

 それをずっと抱えている。あの日、一樹を助けられなかったことをずっと悔やんでこの三年間を過ごした。

 だから夢の中に青年が出てくる噂を聞いて、それに賭けようと思った。この噂を解き明かせば彼に会えるかもしれない。

 その噂は、一人だけではなく色んな人から聞いた。偶然じゃない。なら夢について詳しい人のもとで学んで、解き明かそうと思った。それが大学への志望理由だった。――でもこんなの、誰にも言えない。彼の秘密は言えないし、もし仮に言ったとして噂好きの女学生として片付けられてしまうのがオチだ。

 なんとしてでもあの大学へ入って、青年の夢のことを解き明かす。ずっと一緒にいたからこそわかるのだ。あの噂はきっと、一樹のことだと。

 あの日差し出された手を握れなかったから、今度はこっちから手を差し出さなきゃいけない。一樹が私を嫌っていないかが、不安だけど。


 カチャン、と甲高い金属音が鳴る。はっとすると目の前にお茶碗よりも小さな器があった。中にはイチゴが入っている。どれも小ぶりで、もれなく凍っていた。冷凍イチゴだろう。こんなもの、冷凍庫にあったっけ。私の記憶にはなかった。

「ぼーっとする時は糖分を摂ったほうが良いらしいよ」

「イチゴってそんなに糖分あったっけ」糖質が低いからダイエットに最適だ、となにかのワイドショーでやっていた気がする。

「わかんないけど」弟はそう言って微笑む。「イチゴ、好きだったでしょ?」

 まあね、と言って目の前のイチゴを手に取る。冷凍イチゴの冷たさが指先から伝わってくる。縦半分にカットされたそれをまじまじと見ていく。芯のような白の部分と、果肉である赤のコントラストが見ていて楽しい。

 コンデンスミルクをかけるのも好きだが、かけるとイチゴらしい赤色が薄まってしまうのであまりやらない。あの甘さがイチゴの果汁を薄めさせている気がしてもったいない。なんというか、イチゴだけを食べた時は赤い果汁が広がるのだけど、コンデンスミルクをかけると白が混ざって曖昧になってしまうような気がする。

 段々とつまんだ指の感触が無くなってくる。急かされているみたいだ、と思いつつ口に放り込む。

 噛みしめるとまず冷たさを感じた。キン、という甲高い音が頭の中を駆け回る。たまらずまだ形の残っているイチゴを手早く噛む。じんわりと、冷たくなった舌にイチゴの甘みが広がっていった。飲み込み、一息つく。まだ冷たさは頭の中を駆け回っている。もう一口は少し時間が経ってからにしようと思った。

「食べないの?」

「冷たいし」

「イチゴが?」

「そう」

「ベリーコールドってやつだ」

 得意げに笑う弟に私は失笑する。あまりにつまらないダジャレに寒気すら覚える。

 ちら、と窓の外で何か動いたのが見えた。視線を向け、じっと見ている。なにか白いものが見えた気がした。鳥か、雪か。後者は季節的に考えられないから前者だろうか。その後特に変化はなく、諦めてイチゴを手にとってまた食べ始める。口に放り込んでから、やっぱりコンデンスミルクをかければよかったかと少しだけ後悔する。窓の外の白い何かを見たからだろう。

 室温で少し溶けたイチゴはさっきより食べやすくなっていて、気づけば次々口に放り込んでしまう。イチゴが溶けたことで味を濃く感じられる。さっきは冷たさを一番に感じたけど、今は落ち着いて味を楽しむことができた。舌の上、ツブツブとしたざらつきと、程よい冷たさが転がるのもまた楽しい。さっきまではイチゴもどきみたいな感じだったけど、少し溶けた今のは冷やしたイチゴっぽい感じだ。

「食べないの? そう言えば」私ばっかり気づけば食べていた。器を弟の方へ寄せる。食べるかと思ったけど、丁寧に両手で器を返されてしまった。イチゴ嫌いだったっけ、と思いだそうとするがそんなことはなかった気がする。

「いいよ、イチゴって気分じゃないし」

「なにそれ」

「なんか、めっちゃ食べたい気分じゃない」

「ベリーベリーな気分じゃないってことね」

「くっだらな」苦笑される。あんたの言ってた下らないダジャレよりはマシだと思うんだけど。

「あ、でも」と苦笑した顔がすっと真面目な顔になる。あれ、面白いってわかった?「ベリーベリーって自分らしいに似てるね」

「……なにそれ?」

「いやほら、とてもイチゴってことじゃん」ヴェリー、ベリー、と大げさな発音を真面目な顔でやっているものだからつい私は笑ってしまう。むっとされるも弟はそのまま話を続ける。「とてもイチゴってさ、イチゴを表すにはなんかおかしくない?」

 確かに、目の前のイチゴに対して「これはとてもイチゴです!」というのはおかしい。なんだか、英語の教科書に出てくる例文みたいなちぐはぐさがある。

「自分らしさも似てる所ない? 自分がいるのに、自分らしさを説明しろって言われてもここに自分いるんですけどみたいな」

「ディスイズアペンみたいな?」

「グッドアフタヌーンみたいな」

 そう言い合ってお互いに笑う。英語の教科書に載っている例文が実際話すとなると全然使えないと聞いた時はびっくりしたものだった。確かに、自分の持つペンについて聞かれないし、挨拶をする時はこんにちはじゃなくて大体が「ハイ!」だ。

 なんで気づかなかったんだろうか。

 ずっと私はあの原稿用紙へ、自分を書こうとした。――違うんだ。私を書くんじゃなくて、書いたものが私になるんだ。そりゃ、書きにくいったらありゃしない。まだ自分のことなんて全然わからない。わかんないことを書こうとするから進まないんだ。

「まあ深尋なら大丈夫だよ」

「なにを根拠に」苦笑する。小論文は書きやすくなったけど、書き上がったわけじゃない。スタート地点からやっと進んだだけで、ゴールまではまだ遠い。

「行きたい所へ行けるさ」


 牛乳を一息に飲み干す。喉が渇いていないわけじゃない。ただ単純に、急いでいるから一息で飲んだ。そして、起きてから何度目かのその言葉をお母さんへ言う。

「どうして起こしてくれなかったの」

「何度も起こしたじゃない」これも何度目かのやり取りだ。

「私は起こされてないもん」

「もう少し寝かせてって言ったのは深尋よ」

 私は絶対に悪くないが、この会話は平行線を辿る気配しかなかった。あいにくそんな時間はない。テレビを横目で見た。

 情報番組かバラエティか、あいまいな番組をテレビは映している。どこか寒い国にいるようで、常温にあったバナナを外に出し、一瞬にして凍ったバナナで釘を打っていた。おなじみの光景だ。それを見ただけで寒い国にいるのだろうということがわかる。

 左上の時刻が、家を出る時間を差していた。まずい、と駆け足で洗面所へ行き歯磨きをする。すぐさま自分の部屋へ行き、カバンへ空白が目立つ原稿用紙を入れる。結局あのあと原稿用紙を前にし寝落ちしてしまった。なんとか授業中で完成させなきゃいけないことを考えると胃が痛くなる。書ける気はするけど、どうしても苦手なことだから不安が勝ってしまう。

 でも、行きたい所へ行ける、というあの時聞いた言葉を思い出す。その言葉が少し不安な気持ちを肩代わりしてくれて、前向きになれる。

 玄関へ向かった。ローファーを履き、家の鍵を取る。そのときに、飾られた家族写真が目に入った。

 ここに引っ越してきたときに撮った写真だ。お父さんとお母さんと私が笑顔で映っていて、そこではっと思い出す。

 一樹はいつも遅れたことがなかったのだ。

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ベリーベリー 榎坂 祥 @enkzk_syou

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