幕間 その二

カリスマ講師 比星 明日二郎の魔術講座



☆オッス、カリスマ講師の比星 明日二郎だ。

 読者のみんな、【第三章 ウミからくるモノ、山から来た者】はどうだった?


 物語はまだ序の口、これからクセの強いキャラクターがどんどん出て来るからな。

 そんなやから相対あいたいする為にも、このオイラから魔術を学んで行くが良い……。


 あ、御代は食いもんで頼むぞ、頼むぞ!


※本項は作中設定の紹介です。

 若干のネタバレが含まれる場合がありますがご了承下さい。


 本項の情報は作中の一九一八年 一二月時点のものです。



◆ 汎用はんよう魔術 ◆



 汎用魔術とは、適性を備えた上で訓練を積めば誰でも習得が可能な魔術の事である。

 適性により習熟速度は異なるが、大抵の場合は独学より師事した方が早い。


 魔術結社は様々な汎用魔術の体系化に努めており、術師育成の効率化を進めている。

 大手魔術結社は自陣営に属する魔術師達に共通の教練を施し、使用する術の調整方法を共有している事が多い。


例:九頭竜会瑠璃家宮派=真道しんとう

  九頭竜会大昇帝派=覚者密教かくしゃみっきょう


 霊力の使用量で効果対象(範囲)、効果時間、効果程度を調節出来る場合が殆ど。


☆一言でいうと『料理のさしすせそ』みたいなもんだな。


 コレを一種類でも使えると低級魔術師、五種類以上マスターすると中級魔術師として認定される。

 ほんで中級魔術師が固有魔術をマスターすると上級魔術師にランクアップだ。

 更に、特に抜きんでた固有魔術を扱えると特級魔術師の称号を得る。


 ん? オイラ? オイラは勿論、『超特級』だぜ!



◇ 後催眠暗示ごさいみんあんじ ◇


 対象を一旦催眠状態にし、その催眠から覚醒した後に特定の行動を取らせる為の暗示。

 通常は対象が覚醒した後に暗示された事自体を忘れさせる健忘暗示と一揃ひとそろいで使用する場合が殆ど。


 映像や音楽、芳香などと非常に相性が良く、耐性のない相手(集団含む)には少ない霊力使用量で多大な効果が期待出来る。


☆オイラ達が好んで使う便利な魔術だ。

 魔術師は大抵催眠術に対する耐性を持ってやがるから、オイラ達兄弟も第一、第二、第三章じゃあ苦労したぜ。


 作中でも言ってるけど、対象を傷付けない使用が望ましい。

 後、対象に直接『死ね』とか言っても大体は効かねーからな。

 それは対象の聖霊が守ってるからだ。

 と云う事は……聖霊のコントロールが効かない堕落状態ではどうなるのか?

 出来れば使いたくないぜ……。



◇ 精神感応テレパシー ◇


 感情、感覚、言語などを他の存在に伝える、又は他の存在から受け取る術式。

 多くの精神操作系魔術の基本となっており、前述の後催眠暗示などもこれを応用したもの。


 霊力調整によって情景イメージのみ、音声のみ、言語のみ等、伝達内容に制限を掛ける事や伝達対象を特定する事なども出来る。

 又、精神感応テレパシーで繋がれた対象同士に連鎖リンクを付随させる事で、一部の術式効果を共有する事が可能。


 対象同士が許諾した場合か、対象同士の霊力、術式の練度に差がある場合は一方通行通信も行える。


☆簡単に言えばものすっごく空気を読む、又は読ませる術式。


 今ハマってるのは、ミヤモリが過去に食べた食事の味を共有する事だな。

 あ、ちゃんと記憶をのぞく許可は本人に取ってるからイチャモンつけんなよ!



◇ 精査スキャン ◇


 対象の状態を把握する術式。

 大抵の場合、結果は術者の五感に投影される。


 精査スキャンが可能な項目は温度、湿度、気圧などの他、対象内の特定物質探査など幅広い。


☆脅威に対しては先ずこの術式。

 キチンと調べてから対処法を練るべし。


 どこぞの特撮ヒーローみたいにイキナリ敵に殴り掛かるなんざ、仕事人プロフェッショナルの風上にもおけねーな。

 そんな頭悪い真似、オイラはノーセンキューだぜ。



◇ 感覚拡張 ◇


 五感を拡張する術式。

 あくまでも元々人体に備わっている感覚の拡張であってそれを超える効果、例えば『視覚を拡張して物体を透視する』などは別術式となる。


 便宜上、筋肉や臓器の機能増強などもこの術式の範疇はんちゅう外。


☆コレと効果が被る術式に、所謂いわゆる遠隔透視リモートビューイングなんかがある。

 ソレと比べると霊力消費が少ないのがこの術式の利点だな。


 肉眼で視認出来る範囲内ならこっちのほうがオトク。

 オイラは節約術にも長けているのだ!



◇ 透視術イントロスコピー ◇


 物体内部を透かし視る能力の事で、視覚を使用した感覚拡張の一種に分類される。


 遠隔透視リモートビューイングや霊視とは別もので、これらとの併用が可能。


 建物の内部にいる標的を見付けたり、物体の内部をX線写真の様に透かし視る事が出来る。

 人体ならば骨格だけの画像や内臓だけの画像と云う風に、物体の透け具合を調整出来るのも特徴。


 純粋な感覚拡張と違う点では、使用者が例え弱視や全盲であっても、視神経や脳の視覚野さえ無事であれば使用が可能な事。


☆全国の健全な青少年(だけとは限らないが)諸君が欲しい能力の上位常連。

 だが、婦女子(だけとは限らないが)の服を透かして堪能しようと云う不健全なヤツはオイラが許さん!

 脳内に緊急停止装置ストッパーを組み込んで、エロい目的で術式を使おうとしたらビリビリくるようにするかんな!



◇ 身体機能調整 ◇


 対象の筋肉、血管、骨格、内臓などの機能を操る術式。

 自身以外に施す場合は催眠術と併用する事が殆ど。


 生理活性物質(ホルモン)の分泌を操作して筋力を増強させたり、肉体が持つ免疫機能、解毒機能を活性化させたりも出来る。

 勿論その逆も可能。


 対象の脳内物質を調整する事によって感情や記憶も操作出来るので、精神操作系術式でも重要な位置を占める。


☆ミヤモリの酔い覚ましによくやるな。

 但し、この術が使えるからと云って飲み過ぎは厳禁。


 悪酔い物質を分解する分解酵素ってのがあるんだが、その分解酵素を生み出す細胞の細胞分裂回数は有限だからな。

 この回数がなくなると、身体はアルコールその他の毒物を分解出来なくなるぞ。


 その場合苦肉の策として、身体は水分排出を減衰げんすいさせ体内の毒物を薄めようとする。

 その結果が腹水ふくすい胸水きょうすいが溜まる等の症状って訳だ。


 こうなったらもう酒は断つしかないぞ。

 末永く酒を楽しみたいなら飲酒量は程々にしとけ。

 少量だからと云って毎日むなよ!



◇ 思考と感覚(五感)の高速化クロックアップ ◇


 思考速度を任意に上昇させる術式。

 使用者は周りの動きが極度に鈍重、又はほぼ停止した様に感じられる。


 思考速度のみの加速なので、使用者は肉体を無理に動かそうと思っても動かせない。

 加えて五感も最大限に鈍くなる。

 例としては、使用中は極端に視野が狭くなる等。


 思考の高速化クロックアップ中、通常状態と変わらない程度に周りの状況を認識するには感覚(五感)の高速化クロックアップが別途必要になる。


 もし思考と触覚を共に高速化クロックアップしている際に痛みなどが発生してしまうと、その痛みが長時間続く感覚におちいってしまう。


☆思考だけじゃなく身体までクロックアップ出来ちまったら〘お面らいだー・甲虫かぶと〙みたいになっちまうぜ。

 ちなみに、〘お面らいだー五五五ふぁいず加速形態あくせるふぉーむ〙は思考と同じ速度で行動出来るらしいぞ。


 あれ? なんか雑多な思念が入り込んで来たような……。



◇ 念動術サイコキネシス ◇


 思念で物体を動かす所謂念力と呼ばれるもので物体操作系術式の基本。

 対象物を動かす方法により遠隔動作テレキネシスと区別される事もある。


 対象は生物、非生物を問わないが、対象の寸法サイズや状態によって使用霊力が大幅に増加してしまう欠点がある。


 例を挙げると、船などの巨大で重量がある物体や、建物の様に固定されている物体を動かすには多くの霊力を消費する。

 又、肉眼で確認するのもやっとな小さな物体を精密に動かす事にもある程度の慣れが必要。


☆ミヤモリが今練習してんのもこれだな。

 次章で大活躍しそうな予感がする!


 あと巨大で重量がかさむ物体を動かす時には、サイコキネシスよりも密度操作デンシティコントロールってのが良いらしい。

 後々テストに出るかもな。

 いや出ないか……。



◇ 障壁バリア ◇


 対象者への物的接触をさまたげたり、物理的な衝撃を減衰、又は無効化する術式。

 所謂バリア、シールドと呼ばれるもので、熱や電気などの化学反応から防御する際にも使用される。


 対象の前面、或いは全周囲を覆うなど、効果範囲は自在に変更出来る。

 効果対象は自身や他の物体、生物だけでなく、空間への設置も可能。

 又、障壁バリアに弾力性を付加したり電流を流すなどの脚色も自由自在。


☆魔術戦闘の基本だな。

 大抵の魔術師は戦闘や狙撃が予想される場合にバリアを張り身を守る。


 近頃はピストルが普及し始めたから、どんなに優秀な魔術師だって一般人に殺される可能性がある。

 そうならねーよう、宮森にも早く覚えさせねーとな。



◇ 成長促進 ◇


 生体活性とも云う。

 文字通りの術式であるが、生物だけに限らず鉱物も対象とする事が可能。


 理論的には霊力と環境が続く限り生物は成長、繁殖し、鉱物の場合は結晶化が進む。


 但し、多くの動物は成長する為に食事が必要なので、成長速度は動物の寸法サイズに大きく依存する。

 その理由として、この術式の使用で食物の消化吸収は促進されるが、食事そのものを速く済ませる事は出来ないからだ。


 成長する為の資源に困る事が少なく生殖周期が早い微生物や植物は、この術式の効果を遺憾なく発揮出来る。

 よって、この術式の効果を最大限利用出来るのは菌類、細菌類などの微生物、小型の昆虫、植物にほぼ限られる。


☆実は怪我や病気の治療にも使えるんだぜ。

 でも、急激な成長促進は細胞に負荷を掛けるからな。

 使い過ぎて体がボロボロにならないように気を付けるんだぞ。

 それと、次章では大活躍だ!





☆ここまで付き合って貰ってあんがとよ。

 予習復習も済んだことだし、【第四章 雷獣の咄(はなし)】いってみよう!


 ココの内容、マジで後々役に立つから……。



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