金華猫の誘い その二
一九一八年一二月 宮森の下宿先
◇
『断界術の説明の前に宮森さん、〖結界〗と呼ばれるものを僕に説明してくれ』
『ん、結界か?
一般社会の物だと、空間や区域を仕切る
作法に関するものだと、店先に掛ける看板、
宗教に関わる物だと、
これらの物で、神域や
厄除けの意味では、正月の注連縄飾り、葬儀で使う幕、盛り塩、
女人禁制のしきたりなども、一種の結界と云える』
[註*
[註*
[註*
『では宮森さん。
『ああ。
例えば、真道で行う
現在では
真道の儀式で結界と云えばこれに当たるな。
どうだ今日一郎?』
『宮森さん、いま説明して貰った真道に
そこで、次に
『う、間違っているとは衝撃だが……。
え~っと、覚者密教だったね。
覚者密教で魔術的な要素の強いものだと、
あ~、なんとなく解ったぞ。
本当の結界はこっちだったか。
またまた支配者層、魔術師達に騙された~』
宮森の
『ナハハハハ。
お前さんもまだまだよの~、ミヤモリ。
伝承学者の卵の肩書が泣いておるわ。
あ、まだ卵だから鳴く事すら出来んな』
『仕方ないよ。
意図的に
それよりも、嘘に気付けた事の方が大事だよ。
宮森さんが整理できた
『結界と云うのは、穢れの除去、清浄な空間、霊的防壁を示すものではない。
今日一郎が儀式を行ない明日二郎を呼び出したように、本来は
詰まり、邪霊を召喚する魔法陣の事だな。
こう云う事だったんだよな、今日一郎?』
『そう。
異なる世界同士を結ぶから結界なのさ。
で、
『だいたいの想像は付くよ今日一郎。
しかし結界にも色々と種類が有って、それに応じて断界術にも種類が有るんだろう?』
結界の真実を皮切りに、今回の邪神学講義も
ここで明日二郎が講師に名乗りを上げる。
『ソレについてはオイラからレクチャーすんぞー。
最初に説明すんのは、
ミヤモリ君もご存知の通り、魔術を使える程に邪霊の定着した人間の事だな。
邪霊を宿した人間、それソノモノが一つの魔法陣、結界と云う事よ』
『まあ、そうなるか。
で、断界術と云うのは?』
『断界術……。
ソレは、対魔術師を想定した究極の暗殺術。
二千六百年前には大成していたと云われる、
ァァッアチョー‼』
予め低く落としておいた声の
『なんだよ「ァァッアチョー‼」って、初めて聞きましたよ。
精神感応で嘘つこうとしても無駄ですから。
それに、一子相伝なら自分は教われないですよね』
『チョットかっこつけて、〘ナントカの拳〙っぽく言ってみただけだ。
オイラは四次元の
気にするでないミヤモリ君。
で、断界術だけんども読んで字の如くである。
魔術師と闘い、
『……えらく抽象的ですな明日二郎センセー。
具体的にはどうするんですか?』
『邪霊を引っぺがせれば何でも良い。
殴ろうが蹴ろうが何でも有りの、〘
『乱暴過ぎませんか、それ。
それに、自分は肉弾戦型じゃないですよ』
『そんなことは百も承知である。
ミヤモリ君に似合いの方法も在るから心配するでない。
そんでさっきの話とも繋がるんだけんど、魔術師は大抵の場合バリアで自身を護っている。
戦闘では
それを打ち破る
『敵であっても出来れば攻撃したくないんだが、仕方ないか』
『じゃ、次いくぞ。
次に説明すんのは、土地に張ってある結界。
さっきの話にも出て来た、神域だの禁足地だのの事だな。
このタイプの一つが、土地自体に邪念を集めて邪神崇拝儀式を行なう場所、つまりは儀式場になる。
注連縄や関守石はその目印。
道祖神なんかは儀式場の簡易版、及び広大な儀式場に紐付けられた補助装置ってトコだ。
ではミヤモリ君、このタイプの結界で代表的なモノを列挙したまえ』
『う~ん、両センセーからの教示に
残念
日本だけに限定しても
[註*
『大変良く出来ましたミヤモリ君。
君も分かっているとは思うが、それらを拝んでいる一般の人々はよもや邪神を拝んでいるなどとは夢にも思っていない。
良かれと思ってやっている事なんだよなー』
『悲しい事に、自分も含め一般人の
世界の真実を知っているのは、支配者層、魔術師を始めとした一部の特権階級の者達だけか……』
又しても、世の
◇
金華猫の誘い その二 了
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