城壁に詠ず

津田薪太郎

第1話

天子の王城絢爛栄華を極め

天下万民悲中の死淵に窮す

祖王の霊廟に花多くして

麦秋実り無くして夏もまた来ず

老臣三代の功を以てこれを諫すも

宴声高くして客殿昼よりも尚明るし


忠臣是を嘆きて天を仰ぎ

窮民は糧を求め地を這う

冷雨地を叩きて小穴を穿ち

烈々の炎陽遙千里を枯らす

天下万民明日に在りし己が死を見る

さらば立ちて剣の下に死するべきかと


万民雲霞の如くして大山鳴動し

諸侯の大勢江をも陸が如く埋め

遂にぞ王城烈炎のうちに崩れ

天子の栄華煙と共に消え去るなり

今我草叢の底の壁に面し

亡国の栄華偲びて詠ずるなり


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城壁に詠ず 津田薪太郎 @str0717

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