「突然の蛇足、友達に話す話ってつまんない」

「蛇足って言葉知ってる?

 蛇の足って書いて”だそく”って読むんだけど。


 無いことをさもありげに難しそうな言葉にしてしまう事、って意味があればまさに蛇足って文字に相応しいんだけど、残念ながらそうじゃないんだ。

 この言葉の意味は不必要且つこれまでの全てを台無しにしてしまう様な完成された作品を汚す追加要素の事を言うんだ。

 つまりこの蛇足という言葉を使う為には、前提条件として作品が必要になる。

 『なるほど、これは日常に当てはめて使うのは厳しそうだな』なんて思ってくれたら、僕にとってこれ以上ない感想なんだけどね。


 日常ってさ、僕たちが思っている以上に意味を持っているんだ。

 毎日が情報量の塊。だからこそ疲れちゃうんだけどね。


 僕の人生。つまり生まれてから今この瞬間までの中で、もし蛇足と言える部分があるとしたら。

 そんな事を考えた事はあるかい?


 僕は偶然にも昨日、そんな事を考えたんだ。


 ……どうしてだろうね。今日は柄にもなく緊張しているんだ。

 理由は分かっているのに”どうして”なんて言葉を使うぐらいには緊張してるね。


 僕は君に今日言わなくちゃいけないことがある。

 そうだな、どうせだからいつもの流れに沿って言わせてもらうけどさ。


 僕が言いたいのはさ、『僕の人生にとって君との出会いは蛇足だった』って事なんだ。


 突然ごめんね。毎日これまで下らない無駄話に付き合ってもらっておいて、こんな言い草はあんまりだ。

 でも事実、僕にとって僕の話は毎日面白くなくなっていった。


 僕は君と出会った次の日に言った通りずっと孤独だった。そしてなんだかんだそんな自分が話す厄介で面白くない話を面白いと思ってたんだ。


 でも今の僕の話はつまらない。

 君にもっと見てもらいたい。キミがもっと興味のありそうな話をって、僕の趣味嗜好とはかけ離れた僕にとって面白くない話をずっと話してた。


 そうして話す僕自身は君にとって面白くない人間だっただろうね。


 だからさ、僕が君と出会って成長した事ってのは、昨日までの成長を指すんじゃなくて、今日この瞬間に君を拒絶出来た事だと思うんだ。


 君を拒絶して僕は明日からまた孤独な人生を送る。別に孤独な人生に囚われている訳じゃないよ? 僕自身が孤独で居たいんだ。


 ただ、最後に一つだけ思った事を言ってもいいかい?


 なに、別に大した話じゃないんだ。

 ただ君を拒絶出来た事で成長した僕に心境の変化が起きたんだ。


 君がもし良ければなんだけど、初日に言った僕の話を忘れて欲しい。

 代わりにこの話を覚えておいてくれ。



 『孤独な人間は誰よりも自分自身を楽しませる事が出来る』って話を。



 それじゃ、本当にバイバイ。もう二度と来ないでくれよ?」

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「この文章と同じ、吹き出し一つ分の話を聞いてよ」 笹煮 色 @Sasanisiki0716

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