第10話 人間より自然が強い

 前述の週6日8週間筋トレプログラムは精神的な達成感があった。だが純粋な筋トレとしては体重が1㎏減ったものの筋力増加については今一つだった。そこで今試しているのが「二日連続で筋トレして一日流す」というもの。「流す」というのはウォーキング+腹筋とか軽く済ますということ。


 さて、私は自体重トレーニングを主にやっているので当然腕立て伏せはやるのだが、手幅や指先の向きで負荷や使う筋肉が違ってくる。その辺は専門的な本なりようつべで研究している。で、気付いたのは地球を持ち上げるのは無理だなということ。


「そんなの当たり前じゃないか」と言う人多数だろう。では「うつ病は心の弱さの表れ」と言ったらどうなるか。私は正確には双極性障害Ⅱ型だが、「双極性障害Ⅱ型は心の弱さの表れ」と言われたら「はいそうですね」と返事をしてしまう。つまらないツッコミは流すに限る。それと、メンタルヘルス系のからかいをする人は大抵メンヘラ予備軍だから。


 ではマジレスするとどうかというと、癌や糖尿病と同じように精神疾患も自然現象の一つなのだ。人間VS.自然で人間が勝てるわけがない。つまり、うつ病になるあなたが弱いのではなく自然が強すぎる。


 癌になった人を「体力無いんだ」とからかう人は居ない。では何故うつ病は「メンタルが弱い」などと言われるのか。精神疾患の致死率の高さを患者本人すら軽視しているからだ。あれだけバタバタ自殺したり手首切ったりが続いても直接の死因はうつ病ではなく全身打撲や窒息とされるからだろう。


 しかし、うつ病と診断されたらそれは死亡フラグと周りの人も考えたほうがいい。エベレスト登山に挑戦する登山家は走って登らない。走って登ったら遭難するに決まっているからだ。だが、走って登らせるようなことを自分の子供や部下に強いて病気に追い込む親や上司は実在する。


 そういう親や上司にはエベレスト登山とは言わない。野生のヒグマと戦って勝ってからものを言って欲しいもの。「そんなの勝てるわけないだろう」と文句を言われたら「うつ病はヒグマより強くて危険なのですよ」と教え諭してあげよう。


 人間より自然が強いと言えばこれまた当たり前の話だが、それに気付かせてくれるのが病気なのかもしれない。

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