バージョン.A —或る救世主による異世界備忘録。—

第1話

　——そこは、見渡す限りの、闇。

　飲み込まれそうなほど、虚無の世界。

　気付けば、自分は一人、そこに浮かんでいる。

　「……ここは、どこだ？」

　すると、眩しい光の粒が、目の前に現れる。

　それらは凝固し、やがて一匹の蝶を形作った。

　蝶は言う。

　——これからあなたは、長い長い冒険の旅に出ることになるわ——

　——だけど恐れないで——

　——あなたには、強い力と、確かな記憶が、いつもついているのだから——

　——あなたはこの世界を、駆け巡らなければならない定め。この世界を、変えなければならない定め——

　——でもあなたならきっと、大丈夫。だって、あなたは選ばれし人ですもの——

　——さぁ、行くのよ。サトル。振り返らず、真っ直ぐと——

　やがて蝶は消滅すると、それらは光の粒となり、その流れ出た先に、一筋の光を導いた。

　そして、その光を頼りに、闇は晴れていく——