そこに私が入る余地はない。
夜橋拳
第1話(完)
「え? 君たち結婚するの?」
頷き合う2人、その動きが妙にシンクロしていてなんだか可愛かった。
男の方が松川、女の方が有栖。
松川は小学校からの幼なじみで、有栖は高校からの親友、同じ部活で松川と仲が良かったから私も仲良くなった。
「それにしても君達早過ぎないか、まだ23歳になったばかりじゃないか」
「それが実は......出来ちゃったんだよ」
え?
松川が有栖の腹を優しく撫でる。
よく見たら2人とも飲み物が酒じゃなくて麦茶じゃないか。
「いや有栖はわかるけど、別に松川まで麦茶にする必要は無いんじゃない?」
「バカ、嫁が我慢してるのに飲めねえよ」
有栖はその美貌からは想像できないほどの大酒豪なので、その有栖が我慢しているということはどうやらドッキリということではないらしい。
「そっかあ......君たちも結婚かあ。いいなあ......」
「お前にも良い相手が見つかるさ」
「こんなしょぼい娘貰ってくれるやついないよ」
「安心しろ、俺はお前のいい所めっちゃ知ってる」
「おー! いいこと言った! よーし今日は奢りだー! 松川の」
「俺のかよ!」
ふふふ、アリスは笑うのだった。
「結婚式場は任せとけ、最高の場所を選んでやる」
「じゃあ今日の奢りはその代金だな」
家に帰り、スマホで結婚式場を調べる。
なんにも捗らなくて、タブを消す。すると、高校の頃から1回も変わらなかったスマホの壁紙が瞳に映る。
私が腕で松川の首を絞めて、松川が苦しそうな演技をして私の腕を叩いている、それを見ている有栖がこっちを向いて微笑んでいる。
電源を落とすと、涙を流している私がスマホに映る。
きっと松川と有栖は......いや、松川夫婦はこれから先一生仲良くやっていくのだろう。
お腹の中の子供とたった3人で。
......そこに私が入る余地はない。
そこに私が入る余地はない。 夜橋拳 @yoruhasikobusi0824
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