第16話 十六

これ以上、心に負担をかけたくないという思いもある。

だけど、今のままじゃ駄目だという思いもあった。

(よしっ、決めたわ。

まずはこの家を管理しましょう。

幸い、お金には困って無さそうだったから、人手を雇うのは簡単よね。

そうすれば、いつかはきっと……)

そう思い立ったミミリィの行動は早かった。

使用人達に、自分がここの管理を任されたと伝え、屋敷の中を案内させる。

そうして、屋敷の中をくまなく見回った結果、ミミリィはある事に気づく。

(やっぱり、思った通りよ。

使われていない部屋が多すぎるわ)

こうなると、後は行動あるのみである。

使用人たちに、屋敷の中の掃除をするように命令を出す。

掃除道具は、倉庫にあった物を勝手に使わせてもらう事にした。

そんなミミリィの姿を見て、皆一様に驚く。

自分達の仕事が増えるからだ。

それでも、文句を言う者は一人として居なかった。

それどころか、むしろやる気になっているようですらあった。

そうして、ミミリィは毎日のようにこの家の掃除を行っていった。

最初は、メイド達も一緒に掃除をしていた。

しかし、ミミリィの熱意に負けて、徐々に彼女一人で掃除を行うようになっていった。

そうして、半年が過ぎた頃だろうか。

(ふう~やっと終わったわ)

ミミリィは達成感に包まれていたのだった。

1月ほどかけて、この家は生まれ変わったのだった。

ミミリィは、ふと時計を見ると既に夕方になっていた。どうやら、いつの間にか眠ってしまったようである。

ミミリィは、寝ぼけ眼で辺りを見渡すと、テーブルの上に置かれている料理が目に映った。

それは、ミミリィが作ったものである。

どうやら、自分でも気付かないうちに、誰かが起こしに来ていたようだった。

ミミリィは、慌てて身支度を整えると、食堂へと向かう。

ミミリィが、席に着くと、他の面々も揃っていた。

どうやら、自分が最後だったようだった。

ミミリィは、急いで食事を開始する。

そんなミミリィの様子を全員が微笑ましく見ていた。

(何かしら?)

と思いつつも気にせずに食事をしていると、どうやら全員食べ終えたようだった。

そしてミミリィはそこから移動し自室へと向かっていると一人のイケメン男性と鉢合わせするのですが

その男性は凄くミミリィの好みで声をかけるのです。

(貴方、名前は?)

(え?)

(貴方の名前ですよ。

貴方の名前は?)

(あ、はい。

俺は、マハティスと言います。

マハティス・グランディアです。

貴方は?)

(私は、ミミリィです。

よろしくお願いします。私、貴方の事が好きです。

結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?)

ミミリィの言葉に、彼は一瞬驚いた表情を見せるもすぐに笑顔になり、

(ありがとうございます。

俺も貴方の事は好きです。

ですが、今は仕事中なので失礼します。

また後日、時間を作って会いに行きますのでその時に返事をさせていただきます)

(分かりました。では、待っておりますから。

それと私の事はミミリィと呼んでくださいまし。

では、失礼します)

(え?)

ミミリィはそれだけ言うとその場を後にしました。

その後ろ姿を呆然と眺めているのだった。

ミミリィは、食堂に戻ると自分の作った夕食を食べ始める。

今日の夕食当番はミミリィであった。

ミミリィは、自分の作っている物が美味しく出来ているのか不安になる。

…………夕食が終わり、ミミリィは自分の部屋に戻ろうとするが、途中でマハティスと鉢合わせする。

マハティスは、今日はミミリィの部屋で一緒に過ごしたいという事だったので了承する。

2人は、お互いの事を話ながら歩いていく。

ミミリィは、マハティスの話を聞きながら思う。

(本当に素敵な方ですね。

もし、マハティスと一緒になれるのであればどんなに幸せでしょうか?

ま、まさか、そんな事を考えるわけないじゃないですか……。

そ、そんな事を考えただけで恥ずかしいではないですか。

はしたないと思わないで下さいまし。

べ、別にいいんですよ。

私が誰を好きになろうが私の勝手なのですから。

で、でしたら、せめて想像の中でくらいは自由にさせてくださいませ。

そんな事を考えながら歩いているうちに、ミミリィは自室の前に辿り着く。

ミミリィは、ドアノブに手を掛けようとするが、そこで止まる。

そして、深呼吸をして心を落ち着かせる。

そして、意を決してドアを開ける。

すると、そこにはベッドの上で横たわるマハティスの姿があった。

ミミリィは、一瞬何が起こったか分からず混乱するがすぐに理解してしまうのだった。

そう、彼は息を引き取っていたのだ。

ミミリィは、思わず叫んでしまうのであった。

……どれぐらい時間が経ったであろう。ミミリィは、未だに部屋の隅で座り込んでいた。

ミミリィは、ようやく立ち上がると、フラリとした足取りでドアへと向かい歩き出した。

ミミリィは、ドアを開けると、そのまま廊下を進んでいく。

ミミリィは、ただひたすらに歩く。

その瞳からは光が消えており、まるで幽鬼の様であった。

ミミリィは、無意識のうちに裏庭へと出てしまう。

そこには、綺麗に整えられた庭が広がっていた。

ミミリィは、ゆっくりと庭を散策する。

やがて、ミミリィはとある場所で立ち止まった。

そこは、この家の主であるバルクス伯爵の銅像の前だった。

ミミリィは、その前に膝をつき両手を組んで祈り始めたのだ。

……それは、神への信仰ではなく、愛する人を失った悲しみによるものだった。

やがて、日が暮れてきた頃に、ミミリィは立ち上がり屋敷に戻るのだった。

ミミリィが屋敷に戻って来た後、屋敷は大騒ぎとなった。

何しろ、婚約者に捨てられたはずの令嬢が、婚約者の像の前で祈って出てきたのだから。

しかも、その顔には涙の跡すら残っているではないか!

そんな状況の中、ミミリィは使用人達に指示を出していく。

まずは、屋敷中の窓という窓からカーテンを取り外させた。

次にミミリィは厨房に向かい、料理人達に大量の食材を用意するように指示を出した。

そうして用意できた材料で、ミミリィはあるものを作り始めていくのだが……。

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婚約者に裏切られた貴族令嬢の復讐劇 一ノ瀬 彩音 @takutaku2019

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