寅年

「来年の干支は寅ですトラ。がお、がおーっ」

「今から来年のことを言うな。鬼が笑うぞ」


「ねーねーセンパイもやりましょうよー。がおーって。虎になるの楽しいですよ」

「嫌だよ山月記じゃないんだから」


「むーっ。センパイがやってくれるまで追いかけ回しますよ」

「やめてよバターになっちゃう」


「絶対可愛いと思いますよ。ほら、がお、がおーって」

「それ可愛いのは小林さんとこだけだから。辰年まで我慢しなさい」


「その頃には三期やってますかね」

「円盤の売上的にはやっててもおかしくはない」


「おかしかったらわーらーおー。あ、鬼が笑うといえば鬼のパンツって虎柄ですが」

「唐突に話を戻したな」


「鬼と虎の関係性についてですが、中国から入ってきた言葉で鬼門という避けるべき方角があります。それを日本の十二支で表すと丑寅うしとらの方角となります。だからビキニといえば牛柄というイメージが定着しています」

「うん……うん? あれ、そんな話してたっけ」


「いやぁ、流れるように豆知識を披露するなんて、さすがコーハイちゃん」

「自画自賛するほどでもねぇよ」


「ちなみに鬼虎うにとらという、16世紀初めの与那国島の首領がいます」

「怖そうな名前なのに読み方は可愛いのな」


鬼虎うにとらマン参上」

「角の生えた虎じゃん」


「サバンナの熱光線」

「サウナの熱風くらいのダメージしかなさそう」


「R4792星雲からやってきました」

「琉球王国の与那国ってやかましいわ」


「違いますよ、鬼虎は琉球の支配に反発していた首領です。RはRevel反逆のRです」

「あっはい」


「というわけで掛け声は『がお、がおーっ』です」

「絶対人気出ないよこのヒーロー」



「ところで久々の登場すぎやしませんか」

「だってやりたいネタもないし、またハロウィンやクリスマスやるのもなんか違うし」


「このままじゃ干支ネタで年に一度更新するだけの頻度になっちゃいますよ!」

「まーそれもアリかもね」


「しかも前回が七夕で年に一度しか会えないってネタフリのフラグ回収してる場合じゃないですって」

「いやいや歌にもあるだろ。会えない時間が愛育てるのさって」


「それは会えない時も手紙やメールでやりとりしてる人の場合であって、連絡も取らないまま年に一度しか会わないままでいると確実に浮気されますって。人の心は移ろいやすいものですから」

「まるで実体験のような重みのある言葉」


「安心してください。コーハイちゃんはセンパイ一筋ですから」

「やっぱり愛が重いんだよなぁ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

何の変哲もない会話劇 いずも @tizumo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ