七夕

「もーいーくつねーるーとー」

「そのネタはもういい」


「ではここで、コーハイちゃんによるコーハイちゃんのためのファッションチェ~ック!」

「唐突だな」


「今回は七夕ということで、天女っぽいコスをセルフチェックです」

「それただ見せたいだけじゃないの」


「だって~、年に一度ですよ! 御粧おめかししたいじゃないですか。んー、だけどこれはね~。この組み合わせ、ちょいブス~」

「自分でやったんだろ、それ」


「見てくださいよ、このストールみたいなやつ。唐代の被帛ですよ」

「あの衣装は中国の着物を参考にしてるんだっけ。日本風に言えば比礼だな」


「魚のヒレみたいで、なるほどなーって感じです」

「うん……うん?」


「あとこの源氏パイみたいな髪型、飛仙髻ひせんけいっていうんですよ。この輪っかの間で魚が遊んでいたとも言われてます」

「うん? ……うん?」


「ああ、間違えました。これ織姫じゃなくて乙姫のコスでした」

「わかりにくいボケをするんじゃない」


「天の川で一晩過ごしている間に地上では十年が経過していたのでした……」

「ウラシマ効果か。乙姫に引っ張られてんじゃねえ」



「さて、いつもの豆知識コーナーいきますね」

「もはや様式美と化したな」


「でも気になりません? なんで『七夕』って書いて『たなばた』って読むのか」

「言われてみれば確かに」


「私、気になります」

「こっちもいい感じに気になってるんだからさっさと答えろ」


「元々は中国の七夕しちせきが由来となっています」

「しちせき……なるほど、読める」


「日本にも七夕の原型となる伝承があり、機織り機のことを棚機たなばたと呼んでいたそうです」

「たなばた……つまり『七夕しちせき』の漢字に『棚機たなばた』の読みを当てたわけか」


「ええ。七夕たなばたってのは完全なる当て字だったんです」

「へー。へー。へー」


「ただ賢くなっただけですね」

「たまにはいいだろ」



「ところで最近は短冊に書く願い事が適当過ぎると問題になってます。市民の皆さん、あまりにも雑です」

「ごみの分別みたいに言うな」


「もっと真剣に書いてください。織姫からのお願いですっ」

「そういうお前は何を願――いや」


「も・ち・ろ・ん・先輩と両想いになれますように」

「くそっ、わかってたさ。わかってたんだよその返しは、くっ」


「それからロフトと庭付きの一戸建てに暮らして子供は男の子が二人と女の子が一人で休日はキャンピングカーで湖畔にキャンプに出かけて都会の喧騒を離れて大自然の中精一杯幸せを噛み締めますように」

「愛が重い!」


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