こどもの日
「もうすぐこどもの日ですね」
「そうだな」
「私、もう子供じゃありません!」
「なんだいきなり。とりあえずかしわ餅持ってきたけど食べるか?」
「わぁいおもち。コーハイちゃん、かしわ餅大好き」
「子供じゃねぇか」
「と、いうわけでこどもの日と言えば鯉のぼりですね」
「そうだな」(ツッコミ放棄)
「あ、待ってください。コーハイちゃんはもちろんセンパイのことも大好きですよ」
「そうだな」(難聴)
「くっ、こうなっては持ち前の豆知識を活かしてセンパイの気を引くしかない……!」
「為になったことないけどな、それ」
「鯉のぼりの起源は、かの有名なドラクロワの『民衆を導く自由の女神』に描かれた御旗がきっかけと言われています」
「堂々と嘘をつくな。もうエイプリルフールは終わったぞ」
「鯉のぼりと言えば下半身を突っ込んで人魚姫ごっことかやりましたよね」
「よね、と言われても俺は男だからそんな遊びはやったことないけどな」
「というわけでマーメイドコスです。残念ながら貝の水着ではありませんが」
「あれ絶対痛いと思うんだよ」
「安心してください、(下も)履いてますよ」
「良かった」
「センパイの場合は半魚人ごっこになるんですね」
「マーマンとマーメイドって言うと幻想的なのに、日本語にした途端怪物感が押し寄せてくるな」
「後は風の強い日に鯉を竿から放して尾崎豊ごっこですね。早く自由になりたかったんだねって」
「この支配からの卒業ってやかましいわ」
「風にあそばれて」
「這い上がるどころか遠い空の上じゃねぇか」
「もしくは犬井ヒロシごっこですかね」
「いずれにしてもネタが古い」
「まぁ一番好きなのは巨大錦鯉のキヌガサくんなんですけどね」
「一番地味なガンマ団の刺客!」
「後は兜とか飾るんでしたっけ」
「そうだな。五月人形と言えば鎧兜だ」
「そういえば新聞紙で兜作ったりしてましたねー」
「……そうだな」
「後は新聞紙筒状に丸めて剣にしたりとかー」
「……」
「その格好で外に出てって勇者ごっことかー」
「やめろ」
「それを近所のおばちゃんに見られて『あら格好いいわね』なんて言われて調子に乗って、いつも吠えられるシベリアンハスキーの所に意気揚々と勇者気分で乗り込んだら返り討ちにあって泣いて帰ってきたりー」
「おいばかやめろ。――や・め・ろ!」
「おっと、センパイのトラウマを呼び覚ましてしまったようなのでここまでにしときましょうか」
「新聞で犬を殴ってはいけません。ダメ、ゼッタイ」
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