第34話 異世界買い物8

「いいか? 屑ども。魔女の世界ではな、姉という存在は絶対なんだよ。姉様の言う事は絶対。間違ってても、間違ってなくてもどっちでも良いんだよ。姉様が私であり、私と言う存在は姉様の存在によって成り立っている。妹は姉の為に身体を捧げ、姉は妹の為に心臓を捧げる。妹は姉の為に死に、姉は妹の為に生きる。姉妹とはそう言うルールなんだよ。規約なんだよ。で? お前は?」


 小姉様が顔が半分になった僕の頭を掴み睨み付ける。

 小姉様……。

 小姉様は体積に比例して少々脳味噌が小さいさく、ご理解頂けないかと思いますが、粉々になって鼻までしか構築できてない僕には口が無いんですよ?


「アンタ、その目、私のことクソ馬鹿にしてんな? あ? いい度胸だな? もう一発雷パンチ喰らっとくか?」

「小姉様、もうやめて! 子供も見てるんだよ!?」

「私、まだマジな事されてたって今凄く実感してる」

「水責めも十分拷問だ。改めなくて良い」

「煩いっ! 家庭の問題だからな!? これ! 私はお前らに騒ぎ起こすんじゃねぇって言ったでしょ!? お姉ちゃんの言う事聞けないわけ!? ぶっ殺すわよ!?」

「もう三回ぐらいぶっ殺してるじゃん!」

「私の回復魔法もあんなにキモいの?」

「いや、あれは再構築だからお前の魔法とは違うから安心するといい。キモいのはスー一人だ」

「はぁ? うちの末妹はキモくねぇし、顔だけは美人だろうが!」

「小姉様……、そんなに僕の事……」


 漸く喉元まで再生できた僕は小姉様を見る。

 何だかんだ言って、小姉様ったら僕のこと……。


「姉様の妹ならブスでも何でも美人に決まってんだろ? 姉様のセンス否定する奴は私が焼き払う」

「大まかな分類的には否定的な所が多いでしょうに」


 大姉様のセンスは大半がヤバいでしょ。


「それよりも、アンタね。マジで何してんの?」

「いや、僕も頑張ったんですよ? だけど、事情がありまして」

「あのヒーラーお嬢ちゃんを助けようとしただけの話でしょ? もっとやり方あるに決まってるでしょ! 呪い迄出してお前は、もー! 本当に握り潰すわよ?」

「散々木っ端微塵になったのに!? 最善じゃないですか! 態々反転空間作って、騒ぎにならない様に気を揉んで! 満点ですよ! これ!」

「人間相手に何やってんの? 頭ついてるの? 大体、契約消せば終わりでしょ? こんなもん、呪いの魔女なら食えるだろ」


 契約魔法は、謂わば呪いである。


「え、食えんの?」

「人の呪いぐらい、この魔女は何でも食って自分の呪いの糧に出来んの」

「マジで!? 何でスー君食わなかったんだよ!」

「え? お昼ご飯食べた後なので。人の呪い食べたらカロリーオーバーになるじゃないですか」


 ランチ重めだったし。


「クズっ! これはクズっ!」

「なっ! エル君は僕が太ってもいいと言うんですか!? 太った僕でも美しく愛せると言うんですか!?」

「それはちょっと怪しいけど、そもそも美しく愛した記憶もないけど、いや、そんな問題じゃなくね!? 俺達の努力は!? 今回は流石にスー君が悪いわー。庇えねぇわ」

「貴方達の分まで小姉様に殺されたのに!?」

「馬鹿ばっかね。はい、エルはこれ持ってて、仲良く喧嘩してなさい。で、これが件のヒーラーのお嬢さん?」

「え、は、はい」

「ふーん。初めまして。私は、あの馬鹿の姉の稲妻の魔女よ。これから、貴女はどうするの?」

「え、えっと。魔王様の生贄になります!」

「マジで?」

「ああ。余が引き取って生贄として暮らしてもらう。小姉でも、邪魔立てするならば……」

「殺すって? 冗談でしょ。末妹より雑魚に私が負けるわけないでしょ? それに、邪魔なんてしないわよ。勇者に渡れば魔女もそれなりに面倒ごとに巻き込まれるし、アンタの生贄になるならそれでいいわ」

「本当か?」

「ええ。それに、私も今すげぇ腹立ってるから丁度いいわよ。人間の癖に無駄な時間とりやがってあのクソギルド。末妹が暴れなきゃ私が全員塵に戻してたわ。とは言え、流石に人が消えるのも魔女を見たのも問題なのよね。仕方がないなー」


 小姉様が背伸びをし、手を広げる。


「まあ、騒ぎが外に漏れない様に反転した所は褒めてあげてもいいわ。お陰で外に漏れるもんもないし。記憶の改竄と破損回復は今回のご褒美として私がやってあげる。次は無いから覚えておけよ?」


 小姉様が手を叩くと、何本もの稲妻がこの狭い反転世界を縦横無尽に駆け巡り男達に襲いかかる。


「うわぁぁぁぁっ!」


 何重にも男達の悲鳴が聞こえた。

 酷い雑音だ。


「スー君、魔女って何でも出来んの?」

「小姉様は結構オールマイティーに何事もされますね。でも、基本は稲妻で出来る事に限るかと思うんですけど」

「回復とかも?」

「低電波治療とかですかね?」

「いや、それで手足くっ付くか?」

「さあ? 僕は吹っ飛ばされる系専門の電気しか受けてないんで」

「スー君だけ当たり強すぎだろ。スー君の回復も時間かかるなー。……これ、フルチンで治るん?」

「これだけ木っ端微塵にされてた、回復だって遅くなりますよ。それにこの服大姉様が作った服ですよ? そんな程度で無くならないですって」

「良かった。俺が持ってる間フルチンだったら凄く気まずい。めっちゃ気まずい。てか、身体再生してきたらどう持つのが正解なの? これ」

「ははは。持ちやすい方法でどうぞ。しかし、そこまで言われると僕も心配になってくるじゃないですか。フルチンになってたらエル君服貸してくださいね」

「ベルト全部貸してやるわ」

「それで僕のエリートが隠れるとでも?」

「いや、余裕で隠れるっしょ。なんなら余りで乳首も隠せれるって」

「じゃあ、乳首もついでに隠して魔法学校のローブ羽織って帰りますね」

「笑い死ぬわ。でも、……あー。そうだな。いいんじゃない?」

「何ですか。突然投げやりやめて下さいよ。僕一人馬鹿みたいじゃないですか」

「いや、お前より馬鹿な奴がいるから安心してくれ」


 エル君が目を染める。


「本当、馬鹿だよ。例外なく、男はな」



次回更新は7日20時となります。お楽しみに!

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