第24話 魔王のマー君の魔王スクール事情

「魔法学校に通う?」

「ええ。少し先になるそうですが、小姉様が今日願書を出しに」

「へー。そっか。じゃあ、中々会えなくなるんだな」

「エルさん……」

「いや、めでたい事だし、お祝いするべき事だとはわかるけどさ。これだけ仲良くなってくると、暫くだけだと思っても会えなくなるのは寂しいって思っちゃってさ」

「エルさん、あの」

「俺も、渡だから友達とかいなかったんだけど、スー君が初めての友達だしさ、こう、なんて言うか……女々しいかもしんないけど、友達に会えないかと思うと最高、なんかさ……」

「エルさん、非常に申し上げにくいですが、うちの経済状況では二週間の夏季講習が限界ですのでご安心を」


 非常に言いにくいですが。

 それが事実なもので。


「り、旅行じゃんっ!! それ!」


 まあ、気持ちは分からなくもない。




「二週間、この店を空けるのか?」

「お、マー君いらっしゃーい」

「お話聞いてらしたんですね。ええ。僕はいないですが、大姉様や小姉様が代わりに店番をしてくれる話はついてますよ。マーさんはまたお茶を?」

「ああ。いつもの分だけ頼む」

「用意しますね」

「魔法学校にスー君行くんだって」

「ふむ。魔法学校とな? 魔王学校と似た様なものか?」


 魔王にも学校あるんだ。

 いや、そう言えば末姉様の友達に魔王は数多くいるし、魔王も世界各地に存在しているからあるのは普通か……。

 常識ってものは、どの種族にも通ずるわけだし。


「魔王学校って何すんの? 拷問とか?」

「行成禍々しい質問ですね」

「拷問なぞ魔王が直々にするものではないだろうに。そうだな……、薬草の煎じ方とか習った」

「それも魔王直々にしなくね!?」

「チョイスがおかしいのでは!?」

「そうか? まあ、魔王も薬草を煎ずる時が来るかもしれんと思って余は学んだがな」

「それ城が滅んだ後の話だろ!?」

「でも、確かに拷問を学ぶ前に薬草の煎じ方を習う方が合理的ですね……。意外に魔王学校とやらも考えているな?」

「いや、城を維持できる方法もっと教えてようよ!」

「不測の事態は常に隣り合わせで起きますしね。悪い事ではないと思いますよ。僕は」

「俺が異端かよ。正論なんだけど」

「でも、楽しかったぞ。級友にも恵まれたしな」

「お? マー君、友達いたの? 意外」

「こら。エルさん。真実を言うと失礼に値する場合があるんですよ? 今みたいに」


 僕も日々進化していますからね。

 姉様達に本当のことを言っていい時といけない時がいると口酸っぱく言われていますから。

 既に優秀な僕はその規則を自分のものに出来ているんですよ。


「いや、それ、スー君が一番失礼でしょ?」

「な、心外っ!」

「流石に余でも学童に倣えば友ぐらい出来る。お互い命をかけて試練を潜り抜けた同士とも呼べる仲だ」

「未だに交友とかあんの? 魔王同士仲良いとか悪いとかあるんだ。魔王って、一匹狼っぽいと思ってたわ。俺」

「僕もそのイメージですね。末姉様の魔王様同士も特に仲がいいとかなさそうに見えましたし」

「ふむ。無関心な魔王は確かに多いが様々な魔王がいるからな。他の魔王と交友を深める魔王もいるとは思うぞ?」

「マー君は?」

「余か? 余は……、スーとエルがいるからな。交友を深める魔王側かもしれん」


 僕とエルさんはちょっと照れ臭そうに笑う。

 最近仲良くなったマーさんが、友達と言ってくれるだなんて。

 これはこれで照れますね。


「僕、友達いた事が無かったんですが、まさか魔女になって二人も友達が出来るとは思いませんでしたよ」

「俺も。渡の仕事してると、友達なんて夢のまた夢だと思ってたけど、まさか魔女と魔王の友達が出るなんでな」

「余もだ。エルフと魔女とは随分と面白い。特にエルフはエルフしか群れぬと思っていたが、違う様だ」

「いや、エルフはエルフ同士でしか群れねぇよ。そういう種族だからな。他所と仲良く出来るのははぐれエルフぐらいじゃね?」

「経験値が高そうなエルフがいるんですね」

「前言ってたエルフの世界に馴染めずに外に出てる奴らな。経験値は多分低いぞ。そかの種族より弱いから」

「余の城にもエルフはいるぞ。余り口数は少ないが、仕事はしっかりとこなすな」

「はぐれエルフの特徴だな。フレンドリーな奴よりも、無口で仕事を淡々とこなす奴が多い。逆にダークエルフはフレンドリーな奴の方が多い」

「ダークエルフ? 褐色の肌なんです?」


 よく漫画やゲームで見る事がある悪いエルフの事か?


「ああ、そう言う奴も多いよ。大抵ダークエルフはエルフと他種族の混血だから、オークとかと配合するとそうなるんだ。後は、エルフの世界で南の方に住んでる奴らとか。あそこは森よりも砂漠地帯だからな。適した肌の色になるんだろうよ」

「へー。エルフも奥が深いんですね」

「人間も色々いるじゃん。それと一緒」

「魔王も色々といるぞ?」

「マーさんはドラゴンですもんね」

「え? マー君ドラゴンなの? めっちゃレアじゃん」

「レアなんです?」

「ドラゴンなんてそこら辺にいないからな。めっちゃレア種族」

「確かに珍しいとよく言われる」

「他の友達の魔王はどんな種族なんだ? 今も遊んだりしてんの?」

「いや、全員土の中だからな。遊べはしないが、種族は何だっかな? 昔すぎて余り覚えておらんな」


 土?


「土って……」

「つまり……?」

「魔王学校は卒業式として学年全員で殺し合うのだ。最後の一人残った者が魔王となる。余の時代は余が魔王故、他の魔王達は全員土の中なのだ」


 ああ。成る程。


「一番魔王っぽい話だなって思った自分の感性を疑いたい……」

「僕もです……」


 倫理観が確実に狂ってきている……っ!




 更新予定日に更新できずに申し訳ないです。

 引き続き話を楽しんでいただけたら幸いです。

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