第12話 小姉様と可愛い妹達

「成る程。小姉様……。貴女の強さが分かりましたよ」


 僕は眼鏡をくいっと上げ、電気を全身に纏わせている小姉様を見る。


「貴女は、雷の魔女と呼ばれているが、実際は音速、いや。光速よりも早いスピードで攻撃を繰り出すわけだ」

「あんた……」

「貴女の強さの秘密がわかった今、まだ続きをしますか?」

「良くも、そんな余裕があるわね」


 ギリリと歯を噛み締めながら、小姉様が僕をみら見つけ口を開いた。


「馬鹿なの!? 壁まで吹き飛ばされて、天地逆になって格好つける事じゃないでしょ!? しかも、別に光速より早くないし、避けられないなら口開くんじゃないっ!」

「ちょっと! 私と小姉様じゃ、勝てないから末妹様も手伝ってよっ!」

「いや、僕まだ魔法何も使えませんし。戦力外ですので解説でもしましょうか? かなりの実力がありますよ? 解説なら」

「私もそっちがいいよ!」

「はぁ!? ちょっと、妹っ! 私よりもあの馬鹿の方がいいの!?」

「人徳ですかね? 有り余っている物で」

「一欠片もない奴がでかい口開くなっ! 愚妹共っ、其処に正座しなさーいっ!」




「はぁ!? お互いのヤバい柄のパンツ見せ合ってたって、子供じゃないでしょ!? バッカじゃないの!?」


 ツインテールを揺らしながら、正座をする僕たち二人の前に小姉様が仁王立ちで声を荒げる。


「男女でこんな夜中に……」

「朝ですよ」

「朝だよ」

「うっさい! 私はまだ寝てる時間だもんっ!」


 ニートの朝は遅いからな。


「あのねっ! ここは格式高い終焉の魔女の城よ!? あんた達も終焉の魔女なんだから節度を持ちなさいよっ! 大体、パンツの柄は姉様が私達に一番似合う柄を作って下さってるのよ。感謝しずに笑うなんて言語道断っ!」

「笑ってないです。困ってたんです」

「うん。笑ってない。引いてただけ」

「同じっ! 次、口答えしたら私の光速ビンタで吹き飛ばすからねっ!?」

「そ、そんなっ! そんな事をされたらか弱い僕は可憐な星になって夜空から姉様達を見守るしか出なくなってしまいますよ! 力士姉様っ!」

「力士姉様、張り手はやめてっ!」

「愚妹共は何でそんなに仲良くなってんのっ!? あと、誰が力士姉様だっ!」


 仲良くって……。


「当たり前じゃないですか。僕と末姉様は姉妹ですからね……」

「末妹様……」

「いや、私もあんた達と同じで姉妹ですけどっ!?」


 小姉様は、はぁとため息を吐くと僕の襟を引っ張り上げる。


「大体、私はまだあんたを認めてないから。わざわざ終焉の魔女と知ってこの島を選んだあんた、何を企んでるのか知らないけど、姉様や妹に何かする気なら私が絶対に許さないからな」

「僕はただ、とある世界を滅ぼして欲しいだけですよ。お願いする事は出来ないらしいので、方法を会得し自分でするだけが目的ですので」

「本当かどうか怪しいのよ。大体、男で魔女なんて有り得ない。しかも、姉様が認めるだなんて……。絶対に、他の目的があるでしょ?」

「貴女に信じていただかなくても結構。第一、この家に他の目的なんてないでしょう?」


 生活レベル的に苦行の域だろ。


「あ、あるでしょ!? 女の子しかいないのよ!?」

「は? まあ、女性しかいないのは確かにそうですが、それが何か?」

「末妹様、末妹様。小姉様、耳も年増なんだよ」


 末姉様が、僕に耳打ちをしてくる。


「それは?」

「ほら、男女がいると絶対に恋愛的なものに繋げちゃうの」

「え? 今時の小学生でもそんな事ないでしょうに」

「小姉様、私と一緒でニートだから免疫も知識も乏しいから」

「でも、それなりに歳食った魔女でしょ?」

「歳食った魔女だからこそ、其処らへんの柔軟さがないんだって」

「あー。高年齢ニートの弊害ですね」

「あんた達、小声で話すなら私に聞かれないぐらいのボリュームに出来ないわけっ!? 大体、男が一人よ!? なるでしょ!? そんな感じに!」

「いや、ならないですよ。普通に」

「男と女がいるから無条件に恋愛とかないよ? 小姉様」

「なるのっ! そう言うの見てきたのっ! 私はっ!」

「偏った漫画の読みすぎですよ」

「大体、末妹様だよ? まず、女の子目当てに入って来た人とかは自分の事可愛いって復唱させないと思うな」

「え?」


 事実を復唱させただけなのに?


「僕が可愛い事実を口に出させるのって、おかしい事です?」

「まあ、普通の人はしないと思う」

「あんた、本当に何やってんの……?」

「美人の方が良かったですか?」

「いや、美人だし可愛いとも思うけど、そう言うのって、人に言わせる物じゃないんだよ? 強制しちゃダメだと思う」

「何と!」


 真実なのに!?


「何と! じゃないっ! いや、マジで何してんの!? ハーレム主人公になる気あんの!?」

「いや、ないですよ。何ですかそれ」

「こんな可愛い美人三姉妹と一つ屋根の下で、何もない訳ないだろっ!」

「……一つ訂正させて下さい」

「な、何よ? 言い訳?」


 全く。

 僕は如何なる時も真実を正しく伝えるべきだと思う。


「可愛い美人四姉妹ですよ。一番の美人で可愛い僕が抜けてます。これからは気を付けて下さいよ?」


 やれやれ。とんだうっかりもの姉だ。

 未だに家族と言うデータのアップデートをされていないのだから。


「……こっち側にくる気かよっ!」

「ね? 末妹様は、末妹様以外ないから。小姉様も無駄な警戒疲れるからやめた方がいいよ」

「別の意味で妹だと思いたくない……」


 失礼だなっ!

 事実なのにっ!


次回更新は12/12の13時更新となります。お楽しみに!

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