大丈夫だ。たぶん、きっと。……うん、まあ、たぶん。
霊が憑いているかも、と聞かされた藤崎はかなりのショックを受けていた。
「課長、今日は一緒に寝てくださいね」
と言いながら、藤崎は総司の手を強く握っている。
もともとそのつもりだったはずなのに、総司は、
「……わ、わかった」
と言いながら、ちょっと引き気味になっていた。
おのれ、藤崎……と萌子は恨みがましく藤崎を見てしまう。
私に霊が憑いても、きっと課長は、一緒に寝てくれないだろうに。
藤崎めっ、と藤崎を呪ってしまったが。
よく考えたら、別に総司と一緒にいても、霊を祓ってくれるわけではない。
霊力の強い兄といた方が幾分かマシなのだろうが。
蘊蓄が多いせいか、普段職場で見ている指導力のせいか、総司の側にいるのが、もっとも安心な気がしてしまう。
しかし、最初はおのれ、藤崎、と思っていた萌子だったが、藤崎の怯えように、段々と可哀想になってきた。
ぽん、と藤崎の肩を叩き、萌子は言った。
「大丈夫だよ、藤崎。
きっと霊じゃないよ。
小さなおっさんだよ」
「……いや、待て。
それ、なにも大丈夫じゃないぞ」
と言われてしまったが。
総司が外に出していた物を片付け、寝る準備をしている間、
「藤崎、霊って優しい人に憑くらしいよ。
きっと藤崎が優しいから憑いたんだよ」
と萌子も一緒に片付けながら、藤崎を慰めていた。
なんだろう。
俺も霊を憑けたくなってきた……、
と総司はうっかり思ってしまう。
やがて、寝支度が整い、総司が、
「よし、寝るぞ。
来い、藤崎っ」
と言うと、はいっ、と犬が駆け寄る勢いで藤崎がやってきた。
可愛らしい後輩だ。
だが、見えてはいないが、霊も一緒に駆け寄ってきているのかもしれない……。
まあ、見えてないからいいんだが。
……小さなおっさんだといいな、なんとなく。
そんなことを考えながら、総司は藤崎とともにテントに入ろうとしたが、足を止め、萌子を振り返る。
こんな話題が出ての就寝だ。
萌子も心細いかもしれないと思い、声をかけてみた。
「大丈夫だ、花宮。
お前には
と言っている間も、ウリはまだすごい勢いで行ったり来たりしている。
「ついてないな……」
「……はい」
「……だが、大丈夫だ」
と言いながら、自分でも、どの辺が大丈夫なんだろうな、と思ってはいたが。
萌子の気を落ち着けさせるために、とりあえず、なにか言おうとする。
「大丈夫だ、花宮。
ダイダラボッチが空からお前を見守っているぞっ」
とりあえず、ありがたそうにそう言ってみた。
いや、ダイダラボッチがなんの役に立つのかわからないのだが……。
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