第25話 詩音とのお出かけ
高校に入学してから初めての週末を迎え、由香里と施設の皆や爺さんに挨拶をして回った夜の事、俺のスマホに一通のメッセージが届いた。
送信者は坂崎 詩音――詩音だ。
頻繁とは言わないが、2日に1回程度の割合で詩音とはメッセージのやり取りをして居た為、特に気にする事無くメッセージを読んでみると、日曜日2人きりで買い物をしたいとのこと。
これまで詩音と出会ってから一度もそう言った誘いをされた事が無かったし、一緒に出かけるにしても基本的に由香里と一緒だったから、正直驚きはした。
だが彼女のことだから何か事情があるのだろうと考え、少し……いや、かなり浮かれた気分で、詩音との買い物に向けて準備をした。
そして翌日、真司に茶化されながらも、めかし込んだ俺は詩音との待ち合わせ場所に行き……言葉を失った。
詩音は、元々10人居たら10人が振り返る様な美少女だ。
その亜麻色の髪も、優し気な瞳も、少し低めな身長も、まるで精巧に作られた人形の様に美しく、可憐だ。
だがそんな彼女が、普段よりも少し背伸びした様な格好をして、ジッと俺の事を待っているのだと思ったら、自然と胸の内が熱くなるような感覚を覚えた。
「あっ、ゴメン。詩音さん、待った?」
そう言葉にしてから、余りにも鉄板な質問をした自分に思わず恥ずかしくなるが……。
「いえ、私も今来た所です」
そう言って満開の花の様に笑う詩音の顔を見て、感じていた羞恥心は何処かへ飛んで行った。
その後、俺達は雑談をしながら詩音の従弟のプレゼント選びを無事終えると、一息つくために事前に目星をつけていた喫茶店へと入る。
店の内装はネットで見ていた通り落ち着いた雰囲気で、客層も10代と言うよりは20代以上の方が多かったが、幸い詩音は店の雰囲気を気に入ってくれたみたいだった。
「海人さん、こういったお店を良く知ってましたね? 殿方が来られる様な場所には思いませんが」
詩音が興味深げに店内を見回しているので、一緒に見てみれば客層の大半は女性で、残りはカップルだけだ。
「あー……白状すると、元々知ってたわけじゃ無くて昨日急いで調べたんだよね」
そう言いながら頬を掻くと、詩音が大きく眼を見開いた。
「昨日私が突然お声がけしたのにですか?」
「まぁね、調べたのが無駄にならなくてよかったよ」
冗談めかして笑いながら言うと、詩音が申し訳なさそうな顔をしながらペコリと頭を下げる。
「ただでさえ私のプレゼントのためにお時間をお取りしたのに、そんな事まで気を使って頂いて申し訳ありません」
「いやいや、そんな気にしなくて良いよ。俺が単純に詩音さんに少しでも楽しんで貰いたかっただけだから」
俺が早口でそうまくし立てると、詩音がコテンと首を傾げた。
「私に楽しんで欲しい……ですか?」
不思議そうな顔で問いかけられて、我ながらいらない事を言ったことに気づく。
ただまぁ、ここまで言ってしまったのなら何を言っても一緒だと思い、腹をくくった。
「昨日詩音さんから連絡貰った時、何となく切羽詰まった感じだったから、少しでもその気持ちを和らげられないかなって思ってさ」
苦笑いしながらそう言うと、詩音が再度目を大きくした後、頬を赤く染めながら俯いた。
「えっと……俺見当違いなこと言った?」
そう尋ねると、詩音が首を横に振った後に押し黙った。
そんな様子をみて、余計なお節介だったかな? そう思いながら、視線を詩音から逸らすと、丁度店員が注文していた飲み物を持ってくるところだった。
「こちら抹茶ラテになります」
「どうも」
テーブルにコップを置く店員に軽く会釈しながら、自分の近くに置かれたコップを手に取る。
「この店は抹茶ラテが美味しいって有名らしいよ」
そう言いながら実際に飲んでみれば、抹茶のほろ苦さと同時に丁度良いクリーミーさが口の中に広がった。
――うん、間違いなく美味しい
飲んだ事で笑みがこぼれた俺の様子を見て詩音も気になったのか、コップを手に取って口に含む。
「……あっ、おいしい」
「良かった」
思わずと言った様子で顔を綻ばせながら詩音が呟いたのを見て、俺が安心していると、少し照れ臭そうにした詩音からこの後の話を振られた。
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まず初めに、長らく更新が止まっていて申し訳ありませんでした。
カクヨムコン用のプロットを作成していた他、仕事が忙しかった事もあり約2週間掲載出来てませんでしたが、本日から最低隔日の更新は行っていこうと考えています。
改めてお待ちいただいた皆様、本当に申し訳ありませんでした。
同時に並行してカクヨムコン用に現代ファンタジーの投稿を開始しましたので、もし読んでも良いと言う方がいらっしゃいましたら見て頂けるだけでもとても励みになります。
〈俺は手に入れた最弱の能力で、奪われた全てを取り戻して最強になる~異能力バトルに巻き込まれた俺が手に入れたのは、ただのしゃべる刀でした〜〉
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今後ともご迷惑をおかけする事あるかと思いますが、何卒よろしくお願いします。
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