第15話
一晩休み、三人を見送ってからまだ数分・・・・・はぁーーーーーー
暇でごじゃる。
大・変・暇!
でおじゃる。
回想っぽい何かを思い浮かべても変わらぬ暇さ加減。
どうにかならんかね?
こんな思考は、今となっては危険が蔓延る外へと向かった三人に激しく失礼だし、不謹慎だし、無神経なのは自覚してるけれど、どうしても思ってしまう。
「暇だぜ」
口にも出ちゃった。
んー――――物色でもするか。
さーて!何か隠してないかなぁ〜。
なぁーーーーんもない。つっまんねぇなぁ!綾田さんよぉー!!
エロ本の一冊くらい隠しとけよぉー。男だろー。
「ハァー。へそくりみたいに隠してあったのが『コレ』とか、アイツ真面目か?思わずクソもつけちゃうくらい真面目なのか?」
缶コーヒー。
それもブラック。無糖の甘くないヤツ。
俺の感性から言えば、正気を疑いたくなるレベルの飲み物である。コレを飲み物と認めたく無い、ってくらい嫌いなんだけど・・・。
「んー、何時もは質素だし、たまに、ってか久しぶりに飲むのも
『カコッ』っと。しっかしいくらなんでも隠しすぎじゃね?5ケースもあるんだけど?」
段ボール1ケースで30本。つまり、150本。
――――――――――誰が飲むん?
「――――ウゲェ!?苦っ!!」
やっぱダメですわ!いくら久しぶりで、『今の大人な俺ならいけるんじゃね?』とか思っちゃったけど、無理なもんは無理だわ!ウゲー!!
はぁー。正直なところ、甘い物が好きな俺としては、あまーいコーヒーとかが欲しい今日この頃。
綾田の勧めで普段は水。ちょっと贅沢してお茶くらいしか飲んでない日々だったからついつい興味本意で飲んでしまったブラックコーヒー。勿体無いけどこのまま――――ポイ?
「あー。誰かにあげるか。うん、綾田本人にでも渡せば・・・まぁ、問題ないだろ。口付けちゃったけど―――男同士だし、気にせん気にせん」
・・・・・独り言多いな。俺。
あーーーーひーーーーまーーーーだーーーー。
はよ回復せんかね?【具現の力】。
一応確認。
まぁ、そだよね。変わらず減ったままだよね。
あと2、か。
別に何かしら作っても良いとは思うぐらいの数値だけど、下手に使って予想よりも消費されてしまったら問題だしなぁ。と思うと手が出せん。
爆弾作ったときに消費した『5』は、軽いトラウマである。もしかしたら何か作ったとき消費量が違うかも―――ビクビク。的な感じで、誰にも相談せずには行動できない。
――――――あれ?
ふと、思ったんだけど。
何故にこの【綾田ルーム】は綾田が離れても顕在してんの?え?その辺不思議に思わなくて、遅ればせながら疑問に思った俺って『もしかして仲間はずれにされてたんじゃね?』疑惑が持ち上がるよ?
うーん?帰ってきたら聞いてみるか?・・・・って訳で疑問も解消はしていないけれど、一旦保留。
――――――そしてまた暇になる。
プハッ!
なんかのタイトル?ってか?!
プワーッハッハッハッハッ―――はぁ―――暇。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「おーい。高田さん。起きるッスよ」
・・・・ん?――――――はっ!?
「す、すまん。寝てしまった」
「いやいや、高田さんの今の仕事は【具現の力】を回復させる事ッスからね。問題ないッスよ。もしかしたらよく寝てた方が回復早いかも知れないッスしね」
なんだコイツ。いいヤツか?普通怒らん?
「いや、流石に皆が頑張ってんのに俺だけ寝てるとか普通にいかんだろ。マジすまん」
「大丈夫ッス!あ、でもユウカちゃんには言わない方がいいかもしれないッスね」
あん?何故?普通に謝りたいんですけど?
「ユウカちゃん、今、虫の居所が悪いんッスよね・・・」
「・・・それは、なんかあったのか?外で」
朝出て行くときは、普通にいつも通りだったよな?
「あー、いや、うん。まぁ、あった、ッスね」
「なんだその途切れ途切れの言葉は?」
またなんか問題発生か?
「そのー、オイラとユウカちゃんが騒いで戦ってるからモンスターはオイラたちの所に集まってくるんッスよね。って言っても一度に集まるのは10にも満たない数ッスけど」
「まぁ、そういう作戦だったしな?ってか、本当に大丈夫だったのか?10に満たなくても続々と集まってくるだろ?あ、コレあげる」
「え?あ、ありがとッスって、ブラックコーヒー?オイラ要らないッスよ!?こんなの!」
こんなのとか言いましたよこのやろう。
気持ちは分かるけどね!
「いや、コーヒーはどうでもいいッスね。お返しします。まぁ、モンスターの数が10を越えそうだったら逃げて隠れて、ってしてたんで問題は無かったッス。んで、ユウカちゃんの不機嫌の原因ッスけど、そのモンスターたちがオイラたちに注目してる隙にあれこれ物資を持ってく連中が居たんッスよ」
あー色々とやってるんだな。やっぱ。
ってか、生存者?
生存者が居たこと自体は喜ばしい事なんだがなぁー。なんだ、その必死に戦ってる隙に何してくれてんの?普通にそれは失礼って言うか何て言うか・・・・寝てた俺が言えたもんじゃないけど。
「いやわかるんッスよ?一声でもかけたらモンスターがそっちに行っちゃうッスから、声を出さないのは正解ではあるんッス。けど・・・・ね?
オイラもそうッスけど、流石のユウカちゃんもちょっとオコな感じなんッスよねー」
「まぁ、気分的には悪いわな。控えめに言っても」
それがいくら女神気質な人でも、例え元々警察官だったとしても、人助け、救助を率先してしていたとしても・・・・人間だしね。
「それで?その虫の居所が悪い女神様は何処に?」
「あ、ナチュラルに女神様って呼んじゃうんッスね。まぁいいッスけど。
えっと、女神様は外で気分を落ち着かせてるッス。一人になりたいらしくて・・・・」
「おいおいおい、それ大丈夫なのか?多少は間引いたんだろうからいくらかは安全なんだろうが・・・危ないだろ?ちょっと声掛けて「あーホントやめた方がいいッス」―――なんで?」
いや、ホントにマジでなんで?フツーに危ないじゃん。不味いっしょ。
「いや、危なくなったらここに入って来れるとこに、ホントすぐそこにいるッスから。危ないってのは本人もわかってるッスよ。心配ご無用ッス!」
・・・・・ホントか?
ってか、なんでそんな必死に止めてんの?コイツ。ただ一人になりたいってだけだろ?――――それだけじゃないのか?身の危険なんだぞ?わかってる?
何かストレス発散してる的な何かを隠してる?
それは見られたくない!的な感じで止められてる?
わからん。わからんが――――どっちが正解だ?
ペガサスを無視し、外に出て戸崎さんを呼びに行くのが正解か?
それとも、ペガサスの話を受け入れ、外で危険に晒されたままの戸崎さんを放置するのが正解か?
わからん。
どっちもどっちだ。
どっちにしてもデメリットはあるし、メリットもある。しかも俺が思い付ける事だけではこの2つの天秤は釣り合っている。
わからん。
わからんぞぉ~!!!
「―――――何をしているんだ?このバカは」
「んだとごらぁ!?」
ん?あれ?
「あ、おかえり綾田。無事だったんだな」
「貴様の情緒はどうなっている?
おい天野。コイツ大丈夫なのか?」
「は?何?いきなり失礼なんですが?」
帰って早々に人を貶すってどういう事?お前こそ大丈夫か?
「・・・・何してるの?」
「あ、戸崎さんもおかえりなさい」
あぁ、よかった。何事もなく女神様がお帰りになられた。えーっと・・・・うん。確かになんだか、ちょっとだけ雰囲気が尖ってる?気がしないでもないようなーあるようなー?
「えーっと、まぁ、色々?あるんッスよ。うん」
「あ、そうだ。はいこれ。あげる」
「・・・・・・・・おい。貴様、何を勝手に―――」
「まぁまぁまぁまぁ、ここは一つコーヒー飲んで落ち着いて?」
「あら!コーヒー!」
おん?え?まさか戸崎さんもお好きなんですか?あ、よかったらコレを!これで間接的な感じのアレを!!――――って、もう新しいの開けてるし!?
「綾田の方は何事も無かったのか?」
「ああ。僕の方は問題ない。戸崎達は少し問題があったようだがな」
あ、あれ?何でもう知って・・・・ま、まさか、め、女神様?あ、綾田と密会的な何かをしてたのでしょうか!?えっ?マジでそんな感じの関係になってるの・・・?
「(高田さん。変な想像してそうッスけど、安心してくれていいっす。何も無いはずッスから・・・まだ)」
まだ・・・・・まだ!?まだとか言いましたか!?
全然安心できませんけど!?
「何をコソコソしている」
「なな何でも無いッスよ!」
「―――?まぁ、別にいいが。
それよりも明日の話だ。
少しばかり仕掛けの準備をしてきた。明日もう一度今日と同じ様に動いてもらう。その時僕は仕掛けを完成させ、その次の日、つまり明後日の朝ここを出発する」
「明後日、って、仕掛けがどういう物かは知らないッスけど、明日で完成するなら明日出発した方がいいんじゃないんッスか?早く帰る、ってか合流しないとオッチャン動いちゃうッスよ?」
早くユキちゃんにも会いたい俺としてはその意見に大賛成!!よく言ったぞペガサス!!
色々と問題を発生させた俺が何か言うのも変だしな。何を偉そうに提案とかしてんの?何様よ。ってなっちゃうし。代弁してくれて感謝!!
昨日の綾田への態度から考えると、『今更何?』って感じでもあるけれど、自覚って大事だと思うの。昨日のやらかしは大いに後悔しているけれど、綾田に対するアレは全く後悔してない。いや反省はしてるけどな。どっちも。
「焦って行動した結果が良くなると思うか?
昨日までの僕の考えが正にそうだった訳だが、その同じ轍を踏むのか?全く賛成できないのだが?」
あーまーそうだね?
ペガサス?もちょっと考えて物言えよ?
あ、ブーメランだ!
「そんじゃまぁ今日は大人しくお休みなさい。になるのか?」
「ああ。食事をして各々休んでくれ。それから、戸崎には悪いがこの【ルーム】は狭いトイレはあるが、部屋は一つしかない。
寝床は一緒になるが、許してくれ」
……………ハッ!?そ、そうじゃん!?
うっは!マジか!?ドキドキして来たよ!!
「何嬉しそうにしてるんッスか?」
「シャラップ、お黙り!」
「そんな事は重々承知してるわ。別に謝られる事でもないでしょ。…………それより、あの二人は何を言ってるの?」
「あの二人に関しては、気にしないで良い。ただ馬鹿なだけだ。
あー、それからトイレは狭いが身体を拭くくらいはできるだろう。備蓄にあるし、順番に拭いてくれ。
しかし、着替えは残念ながらない。抵抗があるだろうが、身体を拭いた後はまた同じ服を着るように」
へいへい。
んじゃま
「戸崎さんからでいいんじゃない?
レディーファースト、って事で」
「あら?良いの?」
「構わん」「どぞッス」
「悪わね。それじゃ、失礼して」
「あ、どうぞ、これシートです」
「ありがとう。行ってくるわ」
いってらっしゃ~い。
「さて、飯の準備でもしますかね。
綾田、どうする?飯は作るか?」
「いや、少しでも【具現の力】は残しておくべきだろう。しっかりとした食事はそれだけで精神を癒やすが、残念ながらその余裕は無いと言っていい。完全に回復した訳でもないだろ?」
そりゃ、な。
だって回復速度めっちゃ遅いし。
「んじゃそのままで・・・・カセットコンロはあるし、温めるくらいはするかな」
冷たいご飯じゃそれこそやる気が無くなるってもんだぜ。まぁ、そもそもが保存食だから冷たくても美味しいけど、やっぱ温かいってだけで色々と違うしね。
「お先ありがとー。次どうぞー」
おろ。以外にも早め?
んで次は誰が?
「天野、行ってくるといい」
「お?いいんッスか?」
「ああ」「いってら〜」
「ではでは、お言葉に甘えて」
「次は僕で構わないか?」
「どうぞ。オレは今日一歩もこの【ルーム】からも出てないしな。最悪このままでも問題ないくらいだ」
気分的にも衛生的にも勿論それはよろしくないが、ホント汗一つかいてないからね。マジでこのまま寝てもいいかな?っと思ってしまう。シートも勿体無いし。
「衛生的に考えて認められん。
それに加えて、周りが気を遣う事態に陥りかねん。受ける待遇は周りと同レベルにして置く必要がある。別に貴様に働きがない訳じゃないんだ。そうしなければ周りが遠慮したりと険悪―――とまではいかなくとも、良い雰囲気とは言えないものになりかねん」
「あいあい。了解」
口は悪いが色々と考えてくれてるんだよな。綾田も。
口には絶対出さないけど、ありがとう。
「なんだその気色悪い眼は。潰すぞ」
「――――――はぁ」
――――――――はぁ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
チクチクチクチク。
昨日に続いてお出かけ中な三人。もとい危険地帯に身を置く三人を心配しつつもやっぱり暇なのは苦痛である。
って事で、チクチクチクチク――――。
「よっしゃ、こんなもんかね?」
ふふん!どうよ!この出来映え!
――――とか、自画自賛してみたけれど、普通にカッチョ悪いわ。ペガサスの破れてたTシャツが・・・・継ぎ接ぎが目立つTシャツに変化してるわ。
だっさ。
「むぅー。やっぱし手作業は無理があった、か」
でも、どうしよう?
もうやっちゃったし・・・・・【具現の力】も1くらいなら使っても――――うん、ヨシ。怒られないよ!大丈夫だよ!って事で使っちゃおう!
「でも、普通にやったら一瞬で終わるし、暇になる。何よりも――――つまらん」
って事で、今更ながら何か他に使い方ないの?って感じで遊んで・・・じゃなくて、実験してみよう!
「何時もなら
そんな感覚は全然ないんだよねー。
んんー。
纏めてみると手懸かりが・・・・少な。
唯一の手懸かりとも言えないくらいの手懸かりが、【具現の力】、かな?ちゃんと数値が明記されてて、その数値分確かに何処かに存在していて、そんでその何かを何処かから消費してる訳だ。それをどうにか自分の意思だけで使う事が出来ないだろうか?
「・・・・むむむ―――――うむむむむむ―――――くんぬぅ!・・・・・・・」
無理だわ。
んーーーー・・・・・・・・・こういう場合、は――――
「まずは力を感じる訓練から、か?」
大抵の物語では『魔力』と呼ばれるもの。俺の場合は【具現の力】。これを俺自身が知覚するのが第一歩と言えるだろう。
一応【具現の力】は消費するもの、つまり、使用しているのだから視認出来たところで意味はない。いや意味はあるだろうけど今俺が行おうとしていることには直接は関係ないと思われる。嗅覚、聴覚、味覚も同様。
残りの触覚――――多分『俺のステータス』に表示されているんだから体内にある。体内を感じるのが触覚に分類されるのかははてさてわからんが、取り敢えず体内の隅々まで感覚を行き渡らせて――――
「取り敢えずやってみるか」
対象は直したTシャツ・・・もとい、『やっちまった』或いは『やらかした』Tシャツ。
これを・・・・・・・どうするん?もうやらかしちゃってる。出来栄えはさて置き、作業自体は終わってる。そうすると、ここから更に素材・・・・糸とか針とかも必要、なのか?
どうなんだろう?
その辺も含めての暇つぶし・・・もとい、実験って事で良いか。
「
・・・お?おぉ!
素材消費しない様に態と離れた所にしたお陰?それとも仕様?ワンチャン俺のイメージが影響?はたまたその全部が原因かな?
新たに素材は消費していない。つまり、俺の下手な裁縫カッコハテナな状態を綺麗にしてくれました。
そして、一番肝心の【具現の力】は・・・・
「うん。知ってた。さっぱりわからん!」
いや、『さっぱり』とは言えないかもしれないけれど・・・・
「辛うじて感じるのは俺の中の何かが無くなったこと、くらいだな」
ほぼ、さっぱりと言えるけれど、成果と言えなくもない?今まではそれすらも感じてなかった訳だし。
だけど、自分の感覚に集中してもこれが限界とか泣けてくるんですけど。俺が特別に鈍いから、とかなのかねぇ?違って欲しい。切実に・・・。
さて、と。
これ以上【具現の力】を勝手に消費する訳にもいかん。もしやってしまったら後でどんなお小言を頂くことになるか・・・・想像もしたくありませんね。
ま、後はまったりして皆の帰りを待つとしますかね。
暇だけどさ!
俺が望んだのは簡単お手軽なチート錬金術だったはず~何故終末世界?~ ホウセイ @ru-van
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