第14話

 ハァー。まぁ、予想通り、と言えば予想通りなんだが・・・出来ればハズレてほしい予想だった!!


「やっぱ逃げ遅れた人たち、ッスかね?」


「だろうな」


 そうなんだろうな。逃げ遅れた挙げ句にゾンビに変貌とかあの人達も浮かばれないだろう。辛かっただろうし、苦しかっただろうし、怖かった事だろう。ご冥福をお祈りします。―――が、文句も言わせてくれ!


「なんっで!こんなゾロゾロゾロゾロ居るんだよ!?」


「小声で怒鳴るとか器用ッスね?高田さん」


 うるせぇよ。んな事はどうでも良いんだよ!バカサス!


 はぁ。幸い入り口から入ってすぐに物陰があったから身を潜めることが出来たけど・・・ってか、あのゾンビたちって目、見えてるのか?―――いやまぁ、いいや。兎に角そんな入り口傍から見ても20近くの人影――ゾンビ影?が見える。しかもこの建屋は今見えてる範囲だけではない。まだまだ奥行きもあるし、更に別の階もある。確か・・・三階まであったっけ?


 つまり、俺は、今、猛烈に、後悔しておりますよ!なんでここに来ちゃったのかな!?アヤタモン!!


「あの化け物が現れる異変が起こったのは昼間だ。工場内に多くの人が居るのは当たり前、だろうな。あの日は平日。普通に働いていた人が多いだろう。が、それが何故ゾンビに変貌している?そもそもゾンビが発生したのは何時だ?最初からか?」


 知りませんよ!


「それよりも、よ。このをどうするかの方が問題よ。いくらなんでも―――数が多すぎるわ」


「そうですね。めが――戸崎さん」


「―――は?何?メガ戸崎さんって?私そんなメガなんて付けられるような事してないわよね?」


 おうふ。ゾンビ影の方に気を取られ過ぎてたわ!思わず『女神様』と言いそうになってしまいました。慌てて呼び直したら余計に酷い呼び名になってしもうた!!女神様がお怒りです!?!?


「プフッ。め、メガ戸崎さん―――ブフッ!」


「あ!こら!バカサス!?」


 ―――何してくれてんの!?


「ッ!?急いで出ろ!!気付かれた!!」


 綾田に言われるまでもない!即脱出じゃい!!


 ≪ダガガダン!!!≫


 うへっ!?ちょっと!?立て付け悪くないですか!?ちゃんと整備しとこうよ!?


「ハッ。最悪だな。急いでこの場を離れる」


 うん。賛成です。

 絶賛ドンドンバンバンとドアが向こう側から叩かれてるよ。しかも古いせいかな?ギシギシ言っとるよ?壊れちゃうかも?壁ごと!!

 うん。おっそろしいわ。早く行こうぜ?


「ご、ごめんなさいッス」


「あーまぁ、俺も悪かった・・・な。すまん」


 別に笑わせるつもりもなかったし、わざと言い間違えた訳でもないけれど、『メガ戸崎さん』は無いと思う。真面目にごめんなさい。


「なんであんな事を言ったのか、その疑問は後でじっくりと聞かせて貰うとして―――行くわよ!」


 って!?はやっ!?綾田よ、流石に置いて行くのは酷くないですか!?あっ!?そんな!?女神様まで!?待ってぇ!!


「遅い。何をしていた。早急に安全を確保できる場所を探す。それまで止まるな、走れ」


「立て籠るのか!?それよりも警察署に帰った方が・・・」


「体力が持たない。ここから警察署までそれなりに距離があっただろうが。それに走りながら警戒できるか?途中からは歩けるだろうがその頃には疲労困憊だ。警戒など出来ん。敵はあそこに居るゾンビだけじゃないんだぞ」


 あーうん、そっすね。


「元々一泊する事も視野に入れた計画、予定だったんだ。その予定だったものが確定しただけだ。わかったか?わかったならキリキリ走れ、少しでも遠くで立て籠る」


 アイアイサー!!


「それに、あそこに居たゾンビは撒けるでしょうけど途中のゴブリンとかゾンビを警察署に連れていく訳にもいかないでしょ?絶対連れて行く事になるとは言わないけど、少しでも可能性があるなら私たちは残るべき、じゃない?」


 ですね。戸崎さんの言う通りですわ。ユキちゃんにはこれ以上怖い思いも嫌な思いもしてほしくないし!


 流石女神様です!





 ◇◆◇◆◇◆◇◆





「はぁはぁ、ふぅーー。どう?」


「・・・・・・ダメだな。ゾロゾロと集まってきている。少なくとも今日はもう動けんだろう」


 ヒィヒィヒィヒィ――――し、しんどい!ちょっと貴方たち、息を整えるの、早すぎやしませんか!?俺なんてもう、吐きそうなくらいしんどいんですが!?オエッ。せ、せめてもうちょっと早くこの方法を取れば良かったのではないの!?


「いやー、相変わらず便利ッスね!綾田さんの【ルーム】!すぐ出せて、外まで様子を見れる!所謂チートって言って良いかもッス!」


「全く、想定外だ。体力が無さすぎるぞ貴様」


「う、うるしゃい・・・」


 あぁー。呂律も回らんじょ。


「そもそも男が・・・・いや、資格なしだな、僕は」


 ・・・・は?

 え?何が?


「ま、仕方ないと思うわよ?元々一般人だったみたいだし、異変が起きてからもそんなに動き回ってた訳でもない。どちらかと言えばペガサスと綾田くんの体力の方が不思議よ?なんでそんなに平気そうなの?」


 全くだよ!綾田は、まぁ、鍛えてる的な事を言ってたからわからんくはないけどさ?ペガサス!君はどちらかと言えばこっち側の人間じゃないのかい!?


「―――そう、だな。僕は普段から鍛えていたからな。少々体力を使ったところでそこの――――座り込んでいる奴の様にはならないな」


「オイラは別に鍛えてた訳じゃないッスし、部活なんかもやってないッスけど、体動かすのは嫌いじゃなかったッスからね!適度に運動はしてた方じゃないッスかね?ユウカちゃんの言う『異変』の起こった後は変なチカラに目覚めてから動き回ってたッスからね!」


 ちくしょう!味方は居なかった!


「それにしても不味い、わよね?

 外には大量のゾンビとモンスターで危険地帯とかしているし、そんな所で籠ることになるなんて・・・」


 あー。うん。マジごめんなさい。


「このままだと明日も身動き出来ないかもしれないわね。どうしたら・・・」


「んー。オイラが掃除してくるのはどうッスか?」


「数が多すぎるわよバカ。貴方一人でどうにか出来る訳ないでしょ」


「戸崎の言う通りだ。せめて全員でやるべき・・・なんだが・・・そこの―――いや、僕も含めて二人は戦力になれない。

 相手の数が数だ。全員で動くべきなんだが、それも無理がある」


 いや、ほんとごめんなさい!

 せめて自衛くらい出来ればと自分自身思うんですが、どうにもこうにも、ね?ってか、綾田は自衛できるじゃねぇの?どしたの?何か口調が―――ヨワヨワ?


「仕方ないわよ。綾田くん」


 や、優しい!それでこそ女神様です!!


「―――剛田には僕たちが帰ってこない場合の事も話してはある、が―――」


 え?そんな話してんの?


「綾田。因みにそれはどんな内容?」


「―――先ずは、僕たちが帰ってこないとしても変に探すな。という事。

 帰りが遅れる可能性がない訳じゃない。どちらかと言えば、予定通りの方が珍しい。だから数日は待つ様にとは言ってある。が、その先は僕たちはもう死んだものとして扱い行動するように言い含めてある。具体的には他の生存者、避難所になっている所をなんとか探しだし、合流するように言って、ある」


 おぉふ。マジか。って事は・・・


「猶予は数日、か?」


「距離的な事を考えるならば明日には帰らないとね?とは言えトラブルが起きたときの事を考えて一泊の予定があったから、明後日、遅くてもその次の日くらいには帰らないと剛田警部も動くでしょうね。

 わたしたちは死んだものとして」


 あー、いやー、マジか・・・。


「ホント、申し訳なかったです」

「お、オイラも!ホントにごめんなさいッス!!」


「そうよ!そう言えばそもそも『メガ戸崎さん』って何よ?そこのところちゃんと説明してくれるかしら?高田くん?」


「・・・・・・・い、言いづらい―――」


 言える訳無いっしょ!?『貴方の事を心の中で女神様と呼んでる』なんて!!


「高田くん?それじゃ納得出来ないわよ?」


 ヒッ!こ、怖い!!


「ゆ、ユウカちゃん、ちょ、ちょっと落ち着くッス。ユウカちゃんは女の人ッスからね。対して高田さんは男ッス。言いづらい事の1つや2つあるッスよ。それはわかるッスよね?」


 おろ?まさかのバカサスからの助け船。こう言っては大変失礼だし、折角助けようとしてくれてるペガサスをバカにするようなものだけど・・・ちょー以外っすわ。


「・・・まぁ、そう、ね。わたしだって言いたくないことはあるし・・・。じゃあペガサス、先ずは貴方が高田くんから話を聞いてきなさい。貴方がそれはわたしには言えないと判断したのなら、仕方ないわ。今回は水に流してあげる。それで良いわよね?高田くん」


「・・・ま、まぁ、戸崎さんに直接言うよりか・・・マシ?」


 かな?


「なに?まさか、これでもまだ不満なの?」


「ヒッ!?いえ!滅相もありません!!」


 いやー、なんだろうなー、戸崎さんから俺に対しての評価?株?好感度?的な何かが、想いが、ドンドンと低下していってるよね。あー。マジ萎える。いや、全部俺が悪いんですけどね?


 仕方なし。笑われる可能性大。なんだが、仕方なし。だが!仕方ないと言っても笑ったら殴る!


「ペガサス。こっちこっち」


 取り敢えず部屋の隅へとペガサスを手招き。ん、邪魔だなぁこの物資。いや、俺たちの生命線なんだから邪険にするのは間違ってるんだけど・・・。


「では早速、何故『メガ』なんて付けちゃったんッスか?」


「・・・・・・・・め、めが・・・」


「え?」


 クゥーーー!!言いづらい!!!


「めが、み、様と心で呼んでて・・・」


「はい?・・・・・・・・ブフッ!」


 鉄拳制裁!!!!


「アイタッ!?ななななんッスか!?」


「俺の嬉恥ずかしピュアピュアな想いを笑ったからじゃ!」


「い、いや、それは・・・すいませんッス・・・。で、でも、あのユウカちゃんが・・・めが、め、めが・・・ブフッ!」


 鉄拳制裁!!!!!パート2!!!!!


「アイタッ!?!?ちょ!ホント痛いッス!やめてッス!!!」


「笑うんじゃねぇよ」


「あ、はい・・・・・ッス」


「ねぇ?ちょっとなんか雲行きが怪しいんだけど?」


 ッハ!女神様がお待ちになられていたのをすっかり忘れてしもうてた!さぁ!ペガサス!今すぐ問題ないと報告するのだ!!


「んー。問題はない、と思うッス。ユウカちゃんがどう思うかはわかんないッスけど、同じ男としては理解できたッス。それからなんでユウカちゃんには話せないのかも理解できたッス。

 ユウカちゃん。今回は見逃すことをお勧めするッス」


 よぉうし。良くやったぞ、ペガサス。


「むむぅ~。今一納得できないのよねぇ」


「えっと、ど、どの辺が?」


 納得してくれないと困るんですが!?


「ん~。人選ミスね。ペガサス、チェンジで」


「まさかのオイラの信用問題!?」


「綾田くん。悪いんだけどちょっと話し聞いて来てくれないかしら?」


「―――僕が、か?」


「っそ」


 ええええええええ。綾田ぁぁぁぁぁぁぁ?


「あの~。綾田には話しにくいんですがそれは?」


「じゃあ私に直接話す?」

「綾田でお願いします!」


 意見申せる立場になかった!


「――――手短に、な」


 あったり前よ!任せろ!ってか――――?ホントどうした?何か様子が?ってか顔付きも・・・?いや、取り敢えず俺の問題が先だな。


「ワイ、心で、女神様」


「――――貴様、やはりバカだろ?」


 あれ?元に戻った―――訳じゃないみたいだな。落ち込んでる?けど。え?いきなりの罵倒ってどう言うことですか?ありがたくないんですが?ってか、今のでわかったのか?いや―――わかりやすい、か?


「戸崎、コイツはただバカだっただけだ。問題ない。あんたをバカにしていた訳でも、悪口を言っていた訳でもない。逆に誉め言葉だな。何せ、あんたをめが「ちょーっと!!」・・・なんだ?」


 いやなんだ?じゃねぇよ!?なにサラッとカミングアウトしようとしてんのさ!!落ち込んでんじゃないのかよ!?


「戸崎さんに直接言いづらいからお前に言ったのにカミングアウトしたら意味ないでしょ!?」


「言いづらいから僕が代わりに言ってるんだが?」


 マッジふざけんじゃねぇ!


「バッカ!お前ホントバッカ!!」


「いい度胸だ。戸崎、コイツはお前の事を「ごーめんなさい!!」・・・」


 やはりコイツに言ったのは間違いだったか・・・。


「はぁ・・・・まぁいいわ。何となく大した事じゃないのはわかったし、この話はここまでで。

 さて、私の個人的な思いは解消・・・した訳じゃないけれど、次の話。今後の話をしましょう」


「先ずは状況確認、かな?」


「えーっと。まず1つ、現在地は問題なく普通に歩いていけば・・・二時間くらい?で警察署に帰り着く地点。であってるわよね?」


 目的地だった鉄工所から警察署におおよそ1/3程度帰ってきたはず。走って走って隠れて走って隠れて走って走ってたった1/3。・・・・・泣きたい。


「だいたいそれくらいだと思います。今の状態だとそんな時間では辿り着けないとは思いますけど。

 鉄工所へと行くときには比較的モンスターもゾンビも少なかったし、順調に進めた事もあって所要時間はそれほど掛からなかった。でも帰りの状況は最悪・・・ですよね?行きに掛かった時間よりもっと時間掛かる・・・ですよね?下手すれば2倍くらい必要になってくるかな?」


「そうね。それにこのままただ帰るだけだと警察署にモンスター達を連れて帰る事になっちゃうかもしれないわ。帰るのに掛かってくる時間も色々と考慮しなきゃいけないでしょうけど、モンスターへの対策も考えないと今後が危ういと思うわ」


 ぐんぬぅ。


「取り敢えず少しでも減らすってのはどうッスか?」


「モンスターたちがいったいどれだけ居るのかわかんないからなぁ・・・それって有効か?とは言っても何もしないよりはマシかなぁ?」


「そうね。何もしないよりはやった方がいい。でしょうけど・・・・」


 ま、当然皆の目線、と言うか意識は綾田そっちに行くよねー。


 ホントどうした?さっきからだんまりで。何か道端に落ちてた物でも食ったか?ポンポン痛いんか?


 戸崎さんは気遣わしげな視線を(美しい)。

 ペガサスは不思議そうな視線を(バカそう)。


 綾田本人は何を考えているのか、視線は下。俺からは顔が見えるか見えないかくらい下だ。


 ハァ。取り敢えず話を聞く前に、俺が考えれることは考えとくかな?


 とりま、物資はある。食料は手軽に食べれる、所謂保存食がこの綾田の【ルーム】、名付けて【綾田ルーム】に保管してあったから問題はない。それこそ四人分なら一週間以上。もっと言うなら一月近く持つと思われる。水も同様。


 それ以外にも身嗜みを整える為のアメニティグッズや体を拭くための汗ふきシートも備えてある。


 この【綾田ルーム】。

 シャワーや風呂と言ったものはないけれど、何故かトイレだけはある。

 このトイレだけでも綾田の功績はデカイ。何せ普通に水洗だし。崩壊前の世界と同じ様に用を足せるのはすんばらしいことだ。

 しかも掃除要らずの所がなお最高。


 そんな訳で生活するのは別段すぐさま困る事はない。心配なのは武器や防具関係。身を守るために必要な物たち。今日明日は現状でも問題はない。戸崎さんの現武器はバット。予備にこの【ルーム】に2本備えてある。

 ペガサスの刀はペガサスが持ってる二振りだけ。砥石は5個。

 服、防具関係も針や糸、当布なんかもある。


 在庫に不備はない。と思う。


 だけど。相手するかもしれない数が尋常じゃない。消耗するスピードもめちゃくちゃ早いだろう。


 さて・・・おーい。そろそろいいかーい?


「おい、綾田。俺の【具現の力】は回復しきれてないぞ?どうする?すぐに必要じゃないだろうが、この先どう動いたとしても装備類の整備は必要だろ?」


「―――正直、後悔しているところだ。【具現の力】が回復するまでの時間を有効活用するために取った行動だったんだが・・・化け物の巣を対処する事ばかり考えていた。焦り、があったんだろうな」


 どうしたどうした?え?マジで落ち込んでたのか?ビックリなんだけど?

 落ち込むなんて全っ然綾田らしくないぞ。いつもみたいに尊大に『問題ない』とか言わんのか?『それくらい考慮してある』とか言われても不思議に思わないんだが?


 ―――――とは言え


「あー珍しく落ち込んでいるみたいだが、さっさと解決策を提示してくれ。お前が考えてくれんと不安しかない」


 普段は憎まれ口を叩くか、冗談みたいなやりとりしかしない綾田と俺だけど、そんな普段のおちゃらけた感じは俺にとってそれは信頼の証と言っても過言じゃない。


 絶対に口にはしないけどな!!


 そんな大して優秀な訳でもないのにひねくれて人を素直に評価出来ない俺が、普通に『綾田はすごいヤツ』だと自然と思えてしまう。それはコイツがとんでもなく優秀だと言うことだろう。

 だから、ペガサスもおっさんも、そして、戸崎さんも綾田を頼るし信頼している。


 だから、さっさと吐け。作戦を!!


「それに、この計画を提示したのは確かに綾田だけど、それに反対する事なく意見を出し、最終的に計画を実行するのに賛成したのは俺たち全員だ。お前が一人で落ち込まれても、な?正直『何調子のってんの?』って感じだからさ?やめてくれる?」


 腹立つよね?

 何主人公ぶって一人で責任感じてんの?ぶん殴るよ?


「それからこの状況に追いやった原因はどう考えても綾田の責任じゃないだろ。後悔して落ち込むべきは俺のはずなんだけど?」


 いや、本当、ごめんなさいよ。


「そう、ね。正直言葉遣いはもう少し選びなさい、とは思うけれど、私も高田くんの意見に賛成よ」


 あ、あれ?戸崎さん?それって、俺の責任だと肯定したってことですかね?・・・・・いや、実際そうだから何も言えないんですけど、ね?戸崎さんに言われるのは、ちょっと俺的にダメージがデカイんだよね。


「そッスね。オイラは特に意見とか出せなかったッスけど、賛成したのは確かッス。こんな状況になったのは綾田さん所為じゃないッスよ!」


 ぺ、ペガサス?お前もか?


「いや、もう、本当に申し訳ない」


「?・・・・あっ」「?・・・・?」


「ち、違うのよ!?高田くん!!」

「・・・・?」


「い、いや、大丈夫、です。実際誰に一番責任があるのかと問われれば、間違いなく俺だと思うので・・・・」


 どうやら戸崎さん、ペガサスの両名は『綾田は悪くない。高田が悪い』って言いたかった訳ではない模様。でも普通にそう聞こえるよね?って気が付いた戸崎さんは慌ててる。ペガサスはそんな戸崎さんを不思議そうに見てるから、自分の言った言葉がどんな意味に聞こえるか完全には理解していないらしい。別にペガサスくんは悪くない。まだ若いし自分の言葉の意味を多角的に見るのは難しいことだしね?


「ち、ちがっ!」

「戸崎さん。大丈夫ですから。

 さて、責任は俺にあるとわかった所で、早速解決策を用意してくれ、綾田」


 多分今のままの方が話を始めやすい。戸崎さんには悪いけど、珍しく落ち込む綾田の反応は、これまた珍しく少し困った様な顔である。

 普段からそれくらい殊勝ならいいのにな!


「作戦、か―――――良いんだな?」


「良いも悪いもない。ホント綾田が頼みの綱なのは、綾田本人がわかってると思っていたんだが?」


 さっさと元に戻ってくんね?正直小っ恥ずかしいんだぞ?


「・・・・フゥ。わかった」


 ヨシ!んじゃ気を取り直して・・・・・


「たか―――貴様は役に立たん。ここで待機だ」


 ―――あっれぇ~?何故に罵倒??


「次に天野――――そして、戸崎も一緒だ。二人で周辺の化け物・・・いや、お前たちは皆『モンスター』と言うか。それらの駆除を頼みたい。くれぐれも無理をしない範囲で頼む。が、可能なら騒ぎを多くしてほしい。なるべくモンスターたちの注意をお前たち二人に向かわせてほしい」


「了解よ」「わかったッス!」


「状況の判断は戸崎に頼みたい。これ以上は危ないと思ったら撤退してくれ。天野は戸崎の指示に絶対従うことだ。それだけ守れ」


「私結構慎重だし、臆病だからわりと早めにギブアップしちゃうかもよ?いいの?」

「オイラは了解ッス!」


「問題ない。自分達の身を一番に考えてくれ」


 うん。いつも通り―――か?まだ、なんかちょっと変な気もするけど・・・。


「最後に僕。

 僕も二人と同じく外に出るが、別行動する」


 は?


「それは危ないでしょ?」


 おう。ぞうだぞ?戸崎さんの言う通りですぞ?


「そうだな。だが、いや、だからこその為の二人だ。

 二人が注意を向けられている間に僕は僕の仕事をこなす。もしもの時は身を隠し、何とか合流する。出来れば二人には僕が戻らなかった場合、戻って来るまで毎日外に出てほしい。――――頼めるか?」


 どう、なんだ?これ?


「綾田。お前は何をするつもりだ?」


「やるべき事、だ」


 だからそこに不安を感じるんだよ。だから聞いてんだよ。・・・・くそ、なんだこのもやもやと言うか違和感と言うか――――。


「お前、まさかとは思うが自棄になってる、なんて事はないだろうな?」


「フッ。そんな訳がないだろう。ちゃんと、無事にが帰れる様に動くだけだ」


「・・・そうか。のため、なんだな?」


「ああ」


 まさかとは思うが・・・。







 ―――――もしもの時は

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