第22話 浮遊霊の日常8
ついたのは、どこの山かも知らない場所。ただ、火口が見える
「うわー。私、溶岩見たの始めて。それも、こんなに近くで」
「俺たちは暑さを感じないからな。なんなら、中に入ってみたらどうだ?」
「いや、それって何も見えなくなるだけでしょ」
「ははっ、気づいたか」
どうでもいい会話をしながら、のんびりと浮遊する。たまには、こんな日もあっていいだろうと思っていた
すると、いつの間にか断熱服っぽいものを着た集団が火口へ集まっていた
「どうですか?」
「機械を設置する」
「熱と、振動ですか」
何か専門的な会話をするその集団は、何かの研究グループに見えた。聞いていて分かるところで判断すると、地震か噴火の予測らしい。研究者の何人かが、サンプルを取ったり、溶岩にセンサーらしきものを突っ込んだりしていた
すると突然、溶岩が噴出した。あっと言う間に、近くに居た研究者を飲み込む
「噴火だ! 逃げろ!」
研究者たちは、慌てて火口から離れる。しかし、溶岩にまるで意思があるかのように、噴石が研究者たちを襲った。頭に当たった者は即死。体に当たった者はうずくまり、動けるものは岩の陰に隠れる
しかし、その後、何も無いのに倒れる研究者もいた
「あー、あれはガスかな。これじゃ、誰も助からないね」
「……うん」
ダメ押しとばかりに、最後に溶岩が研究者たちの遺体を飲み込んだ
人間の怖い話 斉藤一 @majiku77
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