第2話 姫が狩られる夜
第1章 姫と騎兵隊
アメリカ西部開拓時代、かの時代その地での
男女の人口比って知ってるかい?
おおよそ 100対 2 なんだってさ
過酷な開拓地ではやっぱり女性は住みにくかったみたい。
西部では西部劇でのイメージと違って
女性は非常に大切に扱われたそうだ。
バイク乗りの世界も同じようなモン、
基本的に女日照りの若者ばっか、SNS上では
女性ライダーが溢れてるけどたぶん
あれが全部じゃないかと思う、
しかもネカマも混じってるし、
オフ会でツーリング企画したら来たのはオッサンだった
なんて救われない話もあるんだぜ、
女の子にモテるなんて思ってバイクの扉を叩いた君
残念ながら此処は女の子のいない
乾ききった西部の荒野だ
ご愁傷様
まぁ女性は車のほうが好きだよな、
髪も乱れないし化粧も崩れない、
必然的に貴重な女性ライダーはSNSで人気を集め、ちょっと
カワイイと沢山の男性ライダーが群がってちやほや
されるわけで、バイク界隈ではこういう女性ライダーを
今回はその姫にまつわるお話
僕は免許の書き換えに警察署に来ていた、そうあの事件
の時にお世話になったところ、
え、なんで警察署って思った?
だって僕ゴールド免許だもん
知らない人の為に言っておくと警察署で
お手軽更新出来るのは、5年以上違反の無い優良運転者だけ
ふふふ、僕のドヤ顔を見せられなくて残念残念
そんなわけでこの辛気臭い場所で講習を受けて、今帰る所
免許を受け取り帰ろうとすると僕は誰かに呼び止められた。
「やぁ、久しぶり、あの件では力になれなくて済まなかったね」
見覚えのある坊主頭、久木山だ、
思い出す、あの時警察が動いてくれればっと今でも思う。
だが彼のせいではないだろう、むしろ良く動いてくれた
と感謝すべきかもしれない、
「今日はどうしたの?」
「免許の書き換えですよ」
「え、ここで?君ゴールド免許なの」
「そうですよ」
「ほんとぅ?見せてよ」
久木山は手に取ろうと手を伸ばしてきたが
僕は顔の横で親指と人差し指で摘まむようにして提示
してやった、免許渡すのなんかヤダ
久木山はそれを覗き込むようにして見ると
「本当だわ、我が国の免許制度にも不備があるもんだな」
とかぬかしやがった、慣れ慣れしいんだよ、ほっとけ
「ところで君さ、黒いビックスクーターについて
何か知らない?」
たぶんこの警察署の目の前の道路で起こった銃撃事件の事を
言っているのだろう、犯人は黒いビックスクーターで逃走
していまだ捕まっていない。
「知るわけないじゃないですか」
「でも、ホラッ君ってこの辺のバイク乗りに顔効くじゃない」
「犯罪者に知り合いはいませんよ、僕、善良な市民ですよ」
「ははは、じゃぁさ最近派手に走り回ってるの知らない?」
それなら知ってる事は多いにある、が、話す気は全然ない。
が、さっきの質問に比べ久木山の目の奥はマジだ
「なにかあったんですか?」っと探りを入れる、
「ん~まぁな、誘因事故だ」
「誘因事故ってぶつからない事故ですよね?」
「そう、みちかわの辺りで無茶したバイクが車を
事故らせてそのまま逃げた、かわいそうに若い女の子が
腕を骨折しちまった。何か知らない?」
「いや、全然」こんなの本当に知らないよ
「ふ~んそうか、んじゃまたな」お前とまたはねーよ
そう思いながら僕は警察署を後にした。
このところマトモにソロツーに行けない鬱憤もあって
今日もみちかわに来てしまった、
別に用事はないが暇つぶしにはちょうどいい。
いつもより早い時間のみちかわそのせいか
顔ぶれも違うし、台数も少ない。
昼間の久木山の話もなんだか気になるしな
まっいつものようにMAX珈琲を飲んでだな っと複数の
バイクの排気音が聞こえてきた、五月蠅くはない、多種多様な
バイクの集団、10台程もいる
先頭は白いニンジャ400
あんな色は純正色にはないから全塗装したんだろう
特徴的なのは、ちょっと下品な紫色のポジションランプ、
うへぇキヨスケのR1みてぇ みちかわ向上委員会のキヨスケ
が、乗り手は女のようだ、ヘルメットから流れる髪、
いやいや、まだわからんぜ、メット取ったら長髪男子
って経験もある、だがお尻のラインがキッチリ出ている
皮パン その尻のラインは間違いなく女性だ!ブラボー
女性ライダーは僕の2台右隣に駐車してきた、次々にその隣その隣
とバイクを停めていく、統率とれてんなぁ ははっ騎兵隊かよ
女性ライダーはキチンとしたプロテクター入りジャケットを
着ている、にもかかわらず見事なプロポーション
なのが分かる。
・・・もしブサイクだったら、ずっとメットを
被ってて貰おう、うん、それがいい
しかしメットを取った彼女はプロポーションに
負けず劣らずゴージャスな美人さんだった、グレート!
ああ、姫と囲いのオフ会ツーリングってやつか
なるほどね、
踊るようにバイクを降りてくる姫 缶ジュースを買うにも
トイレに行くにも手下の騎兵隊を引き連れゾロゾロ
ゾロゾロ う~ん女の子は大好きだけど僕はああは
なれない、
僕は協調性ないもの、何より競争率凄すぎない?ムリムリ
まぁ面白いからしばし観察かな、
騎兵隊はオッサン、若者で7:3といったところ
姫と騎兵隊は和気あいあいと談笑し始めた、
まぁ和気あいあいってのは外から見たらかもしれない。
騎兵隊のバイクはSSあり、ツアラーあり、オフ車あり、
はてはアドベンチャーと統一感がない、ツーリングに、
カメラにキャンプとそれぞれ得意分野はバラバラなようだ
それぞれが自分のテリトリーに姫を引き込もうと必死だ。
最近はベテランオジサンライダー
も教える相手に飢えてんだよなぁ、
若者ライダーに何か教えようとすると
「オッサンライダーにマウントされたー」ってすぐSNS
に書かれちゃうからな、まぁ若者ライダーも
暇があったらたまにはオジサンライダーの話も
聞いてやってくれ、
そうこうしてるとキヨスケが現れた、
白い2009年型のYZF‐R1の出目金
ああっと本当にデザインが出目金みたいなんだ、
興味があったら調べてみてよ、ネットでバイクの
系譜みたいのを辿ると簡単に探せるはずさ、
女性が言うにはちょっとイケメンのキヨスケ、
その愛車のR1は本人が言うには、嘘かホントか
200馬力仕様だと、ふ~ん
僕はキヨスケがトレードマークにしている
バイク前面の紫のポジションランプが嫌いだった、アレ下品だろ
キヨスケはバイクを停めると満面の笑みで姫に近づいてゆく
仲良さそう、なんだ知り合いかよ、姫には
極力近寄らないようにしよう、が、騎兵隊はキヨスケ
の事をあまりよく思っていないらしい、漏れ聞こえてくる
話ではキヨスケが付けてやった紫のポジションランプが
気に入らない っと言う、車検がどーのこーの
まぁ色は確かに違法っちゃ違法だけどね
あれってキヨスケの仕業か、どーりでね
カスタムをしてあげてお近づきに、って事ね、
マメなことで。
その時、姫が僕のバイクに気が付いた
「あーーーーこれってアレですよね
Kawasakiのスーパーチャージャーのやつ」駈け寄ってくる姫
周りの視線が一気に集まる、うっわ、勘弁してくれ
「はじめて見たー よく見ていいですか?」満面の笑み
お前はアイドルかよ、が、断る勇気は僕にはない
すべからく男は美人に弱いのだ、話の主役の座を
僕のバイクに掻っ攫われたキヨスケはつまらなさそう
ははっザマァ
姫から次々と飛び出してくる質問に丁寧に答える、
なるほど、天然の甘え上手だわこの
が、こうなっちゃ周りの男は面白くないよな
口々に
「凄いけど流石にここまでのパワー要らないよね」
「これだけ尖った性能だと普段使いがな」
「すぐウィリーしちゃって早くないって言うよな」
なんてディスりはじめた、僕、被害者じゃない?
まぁアウェーなのはわかったので、そそくさと退散する
事にした、
「んじゃ、僕、帰ります」エンジンをかけた
ガャルルルルウゥーーー一風変わったエンジン音に
雀どもはすぐ黙った、LEDを点灯させると
緑色の熱帯魚 どよめきが起こった。
じゃあねバイバイまたね♪
そう言い残して僕はみちかわを抜け出した。
第2章 Raid 襲撃
週末、僕は東雲にある巨大バイク用品店 らい子ランド に
出かけた、
ついにボロボロのライディンググローブに穴が開いたのだ
今日は昼間用事が立て込んでて らい子ランド に
入店出来たのは閉店1時間前だった。
平日の店内はもう客もまばらだ、僕は急いで
グローブ売り場へ向かった。
僕がグローブを選ぶ際は、値段はもちろん大事なんだけど
素材は持ちも考えて、皮製で、動きを邪魔しない柔らかいもの
かつ、手のひらの部分が薄く
グリップを握る感覚がダイレクトな物、
プロテクターはあったほうがよくて、
一番大事な事は、格好いい って事だ、
いや、笑うところじゃなく、使ってて、後でいいなって感じる
グローブは格好いいんだ、抽象的だけど
ピシってしてる感じ、縫製とかシッカリしてると
そう感じるのかも、だから僕はグローブを
ネットで買う事は無い、
直に見ないと分からないんだ、バイクに乗っている
あいだ中ずっと手元が気になる事態は避けたいしね。
そうして、あれやこれやと試して候補が2つぐらいに
なった時にふいに声を掛けられた、。
「この前はどうも♪」鈴のような声、
すっかり自分の世界にどっぷりハマり込んでいた僕は
素で驚いてしまった、声を掛けてきたのは 姫 だった。
「あ、ああ、どうも、あーこの前の」突然美人に声かけられると
ドギマギするよな、な、な、そうだろ?
ちょっと僕は周りを見渡した、
「今日は騎兵隊連中は一緒じゃないんだ?」
「騎兵隊? ああ、フォロワーさんたち? いつも
一緒なわけないじゃないですかぁーあははっ」
「まぁ、そりゃそうか」
「さっきからずいぶん真剣にグローブ選んでますよね?」
「んー使ってるヤツ破けちゃってさ、急ぎで替えが
必要なんだ。そっちはどうしたの?」
「あ、うん、確かめたいことがあって ね、来たんだけど」
なんか含みのある感じ、
「なにか相談?」
「あ、聞いてくれる感じ?」
「あ、うん」
いや、下心とかじゃないからね
しっかりグローブを買い、外に出るともう結構寒い、
ホットのミルクティー缶を2つ買い一つを渡した。
「ちょっとフォロワーさん達には聞けない話なんだけど」
「うん」
「今着てるこのジャケットとかね、ブーツとかグローブ
実はもらい物なの、なんかフォロワーさん達が、やれ
誕生日だ、バイク乗り1周年記念だって、いろいろ理由を
つけてプレゼントしてくれるんだけど・・・」
マジかよ、僕も姫になりたい。
「やっぱり悪いじゃないですか、で、これらって一体
いくらぐらいするんだろうって、値段を見に来たんです、
そしたら結構どれも高くって、私、驚いちゃった。」
見ればピンクで纏められたコーディネートはどれも
結構値の張るブランドものばかりだ。
「みんなは怪我されるよりマシだ、まだ初心者なんだから
気にしなくていいって言ってくれるんですけど・・・
これってやっぱり男の人からすると、
下心的なものなんですかね?」
「んー下心ないっちゃ嘘だろうけど、でも親子ほども年離れてる
オッサンたちじゃん、若いきれいな女の子とツーリング
出来るなら金払ってもいいや、ぐらい思ってんじゃねーの
僕も事故りそうもないベテランライダーががっちりプロテクター
入りの服装してんのに、乗り始めたばっかの若いライダーが
ぺらっぺらの上着にジーンズで乗ってるのを見る度に
なんだかなぁ、逆だろっていつも思う、
プロテクタージャケット無理矢理着せたくなるよ、
だから気持ちはわかる、まぁ男女関係なく、若いライダーに
怪我して欲しくねーなって気持ちくらいフツーにあるだろ」
「そういうもん?」
「そういうもん」っと僕
「そうなんだ」っと姫
「そもそもさ、アンタ自身はオッサンなんかとツーリングしたり
とか苦痛じゃないの?なんか普通にもっと若いイケメンなんかと
遊んだほうが楽しいんじゃないの?」
「んー」姫は少し考えこんだあとゆっくりと話し出した、
「・・・わたしね、お父さんいないんだ、わたしがうんと
小さい頃にバイクで死んじゃったんだって、だから
思い出らしい事何にも覚えてないんだけど・・・
お母さんが大事に持ってる写真には、
お父さん、バイクと楽しそうに映ってるの、でね
それ見たら私もバイクに乗りたくなっちゃって、
でも実際乗りはじめたらわからない事だらけ、
周りにはバイク乗ってる人はいなかったから
そういうのを一つ一つSNSで質問してたの、
そんな初心者の私の質問に丁寧に答えてくれてたのが
あの人たちなの、実際あった時は正直
うわっオジサンって思ったケドね、ふふふっ
でもバイク教わったり叱られたりするうちに
お父さんってこんなかな?って、
だから結構わたしも楽しいんだ」姫が笑う、
「だったら、お父さんが娘にプレゼントしてるって
だけの話じゃん、はははっ気にせず貰っとけ、貰っとけ」
「そっか、それもそうだね、ふふっ
ところでこの後何か用事あります?」え、ドキッ
「みちかわ行きません?」ちっ なーんだつまんねぇ
多分、僕は心が汚れてるんだと思うの。
みちかわ行きを承諾すると
僕と姫はインカムを繫げて会話を可能にした、
たまたま同じビーコンだったからスムーズに繋がったのだが
僕が自分で買った中古のビーコンより、姫が貰って使ってるビーコン
がより新型なのは何故なんだぜ(泣)
らい子ランドを出て357をいちかわ方面へ、姫を先行させる。
姫のライドは初心者にしてはかなりマトモ、安心して見ていられる
車よりちょっと早いくらいのぺースで無理なくスイスイ
車を捌いてゆく、今日は車が少ないのもあって快適だ
周りにたまたま車がいなくなり道路はクリアーに
すると姫が茶目っ気を出した。
「わたし最近教えてもらってウィリーの練習してんだ」
姫はクラッチを切り、回転を上げ、スパっとクラッチを繫げた、
フロントがちょびっと上がりスグ落下 下手糞なウィリー
「コラッこういうところでそういう事しちゃ駄目って
騎兵隊のお父さん達に教わってるだろ?」
「えへへっ 反抗期だよ~ヒロさんだってコレくらい
やるでしょ?」反省したのか車速は制限速度くらいになった。
「やらないね、やったこと無いわ」僕はそう答えた、
その時、僕の右目が右から迫りくる車のヘッドライトを捉えた。
いつの間にここまで迫ってたのだろう。
「ほら見ろ、変なの引っ掛けちゃったじゃねーか、
面倒くさいから先行かしちゃえよ」
「はーい」素直な姫
するとくだんの車がズバッと右車線を抜けていく、
黒いR32GT-R、今じゃビンテージだが相変わらずこの車に乗る
速い奴はいる。
抜いた後で車線をこっちに変え、減速してバックミラーで
コッチを見ている。正確には見ているような気がする、
なんだけどね、
クルマや、バイクの動きってのは基本的にそれを操るものの
メンタルの発露だ、動きで何を考えてるかは結構わかるものだ
「はいはい、やる気はねーよ」っと
伝わるような運転をする。まぁいつの時代もバイクを目の仇
にする車はいる、が、女の子連れでやらかすわけにも
いかないしね、
するとGT-Rは先行け、のジェスチャーのあと右車線に移動、
なんだ、いいやつじゃん、
後で気が付いたんだがこれは僕らを確実に298の分岐へと
導く罠だった。普通右から抜かさせるよね。
お言葉に甘えてっとばかり姫が左からGT-Rを抜いた、
場所はもうすぐ357から298に入る分岐近く
その後で僕もっ、と思ったら、GT-Rは突然、姫と僕の間に
車体を割り込ませてきた、
うおっととと、僕は咄嗟のブレーキングで両輪ロックで失速!
復帰にコンマ何秒かフリーズ、ABSがもどかしい、
この野郎!っとばかり見るとGT-Rは猛烈に姫を煽りだした、
以外な事に姫は事態にスグに対応した、
車体にピッタリ貼り付いた膝や踵を絞りあげてフル加速!
振り切るつもりだ、
ははっ、なんだ良いセンスしてるじゃん
教え方が良いんだろう騎兵隊もいい仕事してる、って事だ。
だが、姫は298に入る分岐のコーナーに入ってゆく、
悪手だ、そのまま真っ直ぐなら振り切るのは
姫のニンジャ400でも余裕なのに・・・
バイクに不利なコーナーでGT-Rに張り付かれるニンジャ
クソッしょうがない、僕が姫の替わりに
タゲられよう(ターゲットされよう)
僕はLEDのスイッチを入れた、夜の闇の中ライムグリーンに
浮かび上がる僕のバイク
ーどうだい?こっちのほうが獲物としちゃ美味しいぜー
っとばかり2台を右からゴボウ抜く、
が、GT-Rは僕の存在などどうでもいいらしい、
追ってこない???
後ろでは、姫は技量を超えるスピードなため、コーナーを
外にはらんでゆく、それを内側から押しつぶすように、
プレッシャーをかけていくGT-Rが見える。
「おい!やめろおおーー」思わず叫ぶが、事態が好転する
わけもない。
ズリッッッッ ついにニンジャのリアがグリップを失い
リアカウルを側壁にこする、2,3度あて舵を切るように
錐揉んだあとニンジャはベシャッっと転倒した。
GT-Rはスルリっとカスリもせず場を捌く、アイツ手練れ《てだれ》だ
放りだされ、不格好に頭と胸から着地した姫、イケない
あわてて自分のバイクを脇に止める。
GT-Rはハイビームのまま僕の横を通りすぎる、
ああ、眩惑されて何も見えない、糞っせめてリアナンバー
と思ったが、リアナンバー灯は暗く読み取れなかった。
悔しかったし、すぐ追いたかったが、
今はそんな場合じゃない、
急いで姫の無事を確認しなくちゃ
あわてて駈け寄ると
「いったーーい、なんなのアレ?」っと姫
良かった、死んではいない、だが安心は出来ない、
「動くな端でじっとしてろ!」
事故で胸を打ち、直後はピンピンしてた奴が容態を
急変させて死んじゃった話を僕は知っている。
幸いOILの漏れ等はない、二次被害を避けるため
姫のバイクを端に寄せ、
救急車、警察、っと矢継ぎ早で連絡していく
あーもう,なんでこんな時に騎兵隊一人もいないんだよ
役に立たない騎兵隊
姫を救急車に乗せ、僕はその場に残った、姫にバイクを
頼まれたから、
僕としても主人のいないバイクを
この場に置き去りにするのは嫌だった。
とりあえずは家の近所のバイク屋キモモーに回収
を依頼した、40くらいのちっさい店主が切り盛り
する個人店、が、腕は確かだ、
とびっきりの美人のバイクだ って言っといたから
スグ来るだろう、彼は助平だし
とにも角にもバイクの破損状況でも確認しておくか
ねんおしゃちえぶくとうばしめっとバイク整備の
魔法の呪文ってね、
エンジンをかける、うん、発動機は問題なさそう
すると一台の個人タクシーが通りかかった、
個人タクシーは通り過ぎるかと思ったら
20メーター程先で止まる、しばし考えたような間のあと
気の良さそうなオジサン運転手が
心配そうな顔でコッチにやって来た。
「なんだい、やっちまったか?」
「うん、運転手は今しがた救急車に乗っていった、
でもまぁ大丈夫そうだよ、骨も折ってなさそうだし」
僕はいま起こった事の顛末を簡単に説明した、
ヒデー車だったよ ってね、僕はてっきり
そりゃ酷いなって反応が返ってくるかと思ってたんだが
トクさんの表情はシブい、そして噛んで含めるように
僕にこう言ったのだ、
「これ、その運転手さんの、だよな?
アンタこの人の仲間?」
「え?ええまぁ」
運転手は徳光と名乗った、その徳光ことトクさんは
俺をジッと見ると
「アンタこのバイクの運転手さんの友達だよな」
「はい、」友達かなぁ?まぁ流れ上仕方ないよな、
「だったらさぁ、この人に言っといてやんな、こりゃ
ある意味、自業自得だよって、反省しろって」
「あの、どういう事っすっか?
自業自得ってそりゃあんまりじゃ」
「いや、俺りゃぁ、このバイク最近見てんだよ、この先の
ほら新しく出来た道の駅舎ってのあんだろ?」
「ああ、はい、僕もよく行ってますよアソコ」
「ちょうどあの辺りでよ、下手糞なウィリーとかやってよ、
可哀そうに、軽の女の子が目の前でフラついた
そのバイク避けようとして事故しちまったのを
俺は見てんだよ、当たりはしてなかったから
通報とかはしてねぇけどな、あんま無茶しねーで
もらいてーよ」
・・・久木山の言ってたやつか
翌日警察での事情聴取に赴いた、はぁ またココか
若干憂鬱な気分で赴いた場所だが、やはロクな目に
会わなかった。
担当の警察官は当たったか当たらないかをシツコク
聞いたあげく
「んーあなた彼女のお友達のわけでしょ運転操作ミスして
転倒したのを車のせいにしてるって事はない?」
「それはないです。」
「うーん、でも当たってないんでしょ?こういうケースは
難しいんだよね、」
っと、のたまった、つまるところ捜査する気はないのだろう。
僕から車の有力な情報をほとんど引き出せなかったのも
大きいのだと思う、
僕としたことがまったくなんてザマだ、
もう帰っていいと言われたので席を立った僕は、
大事な事を思い出した。
「ああ、そういえば彼女の連絡先教えて貰えませんか?、
彼女のバイクの事とかで伝えなきゃいけないこととかあるんで。」
「え!知らないの?友達なんじゃないの?」
警察官はちょっと驚きながらも本人の了解をとったあと
教えてくれた。
姫野 玲奈 090-○○○○-○○○○
なんだ、本当に姫だったのか
姫に聞いた病院は知っているところだった、以前リンが
バイク事故で肩甲骨を骨折した際に入院したところだ。
30分ほどかけて病院に着くと時刻はもう18時をまわって
いた、
僕は面会の書類に記入を済ませ3Fの病室へ、
相部屋の病室に入ると、スグにそれ(バイク乗り)と
わかる格好の人物が3人いた、見覚えがある、騎兵隊だろう
「ああ、こっちこっち」姫はベットから笑顔で呼ぶが
奇兵隊のオッサン達はどう見てもウエルカムって感じじゃ
なかった。
「で、どう?体」
「ああ、うん、骨折とかはなかった、あちこち打撲で
痛ったいけど、一応2日ほど検査入院だって。」ここで話を
遮るように一番年かさの騎兵隊が話かけてきた。
「とりあえず何があったか話してくんない」
「そっちの姫から聞いてないの?」
「一応聞いたよ、けど君からも。聞きたいんだよ、
ちょっと不可解すぎるだろ」
次に一番若い騎兵隊が話だす、
「姫助けてもらっておいてこう言っちゃなんだけど、
あの辺じゃアンタの事を疫病神みたく言う人だっているじゃない
アンタのトラブルに姫が巻き込まれたって事はないかな?」
「ちょっみんな違うから」姫が何か言いかける。手をかざして
姫を制止し、僕は言った。
「確かに僕の事を蝿のように嫌ってる奴はみちかわに大勢いるけど、
でも今回の件は関係ないんじゃないかな」
「2人とも落ち着きなよ、その人攻めたってしょうがないじゃない、
悪いのは車なんだし」メガネの騎兵隊が言う
「けどなぁ」っと年かさの騎兵隊
まだ納得出来ないようだ。
僕はここで本題を切りだそうと思った、
いやな役回りだが今日は姫に聞かなきゃいけない事がある。
「姫、ちょっと話あるんだけど」
「なんだ?いいなよ」っと年かさの騎兵隊が割って入ろうとする
「うん、わかってる、みんなちょっとヒロさんと話あるから
今日はもう、ね」
「わかった帰ろう2人とも」っとメガネ
が二人を先回りして制した。
「一応何か進展あったら教えてよ」
そう言うとメガネは二人を促し病室
を出ていった。
重苦しい空気の中、姫が口を開いた、
「さぁ言って、覚悟は出来てる、自分でやった事だもの」
「そうだな、」口淀んでいる僕を姫がせかす。
「ああもぅ早く言ってよ、いったいいくらなの修理代」
「・・・修理代?・・・あ、ああ、はははっ
だいたい25万くらいだと」
「うっわーーーーマジかぁーーーキッツ
無理無理無理無理ぐぁーーーーこの世の終わりだーー」
「しょうがねーだろ右コスって左にコケるとか最悪じゃん」
質問しようとした事とは違ったが十分だった、もう姫に
聞くことはない。
「はははっそうだよな修理代がいっちゃん気になるよな
バイク乗りとしては」
「だよねー」
「でも騎兵隊のおっちゃん達にお金出してもらう、
なんてのは駄目だぜ、それやっちゃったら
僕は君をバイク乗りとして認めないぜ」
「うん、私もそれは駄目な気がする、もしあれがヒロさんだったら
コカしてないよね、なら、アレは状況がどうであったとしても
わたしの技量不足だもんね」
「よくできました、答えとしては100点満点だな」
「ああ、でも25万かぁマジできっつぅ わたし、からだ売らなきゃ
ならないかも、きゃぁーーヒロさん買う?」
「馬鹿か!買う訳ねーだろ、そこまで元気なら退院しろ」
際どいジョークに僕は少し赤くなったかもしれない、
「くっそ、需要はあると思うんだけどなぁーしょうがない残業で稼ぐか、
うふふ、でもしばらく乗れないのキツイなぁ」
「とりあえず早く体なおしなよ」
「はーい」
僕は病室を後にした。
・・・25万は持ってないなぁ、ローンじゃ駄目かしら?
建物を出て駐輪場へ、ここの病院の駐輪場は駐車場の一角にある、
バイクに乗る準備を始める、バイクに乗る前ってのは
もたもたしたものだ、いつものこと
衣服を整え、携帯をセットしバイク電源と接続する、
メットを被りベルトをバックルに通し留める、このベルトを
留めないと転倒した際メットは意味をなさない、
エンジンをかけインカムの電源を入れ。携帯のV‐tube(動画サイト)
を呼び出しお気に入りのJポップを再生する、甘い天使の歌声が弾む
バイクが孤独な乗り物だったのは少し前までの事、今では
7割がたのライダーは音楽やインカムで仲間たちとの会話を
楽しみながら乗っている、電話さえ取ったりかけたりできるのだ
ようやくグローブをはめ、前向きに駐車したバイクをまたがったまま
よちよちと駐輪場から引き出す、おっと、夜はやっぱLEDっと
スイッチを入れる、すると僕の視界の端で何か動いた、黒いクルマ
僕は、あ、っと思った、あのGT-Rは・・・
GT-Rは病院を出て右に出て行った、素早い、こっちを認識して
いる、そういう気がした、当然後を追う、競馬場のほうに向かっていた
GT-Rは中古車屋の角を右に曲がり加速、信号には捕まらずに
ぐんぐん車速をのばす、バイクで車を止めるのは無理だ、どうする?
付いていくしかない、どっかで止まればいいけど
道はすいていてあっと言う間にショッピングモールの前を通りすぎ
京葉高速が近づいてきた、ヤバい、今日はETCカードを刺していない
GT-Rは一般道にしては結構なスピードだ、おそらく600馬力クラス
ノーマルの(280馬力)の倍程もパワーは出ているだろう
当然ついていく僕も こっそり とはいかない、確実に後を追う
僕に気が付いているだろう、
しかし妙だ、この走りはチギるっというよりは引っ張っている?
ええい、訳がわからない
GT-Rは意外にも高速の入り口をスルーした、そして立体交差の
こんもり盛り上がった場所を過ぎて下りに入ると加速した、
ウインカーはもう右に出している、出すタイミングとしては早い
つまりこの先を
右に曲がるぜ、ついてこい
って意味だろう、クイックに右にまがると緩いS字、
そして合流先は298号だ。
スポーツカーとスポーツバイク、
今現在(2019)一般的に言って200㎏の車重を200馬力で
加速させるトップクラスのバイクに車は直線では通常勝てない、
車重1.5トンを超える車を同等に加速させるには
単純に1500馬力が必要になるからだ、
(そういうスペックをもつ現実的ではない車は存在する)
が、コーナーは別、タイヤが四つある車にアドバンテージがある。
とはいえ、そこには運転技術的なものや、様々な要素が介在している
いまこの場合、ラインが重要になる、ラインとは走行車がたどる軌跡のこと
想像してほしい、幅は車幅とほぼ同じの緩いクネクネ道を
クルマの場合、道路にそってクネクネ走るしかない、が、
車幅が圧倒的に小さいバイクはその同じ道を真っ直ぐ走れるのだ、
道はこの先、車もバイクも腕が試されるシュチュエーションだ、
様々な事情が全部吹っ飛ぶ、どう走る?GT-R
GT-Rは、ゆるりっとテールをスライドさせ最初のきつい信号コーナー
をこなすと、S字を器用に右左とグリップ走行で抜け
合流の加速で長く直線を取れるラインをとった。
僕はなるべく奥までブレーキングを粘りS字をほぼ真っ直ぐ走る
ライン、これだと298との合流に余裕で追い付く
GT-Rは298号との合流に時間を使い、割とゆっくりと侵入した
事故上等!っとばかりに突っ込んでいく馬鹿とは違う
ちょっと残念に思った、
こんな走りの出来る奴がなぜ?
合流して最初の信号に赤で掴まったが、すぐに信号は青に、
くそっついてない、
他の車を無理なく右左に捌きクリアとみるや悠然と加速する
GT-R、結構なスピードなのに危なげが全くない
いつものこういう走りっこなら当然
チギりにかかるんだがなぁ、抜いちゃ駄目だろって
シュチュエーションなのが残念だ、
僕は走りが楽しくなってきていた。
この298号には交差点のほかに引込線のような箇所がいくつもある、
みちかわが近づいて来た時、その一つにGT-Rが
入っていき、停車した、
僕はエンジンも切らなかったし、降りて近づきもしなかった、
っというのも以前、仲間のバイクと接触した車を追った際
止まった車に降りて近づいた途端、車が急発進し逃げようと
した経験があったから、
油断はできない。
GT-Rはエンジンを切り、ドアを開けて男が出てきた、
軽くあげた両手、右手に車のキーをつまむように持っている
年の頃は20代後半の細いやつ、こういっちゃなんだが
イケメンだ、
「逃げやしない、アンタと話がしたい」
男はユウジっと名乗った、僕も聞いたことがある湾岸なんかを走る
スティール・ハートって有名なチームのメンバーだった。
OILの流れる鉄の心臓 その小さなエンブレムステッカーが
よく見るとテールに貼ってあった。
「この前、俺がやらかした事から逃げる気はない、ちゃんと
警察に行って話もする、信じてもらえないかもしれないが
怪我までさせる気はなかった、アレは俺の運転ミスだ、
だだし条件がある、あの女も警察に行って本当の事を話して
欲しい」
「この場所で僕も気が付いた、この場所、女の子の軽自働車が
事故ったところだよな?」
「そうだ、あれは俺の妹だ、ウィリーしてよろけたバイクが
妹の車の前に前輪を落とした、それに驚いた妹が急ハンドルを切って
ココで事故ったんだ、ぶつかってないとはいってもそのまま
走り去るってのは駄目だろ、警察もぶつかってないからって
捜査もしてくれないしな。」
警察が動いてくれないのは本当だろう、僕も今日の昼間経験したしね。
「こんな事ならさっさとドラレコ付けさせるんだったよ、
クリスマスプレゼントにしようと思ったのが仇になった、
妹はピアノの発表会直前だったんだ、一生懸命練習してたのに
あの骨折でパァだ、バイクにも責任を取らせたい」やさしいお兄ちゃん
「話はわかった、俺に彼女を説得して欲しいって事だね
でも疑問があるんだ、どうして僕たちの走ってるとこが分かったり
病院がわかった?」
「今回の事はみんな仲間内に話してある、バイクの特徴もな、探してたんだ
アンタら らい子ランド にいたろ?あの隣のオートバッカー
(大型自動車用品店)にいた仲間が連絡をくれたんだ、
それらしいのがいるってな、急いで駆け付けた時にはアンタら
は出てしまってたけど、出たばっかりだって言うから追いかけたん
だ、病院は無理言ってダチに救急車をつけてもらった、アンタは
あの場所動けないだろうしな」
「なるほどね」
その時俺のスマートフォンが鳴った。
「あ、ああトクさん、うん、ちょうど良かった、今時間取れない?」
狩りの夜
自分の不機嫌さをバイクの運転にぶつけるほど子供でもない、
猛る心を内包しつつも
僕のかわいい猛獣、しっかり地面に食いついている爪の感触
コーナーを切って抜けると蹴飛ばすように加速する。イイ感じ♪
今日もみちかわに参上、ひらりひらりってね、
今日もそこそこの台数が集まっている。
バイクを停め、辺りを見回すと、白いR1の
僕はキヨスケに近づいていった、途中でコッチに気が付き
気まずい表情を見せるキヨスケ
僕はR1を舐めるように見た、
「なんだよ、なんか用かよ?あんま見るなよ、疫病神っぽくて
俺オマエ嫌いなんだよ」
「いや、別に」
背を向けるとキヨスケは居心地悪そうにそそくさと帰り支度を始めた、
いつも一緒の黒のCBR1000と2006年製の古めのR1も一緒だ、
奇遇だね、僕も今帰ろうと思ってたんだ、みちかわを出る
キヨスケ一行を僕は追った、
奇遇だね、僕も帰り道とは逆方向のソッチに行こうと思ってたんだ、
キヨスケは連れの二人を置き去りにするように猛加速を始めた
なるほど200馬力仕様ってのはホントかもね、170~180馬力は出てる
けど乗り手はタコだ、あっという間に追い付いて見せてやった、
そら、もっと逃げて見ろ、タコスケ
連れの二台はもうずっと後ろの信号に引っ掛かっている、
背を丸くかがめ必死に加速するキヨスケ、軽くぶち抜いて差を着けた後、
減速して抜かさせる それを2度ほど
繰り返した、また抜かさせるとキヨスケは357号の合流に向かった、
大きな空中に円を描くループそれを抜けると357線に合流するのだ、
道幅は狭いがそこでも悪質なまでにプレッシャーをかけ
外側からぶち抜いてやった、
塩浜辺りにさしかかった時には奴は完全に戦意喪失していた、信号で
止まっても僕のうしろ10メートル位のところで停車し、下をむいて
牛のようにブルンッブルンっと首を振っているウシスケ
信号は青になり、僕はゆっくりと発進したがキヨスケはトボトボと
Uターンして何処かに走り去った、遠くで雷鳴のようなマフラー音
が響いた、今更飛ばしてどうするマヌケ
僕はそのまま夜のライディングとしゃれ込んだ、急にイタリア街に
行きたくなったしね。
翌週 T-ツイートにキヨスケの書き込みがあった
この度彼女が出来ました、よく話し合った結果、今後の事も
考えバイクを降ります。とかなんとか
ふ~ん、じゃぁねバイバイ
更にその翌週、キヨスケは警察に逮捕された、救護義務違反だった。
ユウジと話し合ったあの日、あのあとトクさんと合流し僕らはファミレスに
行った、6号線沿いのサイデリアだ、
トクさんは商売柄前後にドラレコを付けていた、
僕は人違いかも知れない、見せて欲しいと言ったのだが、トクさんは
「いや、ゴメン、操作わからねーんだわ、数日前のやつだろ、データは
まだ残ってるだろうけど・・・わかった娘にたのむわ、そのへんは
娘に頼んでるんだ、こういう奴に動画落としてもらったら連絡するよ」
っとノート型のタブレットくらいの四角を空中に指で書いた、
トクさんの連絡はこの事だったのだ、
動画を再生すると、確かに後ろから紫のポジションライトのバイクが
トクさんのタクシーを追い抜き、100メートル程前の軽自働車を追い抜きざま
ウィリーをし、フラフラと軽自動車の前に着地、それに驚いた
軽自働車が左に急ハンドルを切り側壁にぶつかっていた、
「な、この紫の光ってるヤツだよ」っとトクさん
「ああ、俺もこの紫のポジションランプの白いバイクを探してた
妹の言ってたやつだ」っとユウジ
トクさんもユウジも前に出て確認したのはこの光だ、
「ちょっと前に戻るぜ」そう言って僕はタクシーを追い抜くところまで
動画を戻し、コマ送りのように再生していった。
やっぱりだ、このバイクのテールは特徴あるセンターアップマフラー
ライダーのお尻の下辺りから生えてるヤツ、姫のニンジャは右の腹下
のはずだ、まったく違う、よく見ていくとナンバーもしっかり写っていた
姫のニンジャではない事が証明されたのだ。
「でもよう、俺も昔バイク乗ってて急に右折してきたトラックに驚いて
コケちまった事があるけど、ぶつかってないんじゃ何も出来ないって
警察に言われて泣き寝入りだったぜ」っとトクさん
「今はそのへん結構厳しいし、ドラレコのこれだけシッカリした画像が
あれば大丈夫だよ」っと僕は言った。
「んじゃコレ警察に提出してくんわ」っとトクさんは言い、
画像は元データと共に、翌日警察に提出された。
ユウジの行動も早かった、次の日早速姫の病室を訪れ、心からの謝罪をした、
これにはユウジの妹も「どうしても」っと言って同行し、共に謝った。
「私のいい加減な情報で兄が、そもそも私が運転未熟だったから」っと
ポロポロ泣き出してしまった、兄思いの妹
これが良かったのかもしれない、
姫はユウジを許し車輛と治療費の負担を条件に訴えを取り下げた。
同行した僕もうるっときたけど
べつにユウジの妹が予想外に可愛かったせいじゃないぜ、たぶん
すぐに70万程が振り込まれたそうだ。
これがきっかけで姫とユウジの妹ユリは今では大の仲良しだ、
手を怪我してるユリが作詞作曲と音楽の打ち込みをし、姫のボーカルで
ユニット活動を始めたらしい、人の出会いって面白いよね。
そういえばユウジは病院の去り際こう言った
「あの時、2台をごぼう抜きにした緑の光を見て走り屋の魂に
立ち戻ったんだ、本能的にアクセルを踏み込んだら
ラインが外に膨らんじまった、今度この話とは別に決着をつけよう」
「そういう勝負は受け付けてないよ、僕は女の子とタンデムとかのほうが
楽しいし」
「ふん、タンデムシートもないバイクに乗ってて何とぼけた事言ってんだ
まぁいいや、またな」ぐうの音もでねぇ
まぁ彼とはまた会いそうな気もするな
一か月程たっていつものようにみちかわに行くと姫と騎兵隊がいた
騎兵隊に囲まれる姫に近づいていくと、驚いた事に姫の
ニンジャ400ではなくZX10R 15年型だった、
「ええーどうしたの?買ったのコレ?」僕は驚いて言った。
「えへへぇ♪買っちゃった、アレ直そうと思ってたんだけど、
キモモーにたまたまイイ出物があってぇ ・・・わたしね、思ったのよ、
あの時コレだったらワンチャン逃げ切れたんじゃね?って」
腕組してニヤリとする姫
「あははははは、うん、・・・そうかもな」笑いがとまらない。
とりあえずのホットコーヒーで暖をとっていると
姫がそっと抜け出してきた、座る僕に顔を近づけて言う
「ホントはね、ちょっとバイク降りようかとも思ったの、
すっごく怖かったし、でもねよく考えたら怪我がなかったのはやっぱり
みんながくれたこの装備達のおかげかなって、
だからもう少し彼らの 姫 でいようかなって,いいかな?」
「いいんじゃない」即答した、良いも悪いも僕が決める事
じゃないよね、屈んで覗き込むようにジッと僕を見る姫、
すぐにスッっと背を伸ばすとフイっと横を向く、なんなんだ?
でもそういう話を聞くと傷がついたブーツやプロテクター
が誇らしくも見える、
「まぁ10Rが来たからにはヒロさんもブッチギリかな」っと
横を向いたまま姫は言った。口調はちょっと愛想無く感じる、
ちょっとご機嫌取らなきゃマズいかな?
「ははは、騎兵隊に守られたお嬢さんの役かと思ったら
カラミティ・ジェーンだったか」
「なにそれ?」不思議そうに僕を覗き込むように見る姫
「男ばっかの西部開拓時代に名を馳せた女ガンマン」
「なにそれ、かっこいいじゃん、いいね、それ、ヒロさんも友人役で
出演させてあげる♪」
それはゴメンこうむる、後ろから撃たれちゃうじゃないか
気が付けば騎兵隊のお父さんたちが、姫と仲良さそうに話す僕を
おっかない顔で見てる、くわばらくわばら、
僕はこの場を退散することにした。
だって西部劇のラストはトラブルを解決した主人公が
静かに去っていくのがセオリーだからな
おわり
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