秘密にしたいことというのは、往々にして、胸のどこかで知られたがっていることがあるように思います。これが知られたらどうなるかしら、というきもちは、恐怖でもあり、期待でもあるかのようです。もしそうした思いが形をとるとしたら、どうなるのでしょう。わたしの胸の中にも、姉さんがいるのかもしれません。とても考えさせられましたし、最後の数行には「ぞくり」としました。
「幽霊が見えることへの恐怖」が「幽霊が見えると知られることへの恐怖」へと発展していくのが面白い。幽霊という不条理な形而上的存在によって、整然たる物語の論理が破壊されたが故に、この小説は生まれたのではないか。そして主人公は物語を形作る因果関係が示されない為に傷ついていく。ホラーというジャンルを通して人生の不条理を見事に描き出しているこの作品を読んでいると、カミュの「シーシュポスの神話」を思い出した。