第18話
僕はため息をつくと、
「それじゃあ、もう一度大事にしてやってね。」
と言って、席を立とうとしました。
彼女はびっくりしたように僕を見つめると、小さな声で言いました。
「返事を、聞かなくていいんですか。」
僕は首を振りました。
「だって、フェアじゃないもの。君の心が乱れているときにつけこむなんて、僕にはできないよ。」
彼女は僕をみつめると、微笑みました。それは、とてもやさしい、とても暖かな微笑みでした。
「でも、明日になれば、あなたはきっともとにもどってしまうわ。だから、今言ってください。私の返事は、かわりません。」
僕は、彼女をみつめました。彼女も僕をみつめています。すると、ほのかなバラ色が、彼女の頬にさしてきました。
僕は、ありったけの勇気をふりしぼって、言いました。
「あなたが好きです。あなたは、こんな僕を好きになってくれますか。」
彼女はにっこりすると、とてもやさしく、でも、とてもしっかりと、うなずきました。
今、僕たちの部屋には馬君がいて、やさしく僕たちを見守っていてくれます。あの頃よりだいぶよごれてしまっていますが、その顔は、とても幸せそうです。ただあの晩以来、馬君は僕たちに話しかけてはくれなくなってしまいました。
きっと、新しい小さな友達と、おしゃべりするのに夢中なんでしょうね。
こわれた人形 OZさん @odisan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
短歌/OZさん
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます