酸性雨の降る最果ての地で

おいどんべい

第1話 とある男の日記

私は、フィーズ・ルア

この村には昔から伝わるとある男の日記がある、私のおばあちゃんはとても凄い人なんだよというけれど、一体何をしたのか良く分からないから今日はその日記を読もうと思う。


日記


王都では、この国はとても平和で、皆が幸せだなんて言ってるけれどそんなの嘘だ。

僕の住んでいる村はとても貧しい。

常に僕らは腹をすかせている。

こんな僕らの町に王都からの支援なんてきた事もない。


ある日いつも通り仕事をしていると知り合いから、悪い知らせを受けた。

その内容は、幼馴染のユナが倒れたという話だった。

僕はなんとか助けられるかも知れないと思い、村の医者に相談した。

だが、僕の望む答えは返ってこなかった。


「お金が有ればすぐに医療体制を良くして助けられるかも知れないが、この村にはお金何てない、だから諦めるしかない」


やっぱりこの世界はお金なんだ。

お金を持つ人達は助けられ、ない人は諦める。

どこが平和だと言うんだ。


僕が絶望し、毎日抜け殻のように仕事をしているとある噂を耳にした。

この世界にある最果ての地では金のなる木があると言う、だが、最果ての地にはとても強い酸性雨が降っているそうだ。

この話を聞いた途端いてもたってもいられず、僕は旅の用意を始めた。

旅に出ると言う話を親にした。

親には旅に出る上の約束として、二つの条件を出された。

一つ目は必ず生きて帰ってくる事。

二つ目は絶対に無理をしない事。

僕はその条件を守ると約束し旅に出た。


最果ての地を見つけるのはとても大変で、行くために3日もかかってしまった。

最果ての地と言っても僕らの村は本当にこの世界の最果てに近い所にあるためあまり時間はかからなかった。

だが、急がなければユナは死んでしまう。そんな事を思いながら僕は金のなる木を探した。


2日後、僕は遂に金のなる木を見つけた。

だが、その周りには酸性雨とすぐに分かる程の酸性雨が降っていた。

きっと生身の状態であの雨に濡れたらきっと体はドロドロに溶け跡形も残らないだろう。

だが、木にはたくさんのお金がついていた。

この時、僕の中である天秤がうまれた。

片方は、ユナを救える程の大金、もう片方は僕の命だ。

僕は旅の中でとても酸に強い防具を買っていた、だが、この防具をきたとしても後から僕の身体は酸に毒されて行き死んでしまうだろう。

でも、もし大金を持って帰ったら村の人たち、そしてユナは救われるだろう。


僕は悩んで行く上で沢山の記憶を呼び起こす。

ユナの笑顔、村の人たちの笑顔、僕が生まれ育つ内に経験した事。

そして両親と交わした約束。


僕は悩んだ、とても悩んだ。

そして僕は決断した。

お金を持って帰ると。


急がなければユナの命が危ない故に、僕はすぐに準備した。

そして、酸性雨の降る場所へ一歩踏み込んだ。

1秒でも無駄にしたら、ここで僕は死んでしまう。

僕は金のなる木の所へ着くと、ユナの病気を治せる分のお金とこの木の苗木を手に取った。

そして、僕はすぐさま村に帰った。


村に帰ると両親が泣きながら向かい入れてくれた。

そして僕は、ユナの家族にお金を渡しユナを助けるようお願いした。

そして3日後ユナの手術が受けられる事になった。

僕はとてもとても喜んだ、だが僕の身体は限界に近かった。

きっと3日後には僕はここにいないだろう。

僕はすぐさまとってきた苗木を植え、村の人に毎日水をやるよう説得した。

村のみんなは半信半疑だったが、もしかしたらという気持ちで承諾してくれた。

後やることはただ一つ、ユナへの手紙を書くことだ。

どんな事を書けば良いだろう...


ここで日記は終わっていた。

きっと次の日には亡くなってしまったんだろう。

日記を読み終わり棚に戻そうとしたら、ある紙が落ちてきた。


ユナへ

今、君は元気にしているかい?

きっと今君がこの手紙を読んでるということは僕はこの世にいないだろう。

本当にごめん僕の勝手で先に逝ってしまって、僕の自己満で君を助けようとしてしまって。

いくら謝ったってきっと許されないと思うでもどうしても君に死んで欲しくなかったんだ。

ユナは覚えているかな、僕たちが会ってまもない頃。

君は前々から沢山の持病を持っていたよね。そしていつもいつも苦しんでた。

その時、僕は君に大丈夫?って聞いたよね、そしたらさ、

うん、大丈夫だよってとても苦しそうで、辛そうな顔で答えてくれたんだ。

その時にさ、僕馬鹿だからさ勝手に、いつ自分が死んでしまうのか怖いんじゃないかなって思ったんだ。それから僕は君にたくさん生きてほしいって思ったんだ。

だから今回もこんな事をしちゃったんだ。

本当に勝手だよね、でもこんな僕を許して下さい。

どうか僕の事を忘れないで下さい

ごめん、もうとてもとても苦しいから最後に言いたい事を言うね。

生まれてくれて、ありがとう

生きてくれて、ありがとう

出逢ってくれて、ありがとう


それはとある男の人の手紙だった。

そして裏には、ユナさんと思われる人の返事があった。


とってもお馬鹿な君へ


全くなんで私を置いていくのさ、バーカ

少し寝てて起きたら君が死んじゃっただなんていきなり言われてショック死しちゃったらどうすんのよ、バーカ

全くいつもいつも馬鹿みたいなことして、少しは置いて行かれる人の気持ちも考えなさいよ、バーカ

おかげで目から汗が出ていつまでもいつまでも止まらないじゃないの、バーカ

でも、そんな馬鹿な君に伝えたい事があるわ。

あなたが持ってきた苗木は、すぐに成長してたくさんのお金をつけて村の発展に役立ってるわよ。

そして、君が助けた女の子は今もこうして元気に生きてるわよ。

本当にありがとね。                    


その手紙にはたくさんの涙の跡があった。

そして、名前も書いてあった。そこにはとても見覚えのある名前が載っていた

「フィーズ・ユナ」

そう、おばあちゃんの名前だった。

この村で語り継がれている、とある男とユナは私のおばあちゃんとおばあちゃんを救った人だった。

良かったね、男さん。

おばあちゃんはあなたのことをいつまでもいつまでも覚えていたよ。


         





   







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