第5話
新米の僕がなんでそんな意見できたかというと、僕の持った――何故か具体的な知識をキャラバンの子どもたち(大人もたまに)に教える先生になってしまったからだ。
数の数え方、計算方法、文字の読み書き、喧嘩はダメだということ。調理法や滑車とか井戸掘りとかそういうのはえ?今更という顔をされてしまった。
最初はこの顔のせいで怖がられてしまったし、大人からはなぜあんなやつを……と何度も愚痴られた。
そのうち僕はただの新入りではなく、カオナシと呼ばれるようになっていった。これも僕に顔がないことに尽きる。
このマスクは生徒のマォン・カーリィというオレンジ色の子ねこからもらったものだ。虫を入れる袋に穴開けたやつ、だそうだ。
穴の開いてしまった虫袋を流用して作ったものだが正直ありがたい……。この焼けただれた顔、流石にコワイであろう…。それからこれをかぶって授業をするようになった
大人たちにそれとなく聞いてみるが、やはり不気味だったとのこと。
「ただね、先生の顔は焼け溶けちゃってるけど焼け溶ける前を想像してもそれに似た人たちは見たことないな」
これで人間が僕以外にはいないのだと思われた
ファーリィに明日の段取りでも説明してやらんとな。
5つ肉が刺さっているはずだが3つしか刺さってない串焼きを食べ終える。
ベッドに横になったらファーリィも横になって来た。
「これで先生もあと3匹くじら捕まえられたらランクアップよ? あたしと一緒、一等賞で一人でも狩りに行けるおすみつき」
明日はくじらを捕まえる。あの日のファーリィのように一人で。
ファーリィが覆いかぶさってくる。僕は目を開く。
「先生って、目、青っぽいっていうか赤みがかった紫って感じで」
マスクの穴から覗く瞳を褒められている。
「きれいだよね」
カオナシが荒廃世界でケモミミたちと一緒に暮らす話 シマシマ @dinohito
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