僕らのラノベ ~略称は「僕ラノ」または「らのラノ」でお願いします~
羊洋祥
第1話 01-001「ラノベ王におれはなる!」
ガチャッ。
ドアが開(ひら)いた瞬間、目に飛びこんできたのはおっぱいだった。
否(いな)。
正確に描写するのであれば、おっぱいの谷間であった。
このおっぱいを俺は知っている。
そう、知っているはずだ。
しかし。
その知っているはずのおっぱいはかつて俺が知っていた時よりも遥かに大きく、そして豊かに。実にすくすくと育っていた。
これが放牧されて育ったおっぱいか。
俺の灰色の脳細胞に浮かぶのはそんなピンク色の妄想だった。
何故俺はこのおっぱいを知っているのか。
それは。
このおっぱいは姉のだからだ。
姉のおっぱいだからだ。
大事なことなので二度言いました。
実家にいた頃は真っ裸でさえないものの、風呂上りにはタンクトップにパン一という姿でウロウロしていたものだ。
あの頃に比べ姉のおっぱい、略して姉パイはたわわに育っていた。
だがしかし。
姉のパイオツの谷間を見た程度では俺のジュニアはおっきしたりしない。
そう、絶対におっきしたりしないんだからねっ!
「あ~、ほんとに来たし。いらっしゃい」
そんなおっぱいの谷間に目が釘づけになっている弟である俺を尻目に無防備な姉が言う。
「なんて格好で出てくんだよ! 仮にも嫁入り前の娘がはしたない!!」
あの頃と同じようにタンクトップにパン一で玄関先で俺を出迎えた姉に向かって俺は叫んだ。
「別にいいでしょ、家族なんだし」
だるそうに姉が言う。
「来たのが俺じゃなかったらどうすんだよ!」
「誰が来たかは確認してるし。見られても減るもんじゃないし」
相変わらず自分の容姿への評価は低い姉だった。
「立ち話で済むような話じゃないんでしょ? とにかく上がって」
「お邪魔します」
招き入れられた部屋の中はカオスだった。
ゴミなんかは落ちていないものの、服や下着がそこここに脱ぎ散らかしてある。
姉は昔から片づけというのができない人なのだ。
それはいい大人になった今も変わっていないらしい。
「さて、今日は進路相談しに来たんでしょ?」
あいさつもそこそこに飲み物を勧められる。缶のまま。
相変わらず女子力の低い姉だ。冷やしてあるだけまだマシだが。
「それで、君は将来一体何になるつもりなのかな?」
その質問に対し待ってましたとばかりに俺は応える。
「ラノベ王におれはなる!」
どん!
という効果音がバックにつきそうなセリフを両手を天を衝かんばかりに高く掲げつつ俺は叫んだ。
僕らのラノベ ~略称は「僕ラノ」または「らのラノ」でお願いします~ 羊洋祥 @hitsujihiroyuki
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