Extra プライベートビーチ

 三話連続して番外編となります。

 本編とは関連しませんので。


     * * * * *


 俺と明穂はお義父さんの計らいもあって、今、二人以外他人が一切居ないビーチに来ている。


「白い砂浜。透明な海。抜けるような青空。そして明穂?」


 俺の隣に居たはずの明穂はどこへ?

 辺りを見回すもその姿が見えない。着替えに行ったのかと思ったけど、高台にあるビーチ専用ヴィラには居なかった。風呂もトイレもキッチンもダイニングも。もちろん寝室も見てみたけど見当たらない。

 どこに消えたんだ?


 外に出てヴィラに面したテラスより、周囲を注意深く見てみる。

 木々が茂り眼下には青い海に白い砂浜。砂浜に続く階段は誰も居ない。


「明穂?」


 視線を感じる。

 ねっとり絡みつく視線は明穂なのだろうか。でも、こんな奇妙な視線を向けたことは一度もない。じゃあ、誰かほかに居る?

 白壁に覆われたヴィラの周囲を歩いてみる。大きなヤシの木が等間隔に並ぶ庭。ガレージに続く道は石畳。そのまま進むと大きな門戸のある玄関へ。


 日陰になっている玄関にも居ない。

 それでもなぜか纏わり付く視線。

 気になって見回してみるけど、やっぱり誰も居ないんだよね。俺の感覚がおかしいのか、そう思って居たら。


「なんで服を着てるの?」


 どこからともなく現れ出でたるは、すっぽんぽんの明穂だった。

 どこに居たの?


「大貴。その服は邪魔だから脱ぐんだよ」


 中華街の肉まんを盛大に揺らしながら、俺を指差し服を脱げと言う。


「えっと、明穂。今までどこに?」

「ずっと居たじゃん」

「え?」


 いやいや、明穂の姿が見えないから、探してたんであって。


「それより服脱ごうよ。なんでプライベートビーチで服着てるの?」

「あ、いや。それは」


 すでに俺の相棒はスタンバイ状態です。明穂の全裸を見て賢者で居られるはずもないので。

 明穂が傍に来ると俺の服を強制排除して行くんだけど、ちょっと待って、ここって外の道路に面してるから、誰か通る可能性があるでしょ。


「大貴が抵抗してる」

「じゃなくて、この場所」

「場所?」


 俺に言われて辺りを見回すと。


「こんなとこ、誰も通らないってば」

「いやいや、あの、誰か通る可能性も」

「もう、大貴は踏ん切りが悪いんだから」


 そう言って俺の手を引きヴィラのテラスへ連れて行かれ、結局そこで全てを剥ぎ取られてしまった。


「うん。準備万端。いつでも楽しめる状態だね」


 俺の股間をしげしげ眺めて満足そうだな。


「じゃ、ビーチへゴー!」


 そういうや否や俺の手を引きビーチへ続く階段を一気に駆け降りる。

 途中俺の方が躓きそうになりながら、辛うじてビーチへ辿り着くと、奇声を発しながら海に入って行く明穂だ。そして俺もまた引き摺られながら海へと。


「あ、明穂」

「なに? 楽しくないの?」

「いや、あの。楽しいんだけど」

「先に繋がりたかった?」


 そう言って近付くと握り締める明穂だ。

 じゃなくて。

 ずっとなんか視線を感じるんだってば。明穂が現れて一瞬消えたと思ったけど、やっぱり妙な視線が。と言おうとしたけどお構いなしの明穂は、ぐいっと体を押し付けて俺に。


「誰も居ないんだってば。大貴は気にし過ぎ」

「でも、なんかさっきから」

「気のせいだって。他に誰がこんなとこに来るの?」

「それは、そうなんだけど」


 抱き締められて唇を重ね、暫し無言にさせられたけど。

 なんか気になるんだよね。

 それでも明穂の暴走状態に歯止めが利かなくて、結局、小一時間ビーチで戯れると、疲れたからヴィラに戻って少し休憩しようってなった。


 なにも身に付けてない開放感はある。特に股間の解放感は下着が無い分、元気一杯で明穂も嬉しそうでべったり絡み付いて離れないし。

 明穂とテラスで居る今は視線が無いみたいで、気のせいなのかと思ってた。


「夕飯は期待していいからね」

「明穂が用意してるの?」

「当然。大貴のために腕によりを掛けてるんだから」


 日が傾き始める頃にバスルームにあるジャグジーで寛いだ。


「初めてかも」

「なにが?」

「ジャグジー」

「なんかイメージ的には金持ちって感じだもんね」


 ジャグジーで寛いだ後はバスローブを纏う、のかと思ったら、バスタオルで体を拭われて服を着る許可は出なかった。

 明穂ももちろん同じ状態で、きっとここに居る間は服を着る気は無いんだろう。

 まさに全裸生活だ。


 そのままの格好でダイニングへと導かれると。


「いつの間に」

「手際の良さもあたしの売りのひとつだからね」


 まあそうなんだろう。明穂の場合はすべて事前に準備万端、整えてから俺を案内するだろうし。

 目の前に広がる料理の数々。日頃食べているものとは異なり、どこかのホテルで出てくる感じのメニューが並ぶ。


「じゃあ、食べようか」

「あ、うん」


 明穂が手本を示してくれると思うけど、「まずはオードブルから」と言って、ゼリー状に固まったものをナイフとフォークを使い、上品にカットして「はい。あーん」って言いながら俺の口元へ。ここには他に誰も居ないから、恥ずかしがる必要は無いんだけど、その行為自体が少し恥ずかしい。


 サラダやスープ、そして魚料理に肉料理まで、「あーん」を繰り返し食べ尽すと食器を片付けて、ダイニングに戻ってくると手にはデザートだろう。皿の中央に上品に盛り付けられた、アイスクリームとよくわからないもの。


「大貴。あーんして」


 で、やっぱり口に入れられ、俺も明穂にそれをする。

 そうやってデザートも満喫すると、テーブルの上を片付けて、リビングへと行くんだけど。


「大貴の今は気を抜いてるのかな?」


 そうなんです。ちょっとだけ休憩中。

 でも、そうは問屋が卸しませんでした。即座にその気にさせられて、がっつり明穂に食われ捲って、ソファの上には俺と言う形をした屍が転がってます。


「今夜もあるんだからね。果てしない三日三晩の快楽に溺れるんだよ」


 すみません。俺の体力じゃそこまで無理です。勘弁してください。

 寝るまでの間は二人とも全裸でリビングで寛ぐ。その間、明穂の手はずっと俺をまさぐって弄ばれてる。少し休ませて欲しいんだけど、言うだけ無駄なんだろうな。


 就寝前にシャワーを浴びて、いざ寝室へ。


「目眩く快楽へ」

「あの、手加減」

「駄目」

「いや、その」


 留まるところ知らぬ明穂に一滴残らず搾り取られました。

 きっと打ち止め、ラストオーダー、赤玉出たと思う。


「続きは明日の朝だね」

「無理」

「無理が通れば道理引っ込む、だよ」

「無茶苦茶な」


 精魂尽きて寝入ると明穂もおとなしく寝てくれたようだ。


 翌朝、目覚めると明穂に抱き付かれていて、少し寝苦しかったと思い起こす。

 だって、抱き付いてるだけじゃなくて、股間を明穂の太腿が挟んでるし。ずっと圧迫されてたってことかな? 今日使えないんじゃないの?


「おはよ」


 だから、起きた途端にぐりぐりしないでってば。

 もう限界超えてると思うんだけど。


 明穂の努力の甲斐あってか寝起きに鮮烈な一発を食らわされました。

 もう立ち上がる気力は無い。


「じゃあ、朝ごはん食べようか。あ、大貴のはすでに食べちゃったけど、お昼には元気になれるよね?」

「無理、だと思う」

「鍛え方が足りないのかなあ」

「違うと思う」


 そう言えば昨日散々感じてた視線。今はなにも感じない。やっぱ気のせいだったのかな。

 朝食を済ませてビーチで少し寛いで、また海に入ってはしゃぎ捲って、疲労困憊状態になるとジャグジーで疲れを癒す。

 でも、ビーチに出ると視線を感じて気になった。


「やっぱ誰か居るんじゃ?」

「居ないってば。大貴ってば、こんな場所でそんなナーバスにならなくても」


 それは違うと思います。

 そして一泊のプライベートビーチ体験は終わりを告げた。


「もっと居たかったな」

「次は自分でお金を稼いで頑張って連れて来れるようにする」

「それだよ大貴。ちゃんと小説家になって、売れっ子になれば自分で買うこともできるじゃん」


 まあ、夢は夢だろうけど。今はそんな壮大な夢を少しくらい見てもいいよね。

 帰りは車で明穂のお義母さんが迎えに来るらしい。お義父さんは用事があって来られないから、だそうで。


 で、待っているとガレージから車が出て来た。

 あれ?

 車から降りて来たのは明穂のお義母さんと、俺の母さん?


「もう、大貴の成長具合が見られて、すごく満足した」

「若いっていいわねー。角度がお父さんと違い過ぎて」

「もう元気一杯で明穂ちゃんも満足できたんじゃないの?」

「ちょっと欲しいと思っちゃったけど、さすがにそれはね」


 あの、ひょっとして。

 全部。

 痴態の全てを。


「見られてた?」

「二人っきりなんて、無理だったんだもん」


 双方の母親が監視役でヴィラに隠れ潜んでたらしい。

 つまり、繋がってるところもつぶさに観察されていたと。


「あ、大貴? どうしたの?」


 しゃがみ込んで身動き取れないし、母さんの顔も見れません。

 全身熱くて恥ずかしさも限度を超えました。


「あの、俺、死んでいいですか?」

「なんで? いいじゃん。見られたくらい」


 明穂に恥じらいは存在しないんだった。

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