Epi30 お盆休みでご挨拶を
写真は無しで。
「つまんないなあ」
「そんな後々まで残るものはやっぱ駄目だってば」
もし仮に俺と明穂が別れた場合に、その写真全部処分する必要あるし、明穂が俺を振って離れたりしたらとか考えると、ネットに拡散目的で投稿しちゃうかもしれないし。と言ったら。
「あたしからは別れないよ。それに大貴がそんなことするなんて思って無いし」
明穂の別れない自信がどこから来るのかわかんないけど、俺のことをそこまで信用してもなあ。自分でなにするかなんてその時になってみないとわかんないし。
逆上するかもだよ。元々ネクラぼっち野郎だし。大概その手の奴って仕返しとか言って、自分の行為を正当化するからね。と言っても無駄だった。
「大貴と別れる未来なんて想像できない。大貴がリベンジポルノを正当化するとも思えない」
なんだろうね。すごくまじめな表情で俺の目を正視してるから、相当真剣に答えてるんだろうけど。そこまで思える理由が今も不明なんだよね。
「だったらこうしようか。リベンジポルノは万が一でも認めるから、写真撮ろうよ。大貴がするはず無いって確信してるけど、そうじゃなくてもあたしは文句言わない」
なんで写真に拘るのかな。
普段から一緒に居ることの方が多いんだし、わざわざ写真に恥ずかしいものを収めなくても、と思うんだけど。
「記念だってば。あ、繋がってるのと大貴が元気なのがいいな」
この人、変態です。
「あたしのも勿論撮っていいんだからね。大開脚とかどう?」
要りません。
「じゃあでんぐり返しで丸見えのとか」
だから、そんな写真持ってるだけで恥ずかしいし、もし誰かに見られたら拙すぎでしょ。密かに眺める愉しみも無い訳じゃないけど。普通にツーショット写真で充分だと思うし。変な写真はあとあと禍根を残さないとも限らないし。
「無いから」
「大貴。硬すぎ。あれも硬いけどそれ以上だね」
またベッドに転がって諦めてくれたみたいだ。
でもさ、スカート短くて全部捲れ上がってるし、パンツ丸見えだし。少しは恥じらい持って欲しい。
「明穂」
「見せてるんだよ」
だからパンツ下げようとしないで。
なんでこんなに見せたがりなのかな。確かに自慢できるだけの体形だけど。凹凸がはっきりしてるから、造形としても優れてるのはわかる。
「仕方ないから大貴のこの写真を記念に貰っておこう」
「それ母さんのだよ」
「じゃあ交渉してくる」
そう言ってまた部屋を出て行った。
少し長い時間掛かってるなあと思ってたら、ドスドス大きな音を立てて部屋に飛び込んでくる明穂だ。
「大貴のちんちんゲットー!」
「……」
手にひらひらさせてるのは、間違いなく俺の幼児期の写真。しかも起ってる奴だろう。なにをどう交渉したのか知らないけど、入手できて実に嬉しそうだ。
じっと眺めて口角がだらしなく下がるし、ひょっとして涎も垂れ流してそうだ。
「これだと不公平だからあたしのもあげるね」
「幼い頃の写真?」
「うちは普通のしか無いから、それともう一枚撮っておく」
もう一枚はたぶん法に触れる奴だろう。もうなにを言っても無駄だろうから、受け取るだけ受け取ったら、法に触れる奴は焼却処分しておくことにする。
「焼いたり捨てたりしたら駄目だからね」
先回りされた。
大事に保管するんだよとか、枕の下に入れて毎晩繋がる夢を見るんだよ、とか言ってるし。明穂は楽しそうだ。
この日も明穂の家まで行って素直に帰宅した。
帰り際に「泊まって行かないの?」と何度も言われたけど、高校生らしい付き合いがあるから、当面俺の母さんを安心させること、明穂の両親にも節度があることを見せるって、そう言って納得はしてないみたいだけど、縋る明穂を振り切って帰って来てる。
そしてお盆休みに入ると父さんが帰宅し、翌日明穂が来ることになってる。
当日早々に挨拶するんだ、と言ってたけど疲れてるだろうから、遠慮してと明穂を制止したけど。
「挨拶するから」
「まあ、でも婿にくれってのは駄目だからね」
「大貴は結婚したくないんだ」
「じゃなくて、今はまだ早いってば」
父さんは帰宅したばかりだから、少し落ち着いてからにしようと言っておいた。
帰宅の翌日。
「お世話になってます。大貴さんとお付き合いさせて頂いている三菅明穂と言います」
しっかり頭を下げてお辞儀して、礼儀正しさを見せてくれてるのはいい。
父さんも面食らってたけど釣られて頭下げてるし。
「あ、いやいや、うちの愚息と良く付き合ってくれて」
なんか言いたそうな明穂だ。口が開きかけてる。
「愚息だなんてそんなこと無いです。申し分ない硬度と――」
「明穂! ちょっと」
「なに? まだ挨拶済んでないよ?」
今、とんでもないことを口走りそうになった。
こっちに気を向けて腕を取って廊下に出る。
「なに言おうとしたの?」
「硬度と反応の良さ」
「そういうのは無しで」
「なんで?」
まじめな顔してなに言ってくれてるのかなあ。「もう何度も出し入れしてるんだし、今さら隠しても仕方ないじゃん」とかじゃないってば。
何度もっていう程に出し……じゃなくて、してないし。
「父さんが卒倒したらどうするの?」
「しないでしょ。人生経験それなりに積んでるんだし」
で、俺を振り切ってまた父さんに挨拶しに行くんだけど、もう歯止め利きません。
「あの、大貴さんと婚約の許可してもらえますか?」
ほれみろ。父さんが固まってるし、母さんは苦笑いするしか無いし。
「体の相性の良さは最高だと思うんです。性格の不一致も無いはずです。なによりも幸せになると誓えますから、許可頂けますよね?」
正気に戻ったのか父さんが「まさかと思うが経験済みなのか」と。
「先月めでたく繋がりました! お義父さん! 大貴さんをください」
俺も眩暈がしてきた。母さんも頭抱えてるし。でも父さんは一瞬で破顔して「こんなので良ければいつでも持っていてくれ」と言い放った。「養子でも婿でも好きにすればいい」とまで言ってるし。父さん、どうやら明穂を気に入ったみたいだ。
でもさ、普通は俺が明穂の両親に「ください」って言うんじゃないの? なんか完全に立場が逆転してるのは気のせいじゃ無いよね。
「こんなに可愛らしくて美人な人が、まさか大貴を欲しがるなんて、父親としてもありがたい限りだからね。いつでも持ち帰ってくれて構わない」
で、持ち帰ってくれ、の言葉に反応した母さんが「バカなこと言ってないで、もう少しちゃんとお互いの様子を見てからでしょ」とか言い出して。父さんも「何が不満なんだ」で応戦してて、もう収拾が付かない状態に。
そこに明穂も参戦して「お義母さんは大貴をいじめてたじゃないですか。だったらあたしが幸せにするのが妥当だと思います」とか言い出す始末だし。
母さんはそれを言われて「反省してるんだから。大貴は大切な子どもだし、可愛いから手放したくないし」とか、なに言ってんの状態だった。
俺は最早口出す隙も無いし、当事者なのにただの傍観者。
暫くやり取りが続いて落ち着いたのは一時間後だった。
「学生結婚も悪くはないと思うんだがなあ」
「大学卒業してからでも遅く無いでしょ」
「でもなあ。せっかくもらってくれるって言ってるし、気が変わったら大貴の場合、生涯独身かもしれないぞ」
「大貴がそこまでモテないとは思わないから」
失礼な父さんだけど、そこだけは俺も同意するしかない。自分でもそう思うし。
母さんは評価が百八十度変わったから、俺に期待する部分はあるんだろう。
「大貴はどうなんだ? 当事者の意見も聞いておかないと」
こっちに来た。
「大学卒業して就職先が決まってからでも」
「大貴。小説家になるんじゃないの?」
「いやだって、そう簡単になれるとは限らないでしょ」
「大貴ならなれると思うけどなあ」
その後も話し合いが続き、結論としては高校卒業時点で再考することになった。
当然だけど大学に合格してるのは最低条件として。
「明穂。焦り過ぎだってば」
「そんなことない。毎日繋がりたいのに、今の状態だと制限が多過ぎるじゃん」
頭痛くなって来たけど、これも明穂だからと納得することに。
父さんも母さんも明穂の物言いに呆れ気味だけどね。
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