Epi22 思ってたのと違った

 伊豆急下田駅前からバスに乗り、宿泊施設へと向かうんだけど道路は混雑してる。

 明穂は車窓から連なる車列を眺めながら、少しだけ不安げな表情を見せてた。


「チェックインに間に合うかな」

「こんなに混むと思わなかった」


 先へ進まないバスに俺も少し不安になるけど、まだ三十分程度は余裕がある。仮に少しくらい遅れても大丈夫だろうと思う。


「混雑してなければ十分ほどの距離だから、間に合うと思うんだけどな」

「あ、動いた」

「なんとか間に合いそうだね」


 やっと動き出すバスに揺られ市街地を抜けると、木々の隙間や建物がない場所から海が見えてくる。夕方になっていることもあって、浜辺に人は少なそうだ。これが明日になるとまたすごい人出になるんだろう。

 五分ほどの遅れで最寄りのバス停に着くと、ここからは徒歩四分程度で今夜の宿泊先に行ける。


「オーシャンビューのペンションとか言ってたよね」

「うん。客室から海岸が見えるみたいだよ」

「繋がりながら海を見たいな」


 無いってば。外から見られたら恥ずかしいなんてもんじゃないし。

 ペンションに無事着いて早々にチェックインを済ませる。名前を告げて同意書を渡して説明を受けると、部屋に案内されて夕食まで少しの間休むことに。


「ちょっとドキドキした」

「なんで? 高校生のカップルだから?」

「それもあるけど、明穂は手続きとか不安になったりしないの?」

「気にしてなかった。大貴がみんなやってくれてたし」


 明穂は俺の横で様子を窺ってるだけで、手続きは全部俺がやってた。そうなると頼れる自分の演出をなんて考えて、逆に緊張しちゃったんだよね。でも、こうやって経験を積んで慣れていくんだろうな。


「眺めいいね。海見えるよ」


 荷解きして今夜着るものを出すのと、貸し切り風呂の予約だけ入れておく。


「混浴だよ大貴」

「まあそうだろうね」

「大貴の全身、頭から足の指先まで全部洗ってあげるね。でね、代わりにあたしも同じようにして欲しい」


 のぼせて倒れるだけな気もする。


「念入りに洗ってあげるから、あたしのもね大貴の指で丁寧にだよ」


 この人はなにを期待しているのだろうか。


「お風呂広いのかな」

「家族風呂みたいだしそれなりに広いみたいだけど」


 明穂のエロパワー炸裂するのだろうか。

 だけど。


「時間制限あるから」

「あ、そうだった」

「無茶はできないね」

「じゃあ、手早く」


 なにを手早くなのかはわからないけど、風呂はさっさと切り上げて部屋でってことかも。聞けばいいんだけどろくな答えが返って来そうにないし。

 それにしても楽しそうだな。

 で、やっぱそうなるんだね。


「ハグだよ大貴」


 ベッドに座って両手を広げる恒例のポーズ。背中に手を回して互いにギュッとして、頬を寄せ合いスリスリの後のキス。明穂との定番挨拶みたいなものだ。

 でも、これも心地よくて明穂をすごく感じられる。だから今は俺もこれが好きになった。


 夕食の時間になりダイニングへ。

 そこで次々出てくる料理に舌鼓を打ち、大満足で後にするんだけど、せっせと写真撮ってる明穂だった。

 なんでもクリスマスメニューの参考にするんだとか。


「まだ先の話だと思う」

「今から練習して大貴と楽しいクリスマスを過ごすんだよ」


 勉強熱心なんだよね。だから成績もいいんだろうけど。

 見た目が華やかで美味しい料理も旅の醍醐味だとかで、終始笑顔の秋穂だった。

 俺としては明穂と一緒ってのが、食事をさらに美味しくするんだと思う。で、それを明穂に言ったら「大貴と一緒だからあたしも楽しいんだよ。家族と一緒の食事より何倍も美味しく感じられるんだから」だそうで。


 食後に部屋に戻って貸し切り風呂が空くのを待つ。

 なんだか明穂が落ち着かないのは、なんでだろうね? およそ想像つかない訳じゃないけど。


「なんでそんなにそわそわしてるの?」

「大貴を蹂躙できると思うとね、辛抱堪らんって感じになるんだ」


 なにをされるのか。単に洗われるだけならいいけど、それ以上は拙いと思うんだよね。風呂での乱痴気騒ぎは絶対避けて欲しい。じゃないと叩き出されかねないし。


「いくらあたしでも大貴が心配するようなことはないよ」

「明穂だから一応信頼してる」

「一応は要らないんだけどな」


 予約時間になり空いているのを確認すると、さっそく明穂と二人で入浴タイムだ。

 なんら躊躇なく服を脱いでしまう明穂と、ちょっと戸惑いながら服を脱ぐ俺。なんか男女逆転してる気がしないでもない。


「お風呂ひろーい!」

「だね」


 貸し切りの風呂は六畳くらいありそうな気もする。家の風呂だと二人で入ったら狭いけど、ここだと確かに四人家族でも余裕ありそうだ。

 それでだよ、頼むから全裸ではしゃがないで欲しい。


「じゃ、大貴を洗ってあげよう」


 逃れられないし楽しそうだし、お任せするしかなさそうだ。

 で、明穂に蹂躙されました。しかもおまけつき。


「上下で紅白の演出、やればできるじゃん。ほぼ同時だったね」


 鼻血とあっち方面。まさかの紅白。

 明穂は喜び過ぎだってば。

 その後、今度は明穂を洗わされたのは言うまでもない。また紅白を演出しそうになったけど、辛うじて堪えることに成功した。性交はしてないけどね。

 明穂の恍惚とした表情はマジでヤバいんだって。込み上げて来るものがあるんだから。


 さて、風呂が済むともう、残すイベントはあれしかない。


「大貴」

「明穂」


 見つめ合う二人。ハグしてキスして盛り上がると。


「脱処女!」


 恥ずかしいこと言わない。

 さて、大人の事情って奴で解説はできない。だから、結果だけ。


「痛い」

「やっぱそうなんだ」

「海水って塩水だよね」

「そうだね」


 ベッドで股間を抑えながら「思ってたのと違ってた」とか言ってるし。

 これ、男性と女性じゃ条件違い過ぎて、女性の方が負担が大きいんだって、俺も初めて知った。男性は単純に気持ちいいで済むけど、女性はいろいろあるんだね。

 こういうのを見ると労わってあげないとって思う。

 明穂の頭を撫でてると。


「大貴の気遣いが嬉しい」

「なんか痛そうだったし」

「あ、でもね、次も遠慮要らないんだからね。これを経験して大人になるんだから」


 俗説では数こなしてるうちに慣れるんだとか。俺は女性じゃないから知らないし、男性の多くは単純にそう思ってるかもしれない。

 明穂曰く「世の中男性目線の情報が溢れ返ってるけど、あんなの女性には何の役にも立たないし、男性にとっても勘違いのもとだから、もう少し情報発信者は考えるべき」だとか言ってる。まあ、明穂の言う通りかもしれないけど。


「明日の海水浴、楽しめるかなあ」

「どんな感じなの?」

「中に大貴が居て暴れてる感じ」


 そんなに立派なものは持ってません。人並程度だと思うんだけど比較したことないから、正確にはわかってないけど。明穂は俺以外知らないから、例え小さくてもこれが普通だと認識するかも。もし別れて別の男と付き合って、そいつが巨大だったら俺のが小さいって思うんだろうな。なんか複雑。


「大貴」

「なに?」

「もう一回やったら痛くなくなるかな?」


 それを俺に問われても回答不能なんだけど。


「それは女性にしかわからないと思う」

「そっか」


 と言いながら俺に伸し掛かる明穂の第二ラウンド開始だった。


「数だ! きっと数をこなせば快感を得られるんだ」


 だから、俺は満足しちゃったから打ち止め……。じゃなかった。

 結局、痛い痛いと言いながらも俺を迎え入れる明穂だった。


「やめとけばよかった」

「エッチな漫画とかだと初めてでも気持ち良くなった、なんて描写多かった気がする」

「大貴、そんなの読んでたんだ」

「いや、あの、まあ、ちょっと興味本位で」


 俺の隣で俺のをぐりぐりしながら、じっと目を見つめる明穂だけど、だから、それはやめて欲しいとは言い辛い。それでも明穂だからまあいいかって気持ちもあるけど。


「あの手の漫画とかって都合よすぎだし、ほんと女性を物扱いしてるよね。だから勘違いした男が後を絶たないんだよ。なんの経験もないからそれを信じちゃうんでしょ」

「面目ないです」

「あ、大貴は違うってわかってるから」


 買い被りすぎだと思わなくもないけど、そう言ってもらえると嬉しいかも。

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